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【インタビュー】アート×ITでユーザーとともに企業価値を創造する……協和発酵キリンのブランディング戦略

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協和発酵キリン コーポレートコミュニケーション部 広報担当マネジャー 長谷川一英氏
  • 協和発酵キリン コーポレートコミュニケーション部 広報担当マネジャー 長谷川一英氏
  • 協和発酵キリン コーポレートコミュニケーション部 広報担当マネジャー 長谷川一英氏
  • 「Invisible Things」
  • 「Invisible Things」
  • サンダーバード コーポレーションで作成した名刺
  • 協和発酵キリンのHPで連載中の「新抗体物語」
■“アート”にこだわった表現で、企業の思いをビジュアライズする

――こういった施策に関して、社内の反応は?

 サンダーバードとのコラボはかなり評判が良かったですね。弊社のMR(Medical Representative)が医師のところに訪問する際に、40~50代でサンダーバードファンの方が多くいらっしゃって、営業の面でも若干は貢献できたかなと思っています。今連載している漫画も評判が良くて、営業など主要な部署には事前に見せていますが、ストーリーが面白いとか、次が早く読みたいという声をもらっています。「新抗体物語」の連載は、来年ももう一年続けるつもりです。

――先日開始された「Invisible Things」は、メディアアートという表現方法で、これまでの施策とはまた毛色が違うものだと思います。どんな経緯で実施が決まったのでしょうか

 私がこれまでコミュニケーションをやってきて、今後挑戦したいことが二つありました。一つは長期間継続したプロモーションをしたいということで、それは先ほど紹介した漫画の方で実現できました。もう一つが、今、CSRの次の考え方と言われているCSV(クリエイティング・シェアード・バリュー)といったものです。これまでは、ブランド側が一方的に価値を提供して、ユーザーはそれに対してファンになってくれるかどうか、という話でした。それをもっと進めて、ユーザー側からも色々アイデアを出してもらって、一緒に新しい価値を作っていこうというのが、これからのブランディングだという考えがCSVです。私はまさにその通りだなと思っていて、そこから出てきたのが今回の「Invisible Things」です。

 弊社には、「私たちの志」という、社員の信条・価値観を凝縮したものがあります。2008年に統合した時に、両社の社員が1000人以上集まって、新しい会社がどうあるべきかというのを議論し、作ったものです。比較的長い文章ですが、社員の中でも「確かにこの通りだね」と受け入れられていて、この通りに行動しようということをやっています。社長の花井が外部の講演会でこの話をすることもありますが、外部の方にも共感して下さる方がいて、弊社のブランディングというか、考えを伝えるのに非常にいい素材だと思っているものです。

 これを、そうはいっても文章が長く伝わりづらい部分もあるので、どうにかビジュアルで表現しようということで、メディアアーティストの富永省吾さんにお願いして作っていただきました。

――“アート”表現にこだわっておられて、とてもユニークだと思いますが、一方で分かりにくいという懸念もあったのではないでしょうか

 まず、こういった考え方というか、思いを伝えるにはアートが一番良いだろうという考えがありました。確かに、かなり尖った表現になっているので、よく分からないという人も社内にいます。一方で、例えばアートが好きな人なんかに見てもらうと、非常に良いと言ってもらっているので、これについては、比較的感度の高い人に伝わって、そこから徐々に浸透していけばいいと思っています。まだ始まったばかりですし、今後多くの人に見てもらってどんな感想がくるのか、楽しみにしています。

――今後の展開はいかがでしょうか

 始まったばかりということもあり、まずはもっと知ってもらうということが重要だと思っています。YouTubeで広告も出していきますし、アートのイベントなどにも出展する予定です。PCの画面では小さいのですが、BOXを作ってその中に入って大きな画面で見てもらったり、PCだとクリックするところを、少し新しい技術を使ってやってみるといったことを考えています。アートも、一回だけではやはりよく分からないで終わってしまうところがあると思うので、色々なアーティストに今後参加してもらって、アートのシリーズみたいなものになってくると、もっと広がるかなと思っています。これについては、できるかどうかまだ分かりませんが。

 グローバルでは、オウンドメディア(自社メディア)で社員の姿を見せていくというのがトレンドになっているようで、そういったことも今後力を入れていきたいですね。

――最後に、コーポレートコミュニケーションにおいて、これが重要だと考えられていることを教えてください

 まず、製薬業界の中では、なるべく先進的な手法なりコンセプトでやっていこうとしているところが弊社の特徴だと思っています。その上で、本質は何かということは見据えてやっていかなければいけない。よく言われることですが、手段が目的になってはいけないので、本来の目的を達成するには何が一番良いのかというのは常に考えています。デジタルの活用を始めたのは、データがきちんと得られるというところが大きい。それは研究にも通じるところです。また、データが重要になる一方で、感性も大切です。研究にしても、起きた結果を受けて、そこから何を思いつくかというのは研究者それぞれ。こういった時代なので、このようなコミュニケーションが良いのでは、という部分を感じ取る感性が大事なんだと思います。

――本日はありがとうございました。
《白石 雄太》
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