【木暮祐一のモバイルウォッチ】第17回 新幹線車中でiPad mini開封の儀 | RBB TODAY
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【木暮祐一のモバイルウォッチ】第17回 新幹線車中でiPad mini開封の儀

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iPad miniを購入し新幹線に飛び乗り、車内で開封、そしてアクティベーションを開始。iPhone 5のテザリングを使って通信を行う。
  • iPad miniを購入し新幹線に飛び乗り、車内で開封、そしてアクティベーションを開始。iPhone 5のテザリングを使って通信を行う。
  • 東北新幹線は仙台以北ではトンネルが多くてなかなか通信状態が安定しない。最小限必要なアプリをダウンロードしてみるがなかなかはかどらない。
  • ヨコ画面にしてフルキーボードを使ってみるが、キーが小さくて快適とはいえない文字入力(笑)
  • 木暮祐一氏。武蔵野学院大学准教授で携帯電話研究家/博士(工学)
 11月2日、iPad miniの出荷がはじまった。歴代iPadを、それもかなりの台数を(大学における教育活動上)購入し使用してきた筆者としては、今回のiPad miniにはそれほど大きな期待をもっていなかったため、事前に予約もしていなかった。しかし、この日は出張に出るというのにiPhone 5の充電ケーブル(Lightningコネクタ)を忘れたため、ケーブルだけ購入しようとたまたま通りかかったApple Store銀座に立ち寄った。混雑する店内だったが、なんとiPad miniが予約なしでも買えるというので、結局Lightningコネクタ代わりにiPad miniを購入してしまったのである。

 余談だが、出張がちな筆者はこうした新製品発売のタイミングを地方で迎えることが多い。初代iPad発売のときは熊本大学に講義で出張していたときで、これも関東では入手困難とされた初代iPadが熊本市内の家電量販店で予約なしで購入できたため、その後の移動の車中でルンルンしながらセットアップを試みたものだった。iPhoneやiPadのような人気端末も、地方では案外在庫がだぶついているケースが多いようで、同様にiPhone 4Sも発売初日に予約することなく北海道旭川市内のauショップで入手している。

 iPad miniは、Wi-Fi版とセルラー網の通信機能を備えたWi-Fi+セルラー版の2種類が用意されているが、11月2日時点で発売されたのはWi-Fi版のみ。Wi-Fi+セルラー版は追って今月下旬発売となる。ケータイコレクターの筆者としては、セルラー通信機能がなければ蒐集の対象ではないのだが(笑)、まずは話のネタに買ってみた。本音はセルラー版が欲しい、というより絶対にセルラー版を買うべきだと思っている。ポケットWi-Fiルーターやスマホのテザリングで通信可能ではないかとおっしゃられる方も多いが、「即座に通信できるかどうか」というのはとても重要なことなのだ。仲間内と会話が弾む中で「ちょっと、このサイト見て!」というようなときに、ポケットWi-Fiルーターの電源入れてペアリングさせてウェブをようやく表示……、なんてことをしていたら、その「間」に周囲の人たちはシラケてしまう。やはり「ちょっと見て!」と説明しているそばから、ブラウザ起動ですぐにウェブ画面が表示されなくてはだめ。こうしたモバイル機器はセルラー通信機能がなければ魅力半減だ(半減以下かもしれない!)。

 ともあれ、本題のiPad miniのインプレッションに入ろう。まず7.9インチディスプレイを採用したこのiPad miniのサイズだが、想像していたよりもはるかに手になじむサイズだ。さすがにスーツの内ポケットに入れるのはつらい大きさだが、一般的な男性の手ならば片手で握れるし、従来のiPadシリーズよりははるかに軽量なので長時間の利用でも疲労は少なそう。片手で握っていて疲れないというのは、やはり電子書籍としての利用を相当意識しているのだろう。

 これまで筆者がiPadを利用する上で利用頻度が高かったのはメールとブラウジングだ。スマホに比べればはるかに広い画面のためメールが読みやすいし、PCをほどではないにしても文字入力がスマホより快適だからだ。しかしながらこの7.9インチという画面サイズでは文字入力に関して悩ましい一面がある。従来の9.7インチディスプレイのiPadよりもフルキーボードのピッチが小さくなるので相当入力がつらくなったと感じた。たとえばヨコ画面にして両手でタイプするにはピッチが小さくミスタッチが増えてしまう。かといって両手で端末を持って親指で入力しようとすれば指が全てのキーに届かない。フルキーボードの「F」キーと「J」キーに指を当てて左右に引っ張ればキーボードを左右に分割でき、親指で取り回しがきく範囲になるものの、すべての指を使ったタイピングに比べると効率が悪い。これならばタテ画面で親指入力したほうが画面も広くて良さそう。これらも“慣れ”によってある程度快適に入力できるようになるのかもしれないが……。

