【特集・NGN】「上位層までサポートできなければ、通信機ベンダーは生き残れない」——沖電気工業 | RBB TODAY

【特集・NGN】「上位層までサポートできなければ、通信機ベンダーは生き残れない」——沖電気工業

ブロードバンド その他

図1
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  • 来住晶介氏
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 本特集では、今ちまたで話題になっている“NGN”(Next Generation Network)にスポットを当て、業界のキーマンにインタビューをしていく。今回は、ベンダーの立場からNGNに注力する沖電気工業(以下、沖電気)の執行役員でネットワークシステムカンパニーEVP ネットワークシステム本部長の来住(きし)晶介氏に、同社が考えるNGNのコンセプト、具体的な製品群やサービス、戦略などについて話を聞いた。


●ユビキタス社会“e社会”を実現するための中核となるNGN


 沖電気は、2006年10月にNGN事業を強化すべく新体制を発足させている。これまで約800名だったキャリア向けの開発部門と、通信分野に強い関連企業の部門を統合することで1,200名体制とし、NGN対応の商品開発にシフトさせている。同社のNGNへ向けた意気込みは並々ならぬものがあるといえるだろう。

 さて、沖電気のNGNについて考える前に、同社が掲げる大きなビジョンについて紹介しよう。それは、現在のブロードバンド社会から次のステップとなる「ユビキタス社会」を実現することにあるという。これを同社では「e社会」と呼んでいる。e社会とはグローバルに張り巡らされたネットワークをベースに、時間・空間・地域・文化の違いを超え、あらゆる社会活動が個を中心に、公平で安全、かつ確実に行われる社会だ。

 そして、来住氏は「このユビキタス社会=“e社会”を実現するための中核となるテクノロジーがNGNだ」と説明する。では、このような大きなビジョンの中で、同社が取り組んでいるNGNとは一体どのようなものなのだろうか? 同社ではNGNのアーキテクチャを「ユビキタスサービス層」「ユビキタスサービスプラットフォーム層」「ユビキタスネットワーク層」という3レイヤに分けて考えている(図1)。次にそれぞれのレイヤについて見ていこう。


●沖電気のNGNを支えるアーキテクチャとは

 上位層となるユビキタスサービス層は、いわゆるアプリケーション層のことである。このレイヤの具体的な例としては、「金融、公共、トラベル、交通、製造業、ホーム向けなどのサービスなどが考えられる」(来住氏)という。たとえば、製造業ではセンサ、無線タグなどを駆使し、工場内の人やモノなどをリアルタイムに把握したり、NGNで工場を接続して、遠隔監視やリモート診断などを実現できる。トラベルではチケットレス化が進み、購入方法や情報の入手方法も変化してくるため、新しい基盤整備に伴ってNGNの応用が期待される。交通でもDSRC(Dedicated Short Range Communication)といったクルマ向けの通信手段とNGNを接続して、車内でデジタルコンテンツにアクセスするといったシーンもでてくるだろう。また、金融関連ならば、営業所やATM、コンタクトセンター、ネット金融などのデリバリチャネルとユーザーをNGNで安全に結び、携帯端末などを使ってシームレスにサービスを提供する、などのサービスも想定される。来住氏は「NGNによって、電子決済などを、よりセキュアな環境で提供したい。沖電気の他のカンパニーが持っている事業領域をNGNに対応させ、さらに横断的な展開を考えている」という。

 次に中層にあたるユビキタスサービスプラットフォーム層に関して、同社はOSCP(OKI Service Convergence Platform )というコンセプトを提唱している。これは同社のNGNアーキテクチャの要となる部分だ。OSCPはOSCP-SDP(Service Delivery Platform)とOSCPクライアントで構成される。前者のOSCP-SDPは、上位のアプリケーションを簡単かつ柔軟に高信頼性をもってインプリメントし、ユビキタスサービスに対してNGN機能を付帯したサービスを構築・提供できる基盤だ。APIを介して利用し、より付加価値の高いアプリケーションを実現できる。一方、後者のOSCPクライアントは、NGN機能とWeb環境を融合したアプリケーションの利用基盤となるもので、両者を連携させてクライアント上のアプリケーションを利用できる。現在、同社のネットワークシステムカンパニーで特に注力しているのはSDPだという。「OSCP-SDPをつくるにあたっては、実績のある米BEA社の“WebLogic”を利用して開発した。高信頼のアプリケーションサーバが特徴だ」(来住氏)という。

 また、下位レイヤにあたるユビキタスネットワーク層について、同社では「キャリアユビキタスプラットフォーム」「コアIPネットワーク」「アクセスネットワーク」「オペレーション」「企業ネットワーク」「ホームネットワーク」の6つに分類している。

