太陽光パネルで元を取る! ポイントは「初期回収年数」 | RBB TODAY
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太陽光パネルで元を取る! ポイントは「初期回収年数」

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琉球てぃーだ 代表取締役 菱田剛志氏
  • 琉球てぃーだ 代表取締役 菱田剛志氏
  • CIS方式の太陽光パネル
  • 菱田氏が試算した、初期費用の想定回収期間
  • 6月の実発電量グラフ ソーラーフロンティアの数値が際立っている
  • さまざまな太陽光パネル
  • 各社のパワーコンディショナー。直流を安定した交流に変換する
  • 店舗の屋根に設置された実際のパネルのコンディショナー。CISの発電量は確かに他社より多い
  • 設置台は沖縄仕様で台風と塩害対策が施されている
 すでに恒例化した感さえある夏の節電。今年は電気料金の値上げもあり、一般家庭の家計に直接影響を与える問題も出てきている。また、原子力発電性の安全性に疑問符が打たれた状況の中、長期的に避けて通れないのは太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーの利用をいかに増やすかという問題である。

 このような動きに呼応して、住宅用太陽光パネル市場も拡大しているというが、実際のところはどうなのだろうか。本当に節約になるのか、設置にお金がかかるイメージだが、元はとれるのだろうか。太陽光パネルがひとつのブームとなっている現状だからこそ、そんな素朴な疑問を持つ人は少なくないだろう。

■太陽光パネルの普及は進んでいるのか?

 太陽光発電普及拡大センター(J-PEC)は、全国の住宅用太陽光発電導入支援復興対策補助金の交付実績を公開している。この補助金は、新築や改築の際に太陽光発電パネル(PV)を導入する際に、J-PECに申請すると受けられるものだが、平成23年度の補助金の交付実績は、新築で71,846件、既築(取り付け工事+改築など)で163,971件(合計:235,817件)となっている。平成22年度は、同じく新築57,840件、既築129,824件(合計:187,664件)なので、前年比で25%以上も交付件数が増えていることになる。

 昨年の震災以降、ソフトバンクグループは電力事業の自由化を唱え、実際に太陽光発電事業に乗り出しているし、最近では楽天による家庭用PV市場への参入が話題になった。家庭によって、省エネ、環境問題、節電・節約と動機や目的はさまざまだが、着実に太陽光パネルの一般家庭への導入は進んでいるといってよさそうだ。

 そこで、太陽光パネルを導入する場合、どのような点に注意したらいいのだろうか。太陽光発電の専門家で、沖縄でその設計・施工・販売他の事業を展開している琉球てぃーだの代表取締役 菱田剛志氏に話を聞いた。

■昔は環境特性重視、今は経済性重視の市場

―― 一般家庭でも太陽光発電パネル(PV)の普及が進んでいると聞きます。現在導入を進めている層というのはどのような世帯なのでしょうか。とくに震災前後での変化などはあるのでしょうか。

菱田氏:じつは震災前後というのはあまり関係ないと見ています。確かに10年、15年前はパネル自体もいまより高価で特殊なものだったため、一般家庭で導入する人は、環境問題を考えるような限られた層が多かったのですが、京都議定書が策定された90年代末からは、純粋に電気代や光熱費の経済性を重視する層が増え始めました。これは、CO2削減目標の設定がなされ、政府の補助金や電力買い取り(需要家による売電)制度などの影響があると思います。震災は普及を拡大するきっかけのひとつだとは思いますが、ここ10年くらいは基本的に電気代の節約や光熱費の節約などの効果を期待する人が多くなっています。

――年齢層の違いなどはどうでしょうか。

菱田氏:10年前は高齢者の世帯など年齢層は高めでしたが、現在は20代から30代の引き合いが増えています。マイホームの一次取得時にPVを導入する人が増えていますね。ハウスメーカーや工務店なども力を入れている分野なので、新築の場合はいわば標準装備のひとつになってきているのかもしれません。

■気にするポイントは“発電効率”より“回収効率”

――経済性を考える層がメインとのことですが、導入にあたって、具合的にはどんな点を考えているのでしょうか。やはり電気代が下がるということですか。

菱田氏:それもひとつですが、余剰電力を売ることができる固定買い取り制度による収入や、この売電と節電効果によって、投資した導入費用は何年くらいで回収できるのか、といった点を気にする人が多いですね。つまり投資効果はどれくらいで、何年くらい経てば元がとれるのか? ということですね。

