【ニールセン博士のAlertbox】Kindle 2 ユーザビリティレビュー | RBB TODAY

【ニールセン博士のAlertbox】Kindle 2 ユーザビリティレビュー

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Jacob Nielsen博士
  • Jacob Nielsen博士
  • Kindle上のWall Street Journal
 Amazonの電子ブックリーダーKindle 2は、プリント並みの読みやすさを提供しフィクションを読むのに優れている。しかしインタラクションデザインは不自然でぎこちなく、始めから終わりまで連続的に読まれないコンテンツにはあまり適さない。

 新しいバージョンのKindle、Amazon.comの電子ブック専用リーダーが、ディスプレイの改良と様々なアップグレードを伴い最近出荷された(2009年3月時点)。これでようやく、始めから終わりまで連続して読まれるフィクション(主に小説)に関しては良いユーザビリティが提供された。しかしその他の読む作業にはそれ程役立つものとは言えない。

 実験として、私は同じ本を2冊購入した。プリントされた紙の本を1冊とKindle 用のダウンロード版を1冊である。私は1章ごと交互に、本の半分を紙で、残りの半分をKindleの画面で読んだ。毎分に読む単語数で測ったところ私の読書のペースは全く同じであった(0.5%未満の違い)。

 もちろん、1人の人が一冊を読むというのは適切な測定実験とは言えない。従って私は、Kindleがついに画面と紙とで同等の読みやすさ、悟りの域に達したと言うことは出来ない。しかしながら、私はそんな風に感じたのである。

 家中をKindleを抱えて移動しながら、私はデータパッドを持つStar Trekの登場人物のような気分がした。しかし実際私が小説を読むために腰を下ろすと、私は物語に没頭し、電子デバイスでそれを読んでいるのを忘れてしまった。この事実だけでも、このデバイスのデザイナーへの高い称賛を示している。

■ぎこちないインタラクションデザイン

 Kindleは、インタラクションデザインのある1つの領域に優れている。ページをめくるのは非常に簡単で便利だ。この1つのコマンドには2つのボタン(デバイスの両側に)がある。進行方向と逆向きにページをめくるのは稀な作業ではあるが、別々の小さなボタンでそれも上手くサポートされている。

 故にこのデバイスは、連続的に読む作業を上手くサポートしている ― Kindleのデザインは、この 1つの使い道に着目してデザインされているからそう言うのが妥当だ。読んで行く間、「次のページ」ボタンを繰り返し押して行くのが唯一のインタラクションである。

 それ以外は、何もかもぎこちなく不自然である。

 Kindleのインタラクションのほとんどは4つの方向へカーソルを動かす5-wayと呼ばれる小さなジョイスティックを介して行われる。下に押すことで 5つめの振る舞いを実現する。繰り返し5-wayを操作しながら画面上でカーソルを動かすのは非常に面倒である。ダイレクトマニュピュレーションの感覚は全く得られない。カーソルを制御するのはあなたではなく5-wayであり、カーソルをあなたが動かしたい場所へ移すにはたくさんの作業を要する。

 5-wayはBlackBerryのミニトラックボールよりも劣るものだが、Kindleの5-wayを使って操作するのは、多くの中級レベルのスマートフォンのユーザインタフェイスによく似ている感じがする。

 さらに言うと、Kindleは遅い。コマンドを入力するごとに、動作の前に一瞬とまって考え込む。ページをめくるのでさえももう少し速くあるべきだし、それ以外の全ての処理は絶対に遅い。

 要するにぎこちないポインティング +遅い反応=悪いユーザエクスペリエンス。これにより、人々が他のタスクを試す興味をそいでしまう。

■連続的に読まないコンテンツに不適切なデザイン

 The Wall St. Journalのテクノロジ関連記事を読みたいとしよう。右上画像のスクリーンショットであなたはどこをクリックするだろうか?

