【EDIX2013】全教室に電子黒板設置、佐賀県の先進的ICT利活用教育 | RBB TODAY
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【EDIX2013】全教室に電子黒板設置、佐賀県の先進的ICT利活用教育

エンタープライズ その他
佐賀県教育委員会 教育情報化推進室室長の福田孝義氏
  • 佐賀県教育委員会 教育情報化推進室室長の福田孝義氏
  • なぜ、今、ICT利活用教育の推進か
  • 佐賀県総合計画2011に示す事業スケジュール
  • 端末を利用した英語の授業を実際に受ける佐賀県の古川康知事
  • これまでの佐賀県のおもな取組み
  • 新教育情報システム(SEI-Net)
  • SEI-Netの導入で可能になる遠隔授業
 教育においても、高度情報化社会への対応が求められている。そんな昨今、実際の教育現場においてICT(情報通信技術)への対応をいち早く進めているのが佐賀県だ。教育ITソリューションEXPO(EDIX)で5月16日、佐賀県の教育現場でICT推進を担当している県教育委員会教育情報化推進室 室長の福田孝義氏によるセミナーが開催された。テーマは、電子黒板の利活用を中心に、佐賀県が行ってきたICTの教育現場への推進に関してだ。

 「家に帰ればコンピューターがあり、インターネットも普通に使う。今の子どもたちはすでに情報化社会の扉を開いている。だからこそ、子どもたちの情報活用能力を活かすことが必要」と福田氏。また、そのためのサポートをするのが教育委員会の役割であるという。

 平成16年度から校務用PCの整備がはじまった佐賀県だが、先進的ICT利用教育推進事業として本格的に活動がはじまったのは平成23年度。同県の古川知事が知事選においてマニフェストとして掲げたこともあり、佐賀県総合計画2011において“進”重点項目に位置づけられるなど、県をあげての取組みとなっている。

 電子黒板に関しては平成24年度には全4校ある県立中学校のすべての教室に設置され、今年度の25年度には36校ある県立学校と8校ある特別支援学校のすべての教室にも導入。また、来年度に高校に入学する新入生からは1人に1台ずつタブレット端末を配備することになっている。

 なぜ今、電子黒板が求められるのか? そこには教師側と児童生徒側双方のメリットが存在する。教師側とすれば文字情報に加えて映像や音声表現が可能になることで、授業の幅が広がり、より臨場感の高い授業が可能になること。児童生徒側にとっては、授業内容の把握が容易になり、参加意欲が向上し、理解が促進される。つまり、授業方法の改善で教師の指導力向上につながるのだ。

 「部屋を暗くする必要のあったかつてプロジェクタータイプとは異なり、今の電子黒板は使いたいときだけ使えばいい。だから気軽に使え、使い始めると活用できるアイデアとシーンがどんどん増えていく。授業のうち1分でも5分でも使って、授業がわかりやすくなればいい」と福田氏。

 たとえば英語の授業では英文だけでなく画像や映像を表示し、そして音声を同時に流すことでも内容の理解度を高めることが可能になる。家庭科の調理実習ではその手順を映像で確認しながら説明し、数学では空間図形のイメージを表現、また体育では体の動きの見本となる画像や映像を表示して、その上に文字を重ねて書き込むなど利用方法は幅広いのだ。「先生の話術に頼らず、絵を見せたりしてわかりやすく授業をすすめられる」と福田氏はいう。

 また、佐賀県は電子黒板と平行して情報システムの整備にも力を入れている。「ハード面だけでなくソフト面の充実も重要だ」(福田氏)とし、日本初の取組みとして「SEI-Net」と呼ぶ新教育情報システムを導入。平成25年4月から順次稼動している。

 これは校務管理と学習および教材管理を軸とした通信情報システム(SEI-Net)。そのメリットのひとつとして「現場で教師の活動の多忙の原因になっている事務処理の負担を、軽減することができる。その結果、子どもたちと触れる時間を増やせる」と福田氏。また、SEI-Netは、教育管理システムによる学習者と指導者の相互通信のベースでもあり、学習者(生徒)用端末(タブレット)の配布はこのシステムの上に成り立っているといってもいい。

 学習用端末の導入で実現するのは、デジタル教科書の利用や児童生徒の学びの質の向上。その場で疑問点について調べたり、個々の理解に応じた進度で学ぶことが可能になるのだ。意見交換や発表なども容易になり、お互いを高め合う学びを進められる。また、教師にとってもその場で児童生徒の理解の度合いや学習状況を把握することが容易となり、一人ひとりに応じた指導が行いやすくなる。

 そして、遠隔授業により、災害発生時の教育サポート(授業遅れ防止)や、長期間入院児童生徒への学校への復帰支援なども実現するなど、活用シーンは多岐に及ぶ。

 一方で、生徒に端末を持たせることは「不適切なインターネットサイトへの接続の心配はないのか?」と保護者から問われることは少なくない。しかし福田氏によると「それは大きな間違い」。「子どもたちはすでにインターネットに触れる環境が整っている。それを使わせないという水際作戦はもう限界。後追いではなく、端末やインターネットと上手に付き合っていくための、時代に即した教育が必要だ」と続けた。

 そんな佐賀県の取組みに関する詳しい情報は、佐賀県の公式ウェブサイト内でも「先進的ICT利活用教育」として公開されている。

※お詫びと訂正
 初出時、タブレット端末を「配布」すると記述しておりましたが、正しくは「配備」です。お詫びして訂正いたします。
 初出時、一部県名に誤りがありました。正しくは「佐賀県」です。お詫びして訂正いたします。
《工藤 貴宏》
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