【OGC 2010】「iPhoneは儲からない。じゃあ、どうすればいいんだ」IGDA新清士氏 | RBB TODAY
※本サイトはアフィリエイト広告を利用しています

【OGC 2010】「iPhoneは儲からない。じゃあ、どうすればいいんだ」IGDA新清士氏

エンタープライズ モバイルBIZ
IGDA日本代表 新清士氏
  • IGDA日本代表 新清士氏
  • iPhoneゲームの平均単価は1.35ドル
  • 「ネットジャン狂」はいまだ審査中
  • iPadの技術情報開示はアメリカ先行だ
  • キンドルSDKも日本は乗り遅れ気味
  • いまやiPhone 3GでQuake3が動く時代
  • 「何が当たるかは、やってみるしかない」
 IGDA日本代表でゲームジャーナリストの新清士氏は、OGCで「iPhoneアプリ、ソーシャルアプリに見る2010ゲーム開発の潮流 〜 価格と価値の適正バランスはどこに向かうのか」と題して講演し、会場にこう問いかけました。

 爆発的な成長を続けるiPhoneアプリですが、参入障壁が低いため、コンテンツの急激なデフレ現象も進んでいます。総アプリ数が17万5千本に達する一方で、平均単価は3.12ドルに下落し、ゲームに限れば平均1.35ドルという状況です。無料アプリは全体の1/4に相当し、有料アプリの8割も3ドル以下となっています。

 Facebookなどのソーシャルアプリも同様で、低価格のコンテンツであふれかえり、先行する一握りの企業が市場を総取りしています。こうした状況はユーザーには歓迎ですが、総じて出遅れ感が目立つ日本のゲームパブリッシャーには頭の痛い問題です。

 こうした状況を変える一つの方策と期待された、iPhoneアプリのアイテム課金についても、アップルは慎重な姿勢を示しています。その好例がハドソンのアイテム課金による麻雀アプリ「ネットジャン狂」で、昨年12月のサービスインが予定されていましたが、いまだ審査をパスしていません。

 1つ認めれば、雪崩を打ったようにゲーム業界がアイテム課金モデルに移行し、企業ごとのバーチャルポイントが蔓延する……。新氏はアップルの懸念を、このように分析します。もっともアイテム課金モデルが増加したとしても、限られたタイトルが市場を総取りする「一強皆弱」モデルは続くことが予想されます。いち早くアイテム課金モデルを取り入れたFacebookやmixiアプリが、すでにそうなっているからです。

 また日本企業にとっての課題点として、こうした新興のプラットフォームホルダーにアメリカ企業が多いことがあげられます。90年代まで国産ゲームが世界を席巻した背景には、任天堂・セガ・SCEといったプラットフォームホルダーが日本に集中していたことがありました。しかし今ではアップル、Google、Amazon、Facebookといった企業がグローバルに台頭する一方で、相対的に日本企業との結びつきが弱くなっています。

 もっとも、まだチャンスはあると新氏は続けました。その理由としてあげられたのが、ムーアの法則に代表される、猛烈な技術革新です。ムーアの法則はスーパーコンピュータを10年で1000ドルPCにし、1000ドルPCを200ドルのモバイル端末にします。そこで生まれた余剰コンピューティングパワーが、新しいビジネス展開を可能にするので、その予兆を見逃すなというわけです。

 また、生き残るポイントはプラットフォームを作り出すことにある、と新氏は分析します。もっとも、これは昨年度の新氏の講演でも語られたことでした。そして今後数年は続くと語ります。

 パッケージビジネスの全盛期には、プラットフォームホルダーを頂点に、大手から中小まで産業のピラミッド構造があり、その内部でお金が循環していました。しかしブロードバンドの普及でピラミッドの中間層が弱体化した結果、あらゆるエンタテイメント産業で、プラットフォームホルダーとそれ以外の格差助長が続いています。

 その一方でクラウド化の進展は、小資本でもプラットフォームホルダーになれるチャンスを提示しているのも事実。過去にもGoogleやYouTubeといった企業がベンチャーから生まれ、数年で世界的な影響力を持つ企業になりました。そして仮にiPhoneやFacebookアプリが飽和状態を迎えたとしても、技術革新によって新たなビジネスの種は生まれ続けるので、そこを見逃さずにプラットフォームホルダー、すなわち「胴元」をめざせというわけです。

 このほか、新氏は今後のコンテンツ展開のキーワードに「ストーリー」をあげました。これは単なる物語という意味ではなく、個々のコンテンツ消費をふまえた、メタな物語の消費体験という意味です。新氏は近年の例として「涼宮ハルヒ」のヒット要因や、iPad発表に至るアップルのマーケティング戦略を取り上げました。ガンダムにエヴァンゲリオン、古くはビックリマンチョコのシール集めブームなど、同様の手法は数多く見られます。

 その上で技術革新によって生まれようとしている、新しいプラットフォームビジネスの「卵」の例として、昨今ヒットの兆しを見せつつある、ARG(拡張現実)と「位置ゲー」の融合などを紹介しました。

 一般の業界と異なり「敗者復活戦」が起きやすいのがゲーム業界の特徴です。かつてコンソールゲームでは5年ごとに新ハードが登場し、時として「政権交代」が起こりました。しかし、これが今では半年から1年で状況が激変しており、サイクルが非常に短くなっています。昨年の今頃、誰がmixiアプリがここまでヒットすると予測できたか……新氏は語ります。

「イノベーションは予測できないが、自分が変化の最先端にいるか否かは理解できる」(新氏談)。筆者もここ数年、毎年のように「今年が過渡期」と書き続けている気がします。変化の波が落ち着くのを待つのではなく、変化に合わせて、常に変わり続ける姿勢が重要、ということでしょうか。(インサイド 小野憲史)
《RBB TODAY》
【注目の記事】[PR]

関連ニュース

特集

page top