【ニールセン博士のAlertbox】iPhoneアプリはスタート時のハードルを下げる必要がある(Vol.2) | RBB TODAY

【ニールセン博士のAlertbox】iPhoneアプリはスタート時のハードルを下げる必要がある(Vol.2)

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Jacob Nielsen博士
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  • ピザハットのiPhoneアプリの登録画面
■初期段階で登録させるのはやめたほうがよい

 iPhoneアプリは断続的に利用されるもの、という発見からは、多くのデザインガイドラインが生み出される。ここでは利用初期のユーザーエクスペリエンスから導き出される、以下の重要なガイドラインについて論じていきたい。

 ・「最初のステップとして、ユーザーに登録画面を通過させようとしてはならない」

 そのアプリの価値が少しでもあると証明する前に、ユーザーに登録を促すアプリを我々はテストで数え切れないほど見た。これは間違っている。あなたがたのアプリに対して、ユーザーがかなり低いレベルでのコミットメントしか持たないところからスタートしているということを思い出そう。計り知れないほどの価値を提供する真に卓越したアプリでもない限り、人々は登録の価値を見出すほどそれを利用したりはしない。

 登録させることによって、ビジネス上の付加価値や利用上の付加的利便性を顧客にさらに提供できるようになるのは確かである。しかし、これが当てはまるのは、人々が登録を実際に完了したときのみである。悲しいことだが、ユーザーがあなたのアプリの価値を十分に確信する前に登録を強いると、多くのユーザーは 単に、即、そのアプリから手を引くだけで、もう二度と試そうとは思わない。第一印象を与えようとしたあなたにとっての唯一の機会は(実際にはなんの印象も与えられずに)失われたのである。

 初期段階での登録に対する警告は今に始まったものではない。1999年以来、Eコマースのショッピングカートと精算の過程についての重要なユーザビリティガイドラインの1つは、ユーザーには登録する必要なしに買い物をさせようというものである。サイト内で「ゲストとして精算する」ことが可能なサイトは、お金を支払うという素晴らしい特典が認められる前に、ユーザーIDとパスワードを作ることを要求するサイトよりもずっと高いコンバージョンレートが得られる。結局のところ、名前のない人にサイト上で買い物をしてもらうことはできない。少なくともそういうものなのである。

 登録させることによって、デスクトップ用のウェブサイトのビジネスにはコストがかかるが、そこでの痛みはちょっとしたものに過ぎない。しかし、モバイル環境では、ユーザーが余分にくぐり抜けなければならない輪のすべてが無視できないほどの大きな痛みとなる。さらにいうと、ダウンロードしただけのアプリに対するユーザーのコミットメントは、彼らがブラウジングやショッピングカートへのアイテムの追加のために時間を費やしたEコマースのサイトに対するものよりも低い。

 以下の2つの要素が組み合わさるわけだから、

 ・より大きい痛み
 ・より低いコミットメント

 デスクトップ以上に事前の登録がモバイルのビジネスにより大きな損失をもたらす理由は明らかである。

■例:ピザをオーダーするアプリケーション

 iPhoneのテストでは、出てくるタイミングの早すぎる登録画面や、ユーザーへの負担が大きすぎる画面の例をたくさん見た。 

 ユーザーはおいしそうなピザの品揃えが見たいだけなのに、登録を促すこのフォームが出てくる。テストユーザーはこのことに非常に困惑していた。  

 適切なシークエンスはこうだ。

1.基本のピザのリストを見せる。
2.ユーザーに自分の注文をカスタマイズしてもらう。
3.(できたら、配達時間を割り出すためにユーザーに郵便番号などを入力してもらった後に)主な注文情報と一緒に、値段を知らせる。
4.注文を受ける。個人情報はこの時点で聞くのが妥当である。なぜならば、ユーザーはもう十分このアプリにコミットしているからである。

 実物のアプリケーションをテストするため、ユーザーには登録スクリーンの先に進むようにお願いした。しかし、ラボの外での実際の利用時には、彼らはピザを見るところまで決して行きつかなかっただろう。

 アプリ内部にもインタラクションに関わるデザイン上の小規模な問題がいくつかあるとはいえ、それでも、事前の登録スクリーンをなくし、ピザを見せることでユーザーの食欲を刺激した後に個人情報を入力するように依頼すれば、この会社のピザの注文は倍増することもありうるだろう。

 最後まで、「まだ注文しない? アプリのデモを見よう」("Not ready to order? Demo the app.")と書かれたボタンをクリックしたユーザーは1人もいなかった。

 我々が(テストのために)このボタンを押してみると、Pizza Hutが提供していたのは、私が上で推薦した4段階のユーザーエクスペリエンスの手順そのものだった。つまり、そこのデザイナー達はやりかたを知ってはいる。メインのUIフローでそれが実現できていないだけなのである。

 なぜユーザーはデモ機能を試さないのか。それは彼らが欲しているのはアプリケーションのデモではないからである。彼らはどんなピザがあるかを見たいのである。「見てるだけ」というのは昔からある買い物のときの作戦の1つであるが、新しいセーターをそんなには買う気がないけど、どんな感じかは見せてほしいということをデパートの店員に言う人はいない。そうは言わずに、デパートに入って、(目的にぴったり合った全ての)セーターを見て、気になったものを試着する。店側の視点だけで見ると、このシナリオは「デモ」と見なされるのだろう。しかし、顧客の視点から見れば、これは単なる「買い物」にすぎない。そのために三枚綴りの許可書で申し込んだりはしないのである。

 このことを私は何度も言ってきたが、Pizza Hutの中にいる頑固な人たちに理解してもらえるようにもう一回言う必要があるのは明らかだろう。つまり、UIではユーザーの言葉で語ろう。

 iPhoneアプリがユーザーインタフェースの種類の1つであることは明らかである。したがって、モバイル専用のガイドラインに加え、一般的なUIガイドラインも適用されることは驚くには当たらない。 iPhoneアプリとデスクトップアプリの違いは、UIのためのこうしたガイドラインは、前者にとって、より決定的な意味を持つということである。なぜならばモバイルが意味するのは断続的な利用が多くなるということだからだ。したがって、最初にくるハードルは相当に低く、簡単に飛び越えられるように設定しなければならない。そうしないかぎり、ユーザーがあなたがたのアプリを習慣的に利用することは決してないだろう。

※この記事はユーザビリティ研究者ヤコブ・ニールセン博士が運営するサイトuseit.comで連載中のコラム『Alertbox』の転載・翻訳記事です。
株式会社イードが運営する「U-site」では、博士からの正式な許可を得て同コラムの全編を日本語訳し公開しています。
《RBB TODAY》

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