 次にブラウジングという点では、やはりminiになってもさすがは「iPad」、PC向けのウェブサイトをきちんと表示してくれる。同じ7インチクラスのAndroidタブレットではスマホ用のサイト表示になってしまうものも多い。筆者に限らず、タブレットを利用されている方の用途の大半はブラウジングのはず。したがって、PC向けのサイトをデザインも崩すことなくそのまま表示できることはタブレットの利用でとても重要な要素となる。Flash表示の問題などもあったが、iPhone、iPadユーザーが増えている中で、サイト運営側もiPhone、iPadでの表示に対応するべくウェブサイトの状況が大きく変わった。iPad miniはあくまで“iPadの小型版”であって、“iPhoneを大型化したもの”ではなくてよかったと実感した。

 ところで今回のiPad miniにはRetinaディスプレイが採用されず、画面表示される文字が粗いなどという評判も聞く。アップルを擁護するわけではないが、所詮「ど近眼+老眼」の筆者にはそんな細かいところまで見えないので、これで十分と感じた。歴代iPadを並べて画面の美しさを比べながらブラウジングするユーザーなどいないはずで(筆者はそんな楽しみ方もするが)、またモバイル端末は太陽が照りつける屋外や激しく揺れる移動中など、過酷な条件のもとで使うもの。そうしたシチュエーションでの視認性が確保されていれば十分ではないか。

 Androidを搭載したスマホやタブレットは、モデルチェンジやOSのバージョンアップのたびにそのスタイルや操作性(UI)が変わるが、一方iPhoneやiPadは基本的なUIは変更せず、モデルチェンジしているのに代わり映えがないという声も聞こえてくる。このiPad miniも、コネクタやイヤホンジャック位置など変更はあるが、小さくなったという以外には従来のiPadから大きく操作性が変わっていない。「つまらない」という声もあるかもしれないが、とくにiPadシリーズは企業や教育の現場まで広く浸透し、電子機器の操作に習熟していない一般の消費者が利用する端末であるという点で、これぐらいコンセプトが一貫して(操作性が)変わらないことも重要だろう。従来からのiPhoneやiPad製品を使用して来たユーザーなら、何の違和感もなくiPad miniも受け入れられるはずだ。

 これまでの9.7インチのiPadは、スマートタブレットという市場を開拓することになった名機だ。PCよりも手軽にウェブブラウジングやメールを利用できるようにした功績は大きい。一方、スマートフォンも社会に十分に浸透し、PCとタブレット、そしてスマホの使い分けが求められるようになってきた。さらに、スマホとタブレットの中間に位置する端末が続々と登場するようになってきた。タブレットを小型化してきたのが7インチクラスだ。一方、スマホを大型化した5インチクラスという端末も勢力を広げている。

 これらバリエーションが豊かになってきたスマートデバイスをどのように使い分ければよいか。じつはこれまでの7インチクラスの場合、ときにAndroid版の7インチクラスのタブレットでは、どうしても“大きなスマホ”的な印象が拭えなかった。一方、今回発売になったiPad miniは、明らかに10インチクラスのタブレットをそのまま小型化したもの。これはブラウジング表示したウェブサイトの見やすさを比較すれば明らかだ。

 あとはユーザーの使い方次第だ。これまでiPadをプレゼンテーションに利用するシーンをよく見かけた。たとえば顧客にiPadを使って資料を見せるというような、iPadそのものを「通信できるディスプレイ」として使うユーザーには、正直なところiPad miniは目的を果たせない端末になってしまっている。7インチクラスの中でも、iPad miniは7.9インチとディスプレイが大きめではあるが、人にプレゼンするような使い方はちょっと厳しいかもしれない。一方、多くのタブレットユーザーは、メールとブラウジングを中心に使っているのではないか。筆者も同様で、スマホでもメールやブラウジングで重宝してきたが、やはり画面が多少でも大きいタブレットは移動中の仕事効率を向上させてくれる。通話などのコミュニケーションとこれらの用途を1台のスマホで使っていると、電池消費がどうしても気になってしまう。しかし音声通話用のケータイとメールやブラウジング用のタブレットとで役割を分けて2台持ちすれば、万が一タブレットの電池がなくなっても連絡手段に困ることはない。案外「スマホに変え、その利便性は十分に分かったが電池消費が激しくていざという時に通話用途で使えないケースがある」というようなユーザーは、iPad miniと通話用ケータイの2台持ちにするというのがベストの組み合わせになるかもしれない。

 最後に一言、やはりモバイル機器は「どこでも即座に通信」ができなくては使い勝手が悪い。今回、iPad mini Wi-Fi版を購入してしまったが、利用するならWiFi+セルラー版にするべき。前述のiPad miniとケータイの2台持ちをするにしても、通話用ケータイはパケット契約無しにし、データ通信関連はすべてiPad miniに任せてしまえば、トータルの通信コストはそれほど変わらずに運用できるはずだ(セルラー版の料金プラン公表はこれからだが)。さらに言わせていただければ、SIMフリーで回線契約なしで購入できるiPad mini WiFi+セルラー版が日本でも発売されることを望みたい。タブレットやスマホなど複数の端末をTPOで使い分けるなら、やはりMVNO各社が提供するデータ通信用のプリペイドSIMで運用したいからだ。自由に端末と回線契約を選べる時代の到来を大いに期待したいものだ。
《RBB TODAY》
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