【スピード速報・総集編】インターネット活用のヒントと「スピードデバイド」を振り返る | RBB TODAY

【スピード速報・総集編】インターネット活用のヒントと「スピードデバイド」を振り返る

ブロードバンド その他

縦軸は平均速度(Mbps)、横軸は時間帯。ダウンロード&アップロードのピークと谷が一致している。
  • 縦軸は平均速度(Mbps)、横軸は時間帯。ダウンロード&アップロードのピークと谷が一致している。
  • お盆休み前の深夜に速度が上がるが、Uターンラッシュの時期にあわせるかのように14日の日中から15日夜まではスピードの高低差がほとんどない。
  • ダウンロード速度の平均のトップ6は東京・埼玉・神奈川・栃木・千葉・愛知、ワースト2は鹿児島・沖縄であった。明らかな「東高西低」が見て取れる。過疎地域において有線インフラ整備に限界があるなら広域な無線技術もスピードデバイド解消には有効かもしれない。
  • 平均アップロード速度のトップ7は東京・神奈川・埼玉・愛知・群馬・和歌山・千葉。Web2.0時代を牽引する「発信者たち」を支援するインフラの整備が急がれる。
  • 光ファイバの割合のトップ7は奈良、群馬、東京、埼玉、福島、和歌山、千葉で、関東圏、関西圏に集まっている。
【スピード速報】はhttp://speed.rbbtoday.com/の計測データをもとに各種の統計データを速報でお伝えしている。このサイトはIXに計測専用サーバを置き、月間計測数は40万を超え、統計データとしても十分な精度と信頼性を持っている。

 今回は2006年後半、23回に渡って連載してきた【スピード速報】から、大きな反響を戴いた回を中心に抜粋して、全般的な傾向を考察する総集編としてお送りする。
 【スピード速報】は今年7月25日に、7月15日〜21分のデータを対象とする解析から掲載を開始した。それから毎週、その前週1週間のデータを用いて、さまざまなテーマで解析し、結果をグラフまたは表にまとめることで、日本のインターネットの現状を、浮き彫りにしている。この解析の軸となっている要素はこれまでのところ以下の8点である。

・計測地(都道府県、または東日本/西日本)
・時間(または日付+時間帯)
・回線種別(Bフレッツ、TEPCOひかり、フレッツADSL、Yahoo!BB-ADSL、CATV、無線 他)
・キャリア(NTT東日本、NTT西日本、東京電力、ケイ・オプティコム、Yahoo!BB 他)
・ISP(OCN、@nifty、BIGLOBE、リンククラブインターネット、So-net、ぷらら 他)
・CATV業者(豊橋ケーブルネットワーク、LCV、シーシーエヌ、J-COM 他)
・ダウンロード速度(ユーザから見た受信スピード)
・アップロード速度(ユーザから見た送信スピード)

 これらの要素を組み合わせることで得られた結果を大きく分けると、インターネット接続環境の「白書」的な統計データと、インターネット活用のヒントになるデータ、ネットサービスに大きな影響を与える通信スピードの差「スピードデバイド」が現れているデータがある。
 今回は総集編として、インターネット活用のヒントになるデータと、「スピードデバイド」が現れているデータについて代表例を振り返ってみよう。

■インターネット活用のヒントになるデータ(1)時間帯別ダウンロード・アップロード平均速度

 これは2006年11月17日〜11月23日の全測定データを無条件に用いて、時間帯ごとのダウンロード速度とアップロード速度の平均を算出したものである。

 グラフを見ての通り、ダウンロード、アップロードのピーク(最速)と谷(最遅)が一致している。共に最速なのは朝4時で、特にアップロードでは、谷である13時の2.5倍以上となった。この週以前の集計では、ダウンロードは6時台、アップロードは5時台が最速であったが、この週は、3時台から6時台まで長いピークが続くダウンロードに対し、アップロードでは4時台が突出している。
 そして、アップロードもダウンロードも最遅である13時台では、ダウンロードが極端に遅い。以前の集計では、ダウンロードは23時台、アップロードは10時台が最も遅かったが、どちらも、分散化が進んだことが考えられる。その結果、ビジネスユーザにおいて、最も分散しづらい「昼食後・午後一番」の利用者集中が、極端な谷を生み出したのではなかろうか。
 なお、ダウンロードとアップロードの速度差が最大だったのは、朝10時台であった。この時間帯は、昼食後ほどではないが、ビジネスユーザによる情報発信が集中していることが想定できる。

