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MVNOのガイドラインの見直し、4つのポイントとは?

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MVNO協議会の三田聖二氏(協議会会長)
  • MVNO協議会の三田聖二氏(協議会会長)
  • 総務省総合通信基盤局の谷脇康彦氏(電気通信事業部料金サービス課課長)
  • MVNO事業化ガイドラインの見直し。主なポイントは4つある(赤で書かれた部分)
 15日、東京・霞ヶ関において、第7回MVNO協議会が開催された。ここでは、MVNOに関するガイドラインの見直しについて、4つのポイントが示された。

 まずMVNO協議会の開催にあたり、三田聖二氏(協議会会長)が登壇し、あいさつを行った。「携帯電話の市場はゼロからスタートし、わずか12年のあいだに10兆円産業までに発展した。これは世界のパソコンの売上高の半分ぐらいにあたる。行政・民間が協力して、この産業を国内で育ててきた。このような実績を踏まえ、いかに第2世代の新しい産業を創出するか、そのプロセスの一部としてMVNO(Mobile Virtual Network Operator)がある。MVNOを官民一体となって作り出していきたい」と述べた。

 続いて、総務省総合通信基盤局の谷脇康彦氏(電気通信事業部料金サービス課課長)が、「MVNOガイドラインの見直し等について」という演題で講演を行った。

 谷脇氏は、今回のガイドライン見直しの経緯について説明した。今年の6月に通信・放送の在り方に関する政府与党合意がなされ、「NTTの組織問題について2010年の時点で検討を行うこと」「ネットワークのオープン化など必要な公正競争ルールの整備などを図ること」の2点が大きな柱として確認された。この合意に基づき、「世界最先端の放送・通信に係るインフラ・サービスの実現」に向けて、通信・放送分野の改革に関する工程プログラムが動き出した。

 9月には「IP化の進展に対応した競争ルールの在り方に関する懇親会」の報告を受けるかたちで、工程プログラムの具体的な実施計画となる「新競争促進プログラム2010」が策定・公表された。新競争促進プログラム2010の内容は多岐に渡っているが、このうち「移動通信市場における競争促進」に関する項目の中に、今回の「MVNOガイドラインの見直し」が含まれている。ガイドラインの見直し案については、つい先ごろ公表されたばかりだが、この公開案のパブリックコメントを求め、1月下旬にはガイドラインを確定・公表する方針だ。

 谷脇氏は、現在のモバイル関連のマーケットについて、携帯・PHSの加入者が平成17年度末に9600万人に達し、その中でも3G携帯の割合が6割を占めるまでになったことを明らかにした。いまや日本は世界に冠たるモバイルブロード環境ができつつあるが、その一方で対前年の増加率は低下している。「市場の裾野は広がっているが、徐々に成長から成熟の局面に変わってきている。パイの拡大が止まってくるなかで、収益性をあげるためにどのようにすればよいのかという問題が出てきている」(谷脇氏)と指摘。このような中で、総務省は「MVNOガイドラインの見直し」「モバイルビジネス研究会の開催」「IP化時代の通信端末に関する研究会の開催」という3本柱でモバイル関連の施策を検討しているところだ。

 既存の移動通信事業者(MNO)は、サービスを多様化し、料金の低廉化につとめてきた。一方、MVNOという新しい事業の場合は、自ら無線設備を持たず、MNOから卸し、あるいは接続の形態で通信サービスを提供する。固定電話の世界では、設備を有する事業者のほかに、再販ベースでサービスを提供する2種事業者が多数存在しているが、モバイルの世界ではこのような事業者はほとんどないのが現状だ。

 谷脇氏は、MVNOを推進する理由について、「MNOが主体となったビジネスモデルはこれからも活性化させていかなければならないが、併せてMVNOが他業態からの参入することによって、ブランド力や経営資源を活用した新しいビジネスモデルが出てくる可能性がある。そのポテンシャルを生かすことで、やや成熟化してきたモバイルビジネスの再活性化が図れる」と説明した。

 MVNO事業化ガイドラインの最初の策定は2002年に行われている。この時点では、MVNOが事業展開をする上での電気通信事業法・電波法の適用関係を明確化することが第一の目的であった。つまり、これは一般的な電気通信事業者を、MNOとMVNOの立場に当てはめた場合にどうなるか? という観点から書かれたものだ。今回の見直し案でも、その基本的な考え方は変わっていない。とはいえ、市場の変化や今後の技術革新を踏まえて、より詳細かつ具体的に見直しがなされている。3G携帯電話の普及による高速データ通信環境の整備、MNO側で提供されるサービスの多様化、FMC(Fixed Mobile Convergence)サービスへの関心の高まりなどを背景に、多様な形態でのMVNO導入の気運が高まるものと考えられるからである。

 具体的なガイドラインの見直しの構成は以下のようになっている。

1.ガイドラインの目的等
2.電気通信事業法に係わる事項
3.電波法に係わる事項
4.ローミングに係る事項(電気通信事業法及び電波法)
5.見直し

 主なポイントは4つある。まず、1.でガイドラインの対象とする範囲に、MNOとMVNOのほか「MVNE」(Mobile Virtual Network Enabler)についても定義を加えた。MVNEとは「MVNOとの契約に基づき当該MVNOの事業の構築を支援する事業を営む者」(当該事業に係る無線局を自ら開設・運用している者を除く)と定義されている。ただし、MVNEはビジネスモデルが確定していないため、当面は以下2形態を想定するという。

・MVNOの課金システムの構築・運用、MVNOの代理人として行うMNOとの交渉や端末調達、MVNOに対するコンサルティング業務などを行う場合であって、自らが電気通信役務を提供しない場合
・自ら電気通信事業設備を運用し、または複数のMVNOに卸電気通信役務を提供(共用)するなどの場合(このケースでは電気通信事業に該当し、事業法に定める所定の手続きが求められるなど、事業法の適用を受けることになる)

 次に、2.電気通信事業法にかかわる事項においては、「MVNOとMNOの関係の明確化」と、「協議が整わなかった場合の手続きに関しての処理」について言及している。

 従来のガイドラインでは、「卸し役務の提供がMNOからMVNOに対して行われる」と規定されていた。事業者間接続でMNOとMVNOが接続することは事業法上では当然可能なため、その主旨を明確にしている。その一方で、MNO側での接続義務があっても、接続に応じる必要がないケースについて具体的に列挙している。以下の場合がそれだ。

・電気通信役務の円滑な提供に支障が生ずるおそれがあるとき
・接続が当該電気通信事業者の利益を不当に害するおそれがあるとき
・接続に関し負担すべき金額の支払いを怠り、または怠るおそれがあるとき
・接続に応ずるための回線設備の設置または改修が技術的または経済的に著しく困難であるとき

 さらに、仮にMVNOとMNOとの間で協議がうまく進まなかった場合についての紛争処理手続き(斡旋・仲裁・鑑定など)について、具体的な処理手続きの明確化も図られている。これは電気通信事業紛争処理委員会において行われるものだ。

 また、電波法の関係で「MVNOの使用に係る周波数についてもMNOの利用として扱われること」を明確化している。MVNOに卸し、または接続でサービスを提供する場合に、MNOの周波数がひっ迫してしまうために貸せない状況が出た場合に、どのように対応するかという点について言及している。

 このほかにも、いくつかのポイントがあるが、詳細については総務省のWebサイトを参照されたい。
《井上猛雄》
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