 私がたずねた誰もが、このセクションの記事のリストを参照するのに、"Technology" をクリックすると答えた。

 誤り。それをクリックすると、そのセクションの最初の記事へ連れて行かれる。そのセクションの記事のリストを参照するには、括弧で記事の数を囲んで示した数字、この場合は ”(16)”をクリックしなければならない。

 直観的?冗談じゃない。実際2週間たっても、未だに私は唯一自然だと思われる操作を行って、間違えを繰り返している。記事リストを見るのに、私はセクション名をクリックする。

 (仮に Kindleがタッチスクリーンデバイス、もしくはマウス操作を主体とした UIであったならば、最も重要な選択には最小のクリックターゲットを使うというFitts' Lawに違反したことによる影響について、私はさらなる不満を述べただろう。実際、これはその性能の欠点を少し埋め合わせるにすぎない。それでもなお、最も重要なコマンドが小さく、視覚的に強調されていないということから悪いGUIデザインである。)

 始めから終わりまで連続的に読まれないコンテンツに関するユーザビリティの問題は、重大である。なぜなら、それはより深い問題を示唆するからだ。Kindle のユーザエクスペリエンスは本のメタファーに支配されている。セクションの最初のページからスタートしたいであろうというのは、本には適している。なぜなら、ほとんどの本は連続的な展開に基づくからだ。残念ながらこうしたアプローチは、新聞、雑誌、旅行ガイドや、百科事典、料理本などのノンフィクションを含む、他の多くのコンテンツ分野には向かない。

 従って、小説(と連続的に読まれるノンフィクション)を読むのに向くKindleのデザインの選択は、Kindleを非連続的に読まれるコンテンツには適さないデバイスにしている。もちろん、Amazonのデザイナーは単純なUIの誤り、例えば新聞記事の目次のインタラクションデザインなどを修正することはできる。しかし、それは単にバンドエイドをはるような処置をしているにすぎない。真に、非連続的なユーザエクスペリエンスを最適化するには、Kindleのデザインについて概念化を完全にやり直す必要があるだろう。

■iPhone上のKindle Reader

 Amazonはまた、Kindleフォーマットの電子ブックを表示出来るiPhoneアプリケーションを提供している。私のテストでは、Kindle 2に比べると iPhoneで読む時のスピードは 6%遅くなるという結果であった。

 (Kindleと紙との比較と同様、この測定はあまりにデータが少ないため、これを結論付けることはできない。これは初期段階の推量であり、より大規模な実験が行われるまでの仮のものである。これは修士論文に非常に適したトピックと言えよう。ヒント、ヒント。)

 Kindle 2に比べて iPhoneで本を読むのにより時間がかかる1つの理由は、ページをめくるのに要する時間である。

 私が好むフォントサイズで読んでいると Kindle 2に比べてiPhoneではページをめくる回数は21%増になる。iPhoneアプリケーションのデフォルトフォントサイズ — 私は若干大きすぎると思うのだが — で読むと、iPhoneでページをめくる回数は Kindle 2に比べると 100%増になる。

 また、iPhone上でのページのめくり方は、より不自然である。なぜならページをめくる専用のボタンがないからだ。ページをめくるためには、タッチスクリーン上で指をすべらせなければならない。親指をそのボタンの上にあてておき単に押すだけですむのに比べたら時間がかかる。

 ページをめくるのに完全な動作を要求するのよりもむしろ、ユーザが画面上を単に軽くたたくやり方の方が好まれたであろう。(実際、競合する Stanzaブックリーダーのアプリケーションは軽い画面タッチで次の画面に移動するようになっている。) 単に、iPhoneの振る舞いを利用することが可能だからといって、そうすべきだと言う意味ではない。

 画面上で指をすべらせるのが iPhone上でスクロールしたり、次へ進んだりするための汎用コマンドで、それをサポートすると、ユーザが他のアプリケーションで得た知識をここでも活用することが出来る。とはいえ、読書専用のアプリケーションには、ショートカットもサポートするのが妥当である。結局、本を読んでいる際に、次のページへというのは、読書中の 90%以上で利用されるコマンドなのだ。 (ショートカットは ソフトウェアのヒューリスティックスにおけるトップ 10のひとつである。)

 Kindle iPhone アプリケーションは明らかにやっつけ仕事で、アプリケーションユーザビリティガイドラインの多くの事柄に違反している。例えば、ユーザはスライダーを使って本の内部を複数ページごとに素早く移動出来る。それはよいのだが、動的なフィードバックがないためにユーザがスライダーを動かしている最中に自分が本のどの辺りにいるのかが分からない。多分、ページ番号は意味をなさないだろうが、章やセクション見出し、もしくはスライダーの現在位置に対応するページの少なくとも最初の一行を表示するやり方で、動的なフィードバックを提供するのは可能だろう。