 巨大ファイルや大量のファイルのダウンロード・アップロードを行う人は、このグラフを見て実行時間を調整すると効率的であり、結果的にネットワーク全体の資源の有効活用にも貢献できるのではなかろうか。

■ インターネット活用のヒントになるデータ(2)特定時期のダウンロード平均速度

 これは2006年8月10日〜2006年8月16日の測定データ全てを、無条件に日付と計測時間帯で分類し、平均スピードを算出したものである。日ごとの特徴をつかむために、深夜ピークゾーン(0〜2時台:ピンク色)、未明・朝ゾーン(3〜7時台:紺色)、日中ゾーン(8〜17時台:空色)、イブニングゾーン(18〜23時台:黄色)の4つのタイムゾーンに分けて、日毎の傾向を見てみた。

 グラフを見ての通り、8月14日(月曜)の未明・朝ゾーン(3〜7時台)までは、前述の結果にやや似たタイムゾーンごとの高低差が見られる。どの日も深夜ピークゾーン(0〜2時台)が遅く、未明・朝ゾーン(3〜7時台)は速い。唯一の例外は8月12日(土曜)の深夜ピークゾーン(0〜2時台)だが、この日は土曜日であり、他の曜日とは傾向が異なる。よって、14日の朝までは「ほぼパターン通り」と考えてよかろう。
 ところが、このパターンは、14日の日中ゾーン(8〜17時)から15日(火曜)いっぱいまで影を潜めてしまう。なんと、どのゾーンの平均速度も20Mbps前後になってしまい、スピードの高低差がほとんどないのだ。これは「お盆休み効果」ではなかろうか。この時期は、休業する会社や学校が多いだけではなく、企業によってはシステムのメンテナンスを行う場合も多い。よって、ネットワーク利用パターンの変化が、スピードの高低差を消すという形になって現れたのであろう。

 ということで、高速道路の渋滞と同様に、ネットワークにおいても、通常とは混み具合が異なる時期があり、このことを事前に見込んでおくと、より賢いネットワーク利用が実現できる。
 なお、今後の【スピード速報】において、お盆と同様にインターネット利用パターンが変化するであろう正月前後、ゴールデンウィークの分析を予定している。こうご期待。



■ 「スピードデバイド」が現れているデータ(1)都道府県ごとのダウンロード速度

 これは、は2006年11月7日〜11月13日の全測定データを用いて、最新の手法によりIPアドレス等を用いた発信地解析を行い、都道府県ごとのダウンロード速度の平均を算出したものである。

 図を見ての通り、ダウンロード速度の平均のトップ3は東京・埼玉・神奈川で、首都圏に集中している。また、平均18Mbps以上なのは関東圏5都県を除くと愛知県のみである。
 これに対して、大阪府より西の県においては、平均15Mbpsを越える県は一つもなく、最下位の鹿児島は、トップの東京の5分の1以下の平均5.6Mbpsとなった。図を見た途端に明らかな「東高西低」であり、この大きすぎる「スピードデバイド」(格差)の解消が急がれる。

 「スピードデバイド」という言葉は、「デジタルデバイド」を元にした造語であるが、よく都市部と農村部の比較に用いられる「デジタルデバイド」とは、やや様相が異なる。首都圏・関東圏がデバイドの上にあるのは同様だが、地方都市においてはそうとは限らない。例えば、高速の光ファイバをベースにしたCATVが普及している地域や、高速無線インターネットのサービスが開始された地域では、時には県庁所在地よりも高速のサービスが受けられるからである。