 キャリアユビキタスプラットフォーム関連の代表的な製品としては、500万人加入のIPテレフォニーサービスで運用実績を誇る、キャリアグレードのコミュニケーションサーバ「CenterStage」を販売。従来のノウハウをベースに、IMS(IP Multimedia Subsystem)機能に対応した「CenterStage NXシリーズ」などのランナップを拡充している。一方、コアIPネットワークでは、シスコやノーテルなどのベンダー製品を利用してSIビジネスを展開している。来住氏は「我々の強みは、長年の経験とノウハウの蓄積から、各キャリアによって異なるネットワークの要求仕様にマクロ的に対応できること。またレガシーのネットワークをマイグレーションする際に、既存ネットワークについても熟知しているという点だ。さらにインターネットで実現できない信頼性を達成させる技術もある」と語る。

 アクセスネットワークでは、光アクセスのほかに、無線アクセス関連のソリューションを立ち上げようとしている。「アクセス系ではFTTH関連製品、いわゆるGE-PONと呼ばれる世界においてモジュールの内製化など、メーカーとしての強みを発揮していきたい。それ以外にもWiMAX市場の立ち上がりをにらんで活動している。まだ総務省の認可は下りていない状況だが、各キャリアと準備を進めているところ」(来住氏)と説明する。

 企業ネットワークでは、IPテレフォニーやコンタクトセンター、映像系、アプリケーションと連携したソフトフォンなどを主に提供している。こちらについてもNGN対応を進めているが、NGN時代のネットワークは企業のみならず、パーソナル分野でも重要となる。同社では、ホームサーバなどの開発にも着手している。そのため、モバイル用Webブラウザの開発などで実績を持つACCESSとともに、「OKI ACCESS テクノロジーズ」というジョイントベンチャーも設立した。来住氏は「ユビキタスネットワーク層では、ホームネットワークの領域が一番伸びる分野だと考えている。我々はコンシューマ向けのVoIPや映像に実績があり、“eおと”や“eえいぞう”という切り口で展開を図っている。さらに家電との連携も考えている」という。


●上位層までサポートできなければ、通信機ベンダーは生き残れない

 このように沖電気では、ユビキタス社会を実現するために、NGNという全体のフレームワークの中で、さまざまなサービスやソリューション、ネットワーク製品を提供できるように整備を進めているところだ。ただし、一般ユーザーから見ると、NGNのターゲットは広範であり、まだ現時点では漠としたイメージもある。同社では、NGNのどこに最も力をいれていこうと考えているのであろうか。この点について、来住氏は次のように語る。
「中層のコアネットワークや下位層のアクセス周りについては、NGNを実現するための製品が明確なので、メーカーとして粛々と展開していく方針。やはり我々が特徴を出せるところは、アプリケーションとホームネットワークの領域だと思う。そこが知恵の使いどころだ」と説明する。

 現在、一般的に考えられているNGNは、下位層と中層の半分ぐらいに相当する部分だという。とはいえ、当然のことながら、NGN関連ビジネスを手掛けようとしている各社では、上位層までの展開を意識している。「国内の通信機ベンダーは、社内の通信部門で金融・公共などの事業体を持っている。これらの組織と連携してNGNへの取り組みを試みている点は大なり小なり、どこのベンダーでも同じ。国内の通信機ベンダーは上位層までサポートできることを1つの売りにしないと、これから生き残っていけないだろう。沖電気の場合も、金融や製造業などに対して実ビジネスを手掛けているカンパニーがある。我々は、将来をにらんだ形で他のカンパニーと連携して、上位層へのアプローチを進めているところだ」(来住氏)

 また、その一方で、同社は「NGNと従来のインターネットが並列してあるもの」という考え方も示している。この点ついて来住氏は「我々のネットワークシステムカンパニーでは、通信キャリアが中心であるためNGNにフォーカスしているが、ほかのカンパニーではインターネットへの対応も行っている。そこでカンパニー全体としては、両者をうまく組み合わせ形で、e社会を実現しようとしている」と語る。

 現時点で第一にやるべきことは「電子決済やEコマースなどをNGNで置き換えたら、具体的にどういうメリットが得られるか明らかにして皆さんに利用してもらうこと。既存アプリケーションのメリットをどう引き出せるかということがポイントだ」という。次のステップとして、インターネットあるいは現在の専用線では適用できない新規アプリケーションをどこまで考えられるかという点が課題となる。「こちらについては、正直言って、まだまだ悪戦苦闘中というところが本音だ。なぜ、それがインターネットではできないのか、という話はある。まだNGNがどのような形で使えるのか、あまり理解が進んでいないのが実情だと思う。我々は、NGNのメリットを示しっかり示して、さらに顧客に対してそれを提示していきたい」と述べた。

 NGNは、モバイルや固定ネットワークといった従来の垣根を取り払い、あらゆるサービスをIPで統合するものと期待されている。そのため、いままではニッチと見なされていたサービスに対しても新たなビジネスチャンスが生み出される可能性は十分にあるだろう。新たなサービスをいかに創出し、そのメリットを引き出せるか注目していきたい。
《井上猛雄》

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