【インタビュー】アート×ITでユーザーとともに企業価値を創造する……協和発酵キリンのブランディング戦略 | RBB TODAY
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【インタビュー】アート×ITでユーザーとともに企業価値を創造する……協和発酵キリンのブランディング戦略

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協和発酵キリン コーポレートコミュニケーション部 広報担当マネジャー 長谷川一英氏
  • 協和発酵キリン コーポレートコミュニケーション部 広報担当マネジャー 長谷川一英氏
  • 協和発酵キリン コーポレートコミュニケーション部 広報担当マネジャー 長谷川一英氏
  • 「Invisible Things」
  • 「Invisible Things」
  • サンダーバード コーポレーションで作成した名刺
  • 協和発酵キリンのHPで連載中の「新抗体物語」
 製薬会社の協和発酵キリンは10月21日、社員の思いを“アート”で表現したWebコンテンツ「Invisible Things」を公開した。同コンテンツは、コンセプトデザイナーに富永省吾氏を起用。ブランディング目的のコンテンツながら、世界観にこだわり、アートとして非常に斬新なものに仕上がっている。

 協和発酵キリンではこれまでも、「抗体医薬の認知・理解」をテーマとしたブランディングにWeb・ITを活用し、様々な施策を実施してきた。その仕掛人である同社コーポレートコミュニケーション部 広報担当マネジャー 長谷川一英氏に、これまでの取組みの経緯や成果、今後の展開について話を聞いた。

■Twitter、iPad、キャラクター、漫画……様々な切り口でITを活用した施策を展開

――これまで、Twitterと連動したテレビ番組「情熱の系譜」や、サンダーバードのキャラクターを利用したキャンペーン、さらにはWeb上でのオリジナル漫画の公開など、ITを活用した施策を数々実施されています。こういった取組みをされるに至った経緯や狙いを教えてください

長谷川氏:協和発酵キリンは、2008年の10月に協和醗酵工業とキリンファーマが合併してできた会社です。合併して新しい社名になると、その認知度がそれまでよりも下がってしまうことがあり、それを向上させるという課題がありました。

 企業ブランディングの施策としては、旧協和醗酵時代から、TV東京系列の「水百景」というミニ番組を提供していて、そこでCMを流していました。しかし、TVCMはコストがかかる割には、一週間に一度しか流せない。社名や事業内容も、徐々には浸透していましたが、新会社になって下がってしまった認知度を劇的に上げるような効果はあまり期待できないね、という話になった。加えて、2010年頃はちょうどSNSやネット系のメディアが使われるようになってきていた時で、コストも抑えられるし、コミュニケーションの手法をテレビからネットの方に移していった方が良いのではと考えるようになりました。

 そこでまず2010年に、テレビとネットを組み合わせた取組みということで、「情熱の系譜」という5分間番組の提供を行いました。Webのキャンペーンサイトも作り、ちょうどTwitterが日本でも広まり始めた頃でもあり、アカウントを取得してサイトと連動させました。iPadの発売も話題になっていたので、オリジナルアプリも作成しました。テレビ番組のiPadアプリとしては日本で一番早かったと思います。テレビ番組、iPadアプリ、そしてTwitterのトリプルメディアで情報を発信していこうという試みでした。

――反響はいかがでしたか?

 番組自体は、Twitterでも感想をいただいて、人気は高かったと思います。ただ、番組で弊社の事業を紹介するわけではなく、最後にCMを流すだけなので、番組を覚えてもらっても社名の認知まで至りづらいことが課題でした。そこで2011年はもう少し弊社の事業を理解してもらえるコミュニケーションをしていきたいと考えて、サンダーバードを採用した一連のキャンペーンを実施しました。

――サンダーバードとのコラボを決めた経緯はどんなものだったのでしょうか

 弊社は、抗体医薬という分野に力を入れて取り組んできた製薬会社です。その抗体医薬を中心としたコミュニケーションをやっていこうと考えた時に、抗体医薬という言葉自体も世間に知られていないので、まずはそれ自身を知ってもらうようなキャンペーンをやることで、弊社の事業内容も理解してもらおうという方針をたてました。

 ターゲットは、40~50代のビジネスパーソンに絞りました。家庭も子どもできてきて、親御さんは高齢の域になり、健康に対する意識が高いだろう。また、ビジネスパーソンということで、新しい技術に対しても受容してもらえるだろう、という想定からです。抗体医薬をそういったターゲットに伝える時に、Web上で勉強してもらうのが一番分かってもらえるのではないかと考え、Web上にそのためのコンテンツを作ることにしました。露出はほぼデジタルメディアに絞っています。

 勉強といって、“抗体医薬教室”のような出し方をしても、誰もサイトに来てくれないことが予想されたので、まず親しみやすいキャラクターを探しました。40~50代のかたに親しみがあるということで、簡単なアンケートも取りながら調べていくと、サンダーバードの人気が高かった。サンダーバードには元々科学技術で人類を救うというコンセプトがあり、弊社の事業と共通する部分もあったので、最終的に決定しました。

――具体的にキャンペーンについて教えてください

 サンダーバード使ったキャンペーンは2年間、1年目はサンダーバードラボ、2年目はサンダーバードコーポレーションというかたちで実施しました。ゲーム要素を取り入れて、勉強してもらった後にテストを出題し、正解すればポイントが貯まる設計になっています。繰り返し来てもらえるように、貯めたポイントによってインセンティブをつけ、ラボの時は色々なアイテムを付与しました。コーポレーションの時は、登録すると社員になれてWeb上で名刺がもらえるのですが、ポイントが貯まると役職が上がっていくという仕組みにしました。これがサラリーマンの方には受けて、多くの方にご利用いただきました。

 コーポレーションについては、2012年の6月から9月まで実施してアクセスは79万。社員になってくれた方は3万人でした。その3万人については、一人あたり平均9回訪問してくれて、平均滞在時間も3分ということで、長く、複数回参加してもらえたので、キャンペーンとしては成功だったと思います。キャンペーン実施後に行った認知度調査でも、サンダーバードコーポレーションを知っている層に関しては大幅に抗体医薬の認知度向上がみられました。

――2013年からは、Web上でオリジナル漫画「新抗体物語」の連載も始まっています

 サンダーバードのキャンペーンは、確かに効果がありました。ただ、あくまでキャンペーンを認知してくれている層に対しての効果で、サンダーバードコーポレーション自体の認知度がまだまだ低かった。キャンペーン期間が3~4ヵ月と少し短かったので、もっと継続的にやればキャンペーン自体の認知も上がると感じていました。しかし、継続的にキャラクターを使用するには毎年のライセンス料の問題もあります。それならばオリジナルのキャラクターやコンテンツで、長期間キャンペーンを継続しよう、ということで、こしのりょう先生にオリジナルストーリーの漫画を描いていただくことになったのです。
《白石 雄太》
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