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【木暮祐一のモバイルウォッチ】第34回 公設図書館の新たな理想形になるか? 武雄市図書館

エンタープライズ 企業
エントランスを入ると書籍・雑誌を販売する蔦屋書店とスターバックスコーヒーがある。
  • エントランスを入ると書籍・雑誌を販売する蔦屋書店とスターバックスコーヒーがある。
  • リニューアルにあたり企画・運営をCCCに委ねた武雄市図書館。
  • 蔵書検索機はじつはiPadが仕込まれている。検索用iPadの貸出も行っている。
  • 試しに、『図解携帯電話ハンドブック』で検索してみた。蔵書にはすべてICタグが貼られ、どの書棚にあるかが分かる。
  • セルフカウンターで書籍・雑誌の購入や、CD、DVD、蔵書のレンタル手続きができる。Tポイントも付与される。
  • 2階から階下を見下ろしてみた。
  • 館内各所に椅子や机があり、自由に利用できるほか、スターバックスで購入した飲料を持ち込むことも可能である。
  • 武雄市図書館オリジナルのTカード。もちろん、一般のTカードでも図書の貸出が可能。全国の方が利用できる。
 まず貸出カードの問題だが、市民は約95%の利用者がTカードを選択しているそうだ。ちなみに図書館の書籍を借りる際に、自動貸出機を利用すれば1日1回に限るが3ポイントも付与される。Tカードの導入にひと悶着あったように報道されていた割には、大半の市民がTカードの導入を好意的にとらえているようだ。

 図書館のアメニティも素晴らしい。ゆったりと設計されたフロアには、各所に椅子や机も配置され、そうした場所で図書の閲覧ができるほか、スターバックスで購入した飲み物は館内のどこで嗜んでも良いことになっている(飲料以外はスターバックスの席で飲食しなくてはならないが)。コーヒーを味わいながら、居心地のよさそうな場所で思い思いの読書を楽しむことができる。館内には公衆無線LANが配備されており、また2階にはコンセント付きのテーブルも用意されているので、ちょっとした仕事をこなすための場所としても活用できそうだ。

 民間企業であるCCCが運営受託されているだけに、CCCのノウハウを活かした省力化も徹底している。館内には有人のサービスカウンターもあるのだが、図書の貸出のほか、蔦屋書店で販売されている書籍・雑誌の購入は無人のセルフカウンターの利用が推奨されている。タッチパネル操作で貸出か購入かを選択し、Tカードと図書をリーダーに読ませればOK。

 図書館の蔵書はすべてICタグが貼り付けられ、iPadを利用した蔵書検索機で簡単に目的の図書の保管場所を探すことができる。館内限定だが、蔵書検索用のiPadの貸出も行っている。

 市民からの図書館の評判は上々で、CCCが発表した来場者数のデータからもその人気ぶりがご理解いただけるはず。ちなみに武雄市発表のデータでは、今年のゴールデンウィーク中(4月27日~5月6日)の入館者数は47,126人で、前年同期比はなんと572%。図書館のリニューアルは樋渡市長が想像していた以上の成功といえるはず。図書館には約90台の駐車場も用意されているが、市民の話では朝早めに行かないと駐車場がすぐに満車になってしまうほどの人気振りなのだそうだ。図書館の向かいには大型ショッピングセンターが立地しており、市民の利用において相乗効果ももたらしているのだろう。

 樋渡市長は「図書館をもっと多くの方に利用していただきたい」「しかも365日年中無休で。行政でできなければ民間の力で」という熱い想いを抱き、武雄市図書館のリニューアルを実現させた。現在の図書館の人気ぶりを見る限り、この市長の想いは確実に市民に伝わったようだ。そして公設図書館の受託という新たな事業を手がけたCCCにも大きな手ごたえがあったはずだ。映画、音楽、本を、一つのお店で買える、借りられるというコンセプトでTSUTAYAを展開してきたCCCだが、こうしたメディアのデジタルアーカイブ化が進展する中で、その視聴方法はいずれダウンロード主体の使い方に変わっていく。こうした将来を見越した新たなビジネススキームとして公設図書館の企画・運営という新しい取組みを武雄市で実現させ、新たなビジネスノウハウを手に入れたはずだ。この武雄市の事例をステップに、今後わが国各所の公設図書館が大変革していくのではないか。

注:武雄市図書館では館内撮影禁止となっています。ここで掲載した写真は取材として申し入れ、図書館関係者立会いのもとに許諾を得て撮影したものです。
《木暮祐一》
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