 ヘルプは、PC 画面用に最適化された Amazon.com のウェブページへのリンクにすぎない。故に 優れたモバイルユーザインタフェイスのデザイン の重要なガイドラインに違反している。そのアプリケーションの内部で表示する、専用のユーザ補助の文書一式を作成するために 1人のライターを 1週間雇うのはやりすぎと言えるだろうか?(いいえ、やりすぎではない。)

 Kindle iPhoneアプリケーションは左右両端の文字を揃えてページを表示する (つまり、左右に書き出す)。これにより、特に小さな電話上の画面で狭められた列では文字の認識しやすさが若干悪くなっている。Stanzaは左揃えでのみテキストを表示しており、こちらの方がより良い選択と言える。

■デバイス間のインテグレーション

 バージョン 1.0の Kindle iPhoneアプリケーションのユーザビリティは良くないけれども、Kindle とAmazon.comのウェブサイトのインテグレーションは優れている。これは、ワイヤレス接続を利用して複数のコンピュータをサポートした、最初の好事例の1つだ。
 あなたは、デスクトップコンピュータとその優れたブラウジングのユーザビリティを使ってウェブサイト上で本を購入することが出来る。そして Kindle 2、もしくはiPhoneを使って、歯医者の待合室などでその本を読むことが出来る。実際、あなたは同じ本を 2つのデバイス間で交互に読むことが出来る。それらのデバイスはあなたが片方のデバイス画面で本を手にした時に、もう片方のデバイスの画面上での最後だった位置に自動的に行くように調整する。

 ユーザが Kindle上で直接本を購入出来るように、多くのことがなされている。しかしながら、フル機能を備えたPC上で Amazon.comのサイト全体を使いながら本を買う方がはるかに簡単である。私は、Kindleは単純にキーボードを取り除いて、そのスペースを使って画面を大きくすべきだと思う。

 とはいえ、Amazon は、PC 上で購入し、それを Kindle で読むというスムーズなインテグレーションを実現した点で称賛に値する。あなたがアメリカにいてワイヤレスネットワークを受信出来るエリアにいるとしよう。PC上のワンクリック、それだけでその本が自分のKindle上に特別なインストール処理なしに現れるのである。

■電子ブック:良いアイデア?それとも悪いアイデア?

 11年前、私は電子ブックは悪いアイデアであると書いた。Kindle 2は私の考えを変えただろうか?

 答えはイエス。私を納得させたのは以下の2つの点である。(a) プリント並みの読み易さ、そして (b) 複数デバイス間のインテグレーション。

 現在私はフィクションとイラストに依存せず、読者がセクション間を前後に参照する必要なく連続的に読めるノンフィクション専用リーダー、そうした情報機器を持つことにはある種のメリットがあると思う。

 公共交通機関を使って旅行や通勤する人たちにとって電子ブックが役立つ理由は以下の通り:

持ち歩きに軽い (10冊の本を1つのデバイスで運べるのは、私が最近終えたSerengeti への旅、2週間のサファリの間わずか 22ポンド(10Kg弱)の荷物の持ち込みしか許されないような旅の最中には特に重宝したであろう)。
新聞紙で指を汚さない。
混雑した電車やバスの中でページがめくりやすい。

 iPhoneと同期がとれることは、実用性のある使い道のシナリオを拡張している。例えば、仮にあなたが医師のオフィスで待っていて読書専用の端末を持っていない場合には、携帯している電話を取り出し、それがなければ無駄に費やしていたであろう時間を有効活用することが出来る。複数の端末上での読書は、Kindleが現実より上である機能の1つである。それは紙の本が実現出来ない何かを可能にしている。

 旅行者や通勤者に加えて、2つめに大きなユーザグループは年長者とそれ以外の低視力の人達であろう。大きなフォントはKindleが持つもう 1つの現実より上な機能である。

 しかしながら、本を読むのは自宅においてのみという人たちには、紙の本で申し分ないだろう。連続的に読み進むものに関して、Kindleは有利な点を何も提供しないし、連続的に読み進まないコンテンツには適しておらず、不利な点を多く提供している — だとしたらなぜ余計に359ドルを支払うだろうか?

※この記事はユーザビリティ研究者ヤコブ・ニールセン博士が運営するサイトuseit.comで連載中のコラム『Alertbox』の転載・翻訳記事です。
株式会社イードが運営する「U-site」では、博士からの正式な許可を得て同コラムの全編を日本語訳し公開しています。
《RBB TODAY》

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