――実際、PV導入の元を取るには何年くらいかかりますか。

菱田氏:設置場所、面積、日照条件、パネルの特性や性能、そしてそのときにかかるパネルや工事コストなど複数の要素がからむので、じつは目安というのは示しにくいのです。とくにPVメーカーがよく公表している変換効率という数字があるのですが、これはあくまでも一定条件での面積あたりの最高出力であって、設置して実際に発電できる電力は実測しないとわかりません。カタログスペックでは効率のよいPVでも実際に発電する電力は条件によって変わってきます。例えば、PVの種類でいくとシリコン系(単結晶・多結晶)は変換効率が化合物系(CIS)に比較してよいとされています。数字でいうとシリコン系が14%~16%という値ですがCISは11%台です。しかし、パネルごとに実際に発電できる電力(kWh)を計測するとCISのほうが高くなります。

 私はこの実発電量に着目していて、これが高いほど、需要家としては電力会社から購入する電力を下げることができ節電・節約になりますし、固定買い取り制度での売電金額も高くなります。元をとる、投資を回収するという意味では、PVの変換効率より実発電量の高さが工事費など初期費用の回収期間を短くしてくれます。弊社による沖縄での実測値による試算ですが、PVの種類ごとに初期費用回収期間を計算すると、CISでは9年ほどで回収できますが、シリコン系のPVでは10年かかる計算になります。

――変換効率では数値の劣るCISが実発電量でシリコン系のPVより勝る理由はなんですか。

菱田氏:まずCISは分光感度特性がよいので、シリコン系よりも長い波長の光(赤い光)でも発電能力が高くなっています。また、光照射効果といってCISは太陽光を当てると定格出力よりも10%近く上がることが暴露実験によって確認されています。あと、シリコン系のパネルは部分的に日陰になると極端に出力が落ちます。シリコン系のパネルは、たくさんのセルが独立した電池として直列につながっている構造を持っていますが、影の部分のセルは消耗した電池にように他のセルの電力を奪ってしまいます。CISは面全体で発電しますので出力の落ち込みが少ないのです。

■国内メーカーの状況

 実発電量に強いことで、回収期間もシリコン系に比べて優れた数値を出しているCISだが、国内で取り組んでいるメーカーは少ない。そのうちの1社で、世界トップクラスの製造能力を持っているのがソーラーフロンティアだ。菱田氏が行なっている実験でも、ソーラーフロンティアのCIS太陽電池が使われており、シャープや三菱のシリコン系太陽電池と比べて、実発電量・回収期間ともに上回る数字を出している。もちろん、実発電量は、天候や地域によっても大きく左右されるため、実際に設置する環境に近い条件下でのデータでなければあまり意味はない。ソーラーフロンティアでは、サイト内で全国各地の発電量を公開しているが、そのほかにもソフトバンクエナジーは北海道 帯広の試験場でのデータを公開している。こうした実測値の公開は徐々に増えてきており、導入の際はこうしたデータを見極めて、自分にあった太陽光パネルを選ぶことが重要になる。そのほかに注意点などはないか、引き続き菱田氏に聞いた。

■価格下落を待つよりも、余裕のある時になるべく早く

――経済性を考えるなら実発電量がポイントとなるということですね。他にも注意すべき点はありますか。例えばPVのメンテナンスとか。

菱田氏:PVは基本的に汚れに関してはメンテナンスフリーと考えてよいと思います。ただし、故障や破損はゼロではないので、数年に一回、定期的に点検を受けた方がいいですね。常に自身で発電量をチェックするる中で、おかしいと思ったら販売会社に相談してください。

――最後に、PV導入の時期についてアドバイスなどありますか。

菱田氏:PV導入を検討しているなら、待てばもっと安くなるというような買い方はしないほうがよいと思います。もちろん価格は下がる可能性はありますが、補助金や売電制度がいつまで続くのかを考えて待つことによるリスクもあります。また、中小企業や確定申告をしている事業主ならば、設備投資は減価償却できますので、光熱費の節約だけでなく節税対策にも効果が期待できます。

 太陽光パネルを導入して、光熱費をゼロにすることもできます。そのための初期投資は必要ですが、ローンなどを組むのでなければ、毎月の電気代などが減らせる効果は、今後電気料金の値上げ圧力が続くことを考えると、家計に与えるメリットは大きいと思います。借金をしてまで設置する必要はないと思いますが、無理をしないで工事ができるなら、その後10年、20年の電気代が安く済むのは、「あのとき設置しておいてよかった。」となることのほうが多いと思います。
《中尾真二》
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