■ 「スピードデバイド」が現れているデータ(2)都道府県ごとのアップロード速度

 これは、2006年11月28日〜12月4日の全測定データを用いて、IPアドレス等を用いた発信地解析を行い、都道府県ごとのアップロード速度の平均を算出したものである。

 図を見ての通り、アップロード速度の平均のトップ3(平均16Mbps以上)はやはり東京・埼玉・神奈川で、首都圏に集中している。これに後続の平均13Mbps以上を含めると、関東圏1都4県と愛知県、和歌山県の7都県が「アップロードが速いエリア」といえるだろう。
 これに対して、中国・四国・九州地方においては、平均10Mbpsを越える県は一つもない。特に、岡山、佐賀、熊本、鹿児島の4県では、平均速度が4Mbpsを下回っている。世界的にも標準のインフラであるADSLは、アップロードの帯域を制限してダウンロードの速度を確保しているので、ADSLの比率の高い地域ではやむをえない結果ではある。
 2006年12月5日付の【スピード速報】で得られたデータによると、4Mbpsは無線インターネットのアップロード平均速度である。よって、あくまでも理論値だが、この4県においては、時間とコストのかかる光ファイバの敷設よりも、無線インターネットの普及が、スピードデバイド解消の即効薬になるかもしれない。

 なお、一つ前のグラフがデータの入手におけるスピードデバイドであるのに対して、こちらはデータの発信におけるスピードデバイドである。

■ 「スピードデバイド」が現れているデータ(3)都道府県ごとの光ファイバの割合

 これは、2006年12月12日〜12月18日の全測定データを用いて、最新の手法によりIPアドレス等を用いた発信地と回線種別の解析を行い、都道府県ごとの光ファイバからのデータ件数の割合を算出したものである。

 図を見ての通り、光ファイバの割合が65%と高いのは、奈良、群馬、東京、埼玉、福島、和歌山、千葉(割合の大きい順)の7都県で、関東圏、関西圏に集まっている。
 全国平均は49.7%で、これを上回る都道府県は15しかないことから、上位が少なく下位が多いピラミッド構造になっていることが分かる。
 なお、以上の数値は、あくまでも測定データにおける割合であり、実際のシェアとは必ずしも一致しないと思われるが、上記の2例と比較すると、地域ごとの「スピードデバイド」が浮き彫りになるように思える。

 光ファイバの強みであるアップロード速度の向上は、情報発信の効率に大きな影響を与える。Web2.0時代を牽引する「発信者たち」がストレスを感じることなく活躍できるインフラを提供してもらいたい。

■ そして2007年は

 インターネットの接続スピードは、この10年ちょっとの間に大幅に向上した。しかし、テレビ・ラジオ放送のようにほぼ全国一律のサービスレベルに達しているわけではない。また、電気や水道やガスのように時間帯の影響がほとんどないサービスに比べると、山と谷の差が大きい不安定なものである。
 加えて、回線のスピードは、インターネットによって提供できる(受けられる)サービスの質を左右する。特に、GyaOやYouTubeに代表される動画配信サービスは、回線スピードが一定以上ないと実質的に受けられないか、かなり限定されたものになってしまう。これから新しいサービスを発想し、実現していく新しい「発信者たち」の足かせとなってしまっては、元も子もない。
 そして、【スピード速報】も含めて、一般的な統計データや企業発表の数字は平均値がベースとなっていることも留意したい。例えば、FTTHの普及は進んでいるが、地理的要因や市場性などから高速回線への接続が困難な地域も存在する。これらの問題は、平均値からは見えてこない。
 2007年の【スピード速報】は、回線種別や地域別など多様な切り口で分析して、全体的な統計データでは見落とされがちな日本のブロードバンドの現状を浮き彫りにし、問題提起や解決策のヒントになるような記事を目指していきたい。
《平野正喜》

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