【FINETECH JAPAN/Display 2007 Vol.5(前編)】スーパーハイビジョンは究極のTV放送システム——NHK技研所長 谷岡氏が基調講演 | RBB TODAY
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【FINETECH JAPAN/Display 2007 Vol.5(前編)】スーパーハイビジョンは究極のTV放送システム——NHK技研所長 谷岡氏が基調講演

IT・デジタル テレビ
日本放送協会放送技術研究所所長の谷岡健吉氏
  • 日本放送協会放送技術研究所所長の谷岡健吉氏
  • 地上デジタル放送普及予測。アナログ放送終了時までに4800万世帯。
  • スーパーハイビジョンは垂直方向が4320、水平方向が7680。画角は100度
  • 観視画角と心理効果の実験
  • 誘導効果は約100度で飽和状態になる
  • 視野特性
  • スーパーハイビジョンのスペック比較
  • 評価システム
「1964年(昭和39年)は東京オリンピックが開催された年だが、そのころ私は高校生だった。(当時は)高知にいたが、東京で開催されているオリンピックのようすがリアルタイムで見られるというテレビ技術はすごいと思った。まだ各家庭にカラー機は普及してなかったが、NHK放送局に行くとカラー受像機が置いてあって、開会式の映像をカラーで見ることができた。当時はテレビ技術に不満というのはいっさいなく、ただただ素晴らしいと思っていた」

 日本放送協会放送技術研究所所長の谷岡健吉氏は、FINETECH JAPANの基調講演をこのような話ではじめた。というのも、この時、NHKの放送技術研究所ではすでにハイビジョンの研究に着手していたからだ。谷岡氏は、BSデジタル放送の視聴世帯2281万世帯、地上デジタル受信機の普及台数1865万世帯(アナログ放送終了時に4800万世帯予想)、FPDの出荷台数は液晶が906万台、PDPが170万台といった数値を示しながら、「今やっとハイビジョンが普及しはじめたと実感する」と感想をもらした。冒頭の話は、新技術というものは社会的ニーズからではなく研究者の夢や将来のあるべき放送の姿に対する考えから着手されるものなのだということの例だが、今は次の技術に着手しなければならない時にきているという。それが、スーパーハイビジョンだ。日本放送協会放送技術研究所(以下、NHK技研)では2000年から走査線4000本のスーパーハイビジョンの研究をはじめているという。

 スーパーハイビジョンの画素はハイビジョンの4倍で、垂直方向が4320、水平方向が7680。画角は100度としている(ハイビジョンの画素は垂直方向が1080、水平方向が1920。画角は30度)。アスペクト比は16:9。谷岡氏によると「単純に掛け算していただくと3300とか3200万画素ということになるが、ただ単に画素が高ければいというものではない」とのこと。NHK技研では、画面を見る角度(観視画角)と心理効果(誘導効果)について昔から実験を行っており、その蓄積によって仕様を決めている。実験のようすは下の写真のようなものだが、見る角度と引き込まれる効果を調べるものだ。

 それによると30度までは、まだまだ引き込まれる効果(誘導効果)が伸びており、100度前後から飽和状態となってくるのがわかる。「100度という視野については、例えば視力1の人が1度のなかで分解できる画素数は60画素と言われているので、100度だと横方向が6000画素以上必要だということになる。ただし、次のシステムは全く別のものではなく今のハイビジョンと整合性が必要なので、ハイビジョンの4倍ということで仕様を決めている」。このように話し、前述の仕様決定について解説した。

 また、そのテスト環境についても詳細な説明がなされた。「スーパーハイビジョンは60フレーム、画素数が3300万画素。動画像としては現存するシステムのなかではもっとも解像度が高いものだと考えているが、今は走査線4000本というスーパーハイビジョンにあわせて試すことができる直視型のディスプレイというのはない」として、下記のようなシステムテスト環境を公開した。

 テスト環境はプロジェクションタイプのもの。1.7インチのLCOSで試しているが、この素子に関しても3300万画素というのはないので、デュアルグリーン方式をとっているいるという。「グリーンの液晶1番、2番というものを使って、これを斜め方向に半画素ずらし投射して絵を重ね合わせている。人間の目は色の解像度は低いのでブルーとレッドは800万画素でやっている」。NHK技研では、スーパーハイビジョン対応のプラズマディスプレイが実現できるようにパネルの高精細化・高効率化、低消費電力化などを研究している。下に掲載したのは一昨年に研究所が公開したものだ。

 スーパーハイビジョン対応のカメラはどうなっているかというと、NHK技研ではVersion1、Version2といった2台を開発している。Version1は2.5インチCCDを使用。「これも実は3200万画素で、しかも1秒間に60枚の絵を出せるデバイスはなかったので、800万画素のものをデュアルグリー方式で使用して絵を作っている」。ただ、重量が80kgもあり、外へ持ち出して撮影することができるものではなかった。Version2は40kgになり、3840×2160画素のCMOSを4枚使うなど改良されたが、まだまだ普段放送に使われているカメラに比べたら大きい。「画素がフルスペックじゃないという問題と同時に、実用ハイビジョンカメラに比べて感度が数十分の一しかない。そのため太陽が厚い雲に覆われてくると撮影できないなどの問題が残っている」という。(後編に続く)
《小板謙次》
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