東芝はすでに、ネットワーク家電の「FEMINITY」シリーズを発売している。東芝家電機器LIFE NETクリエーション部事業推進担当グループ長の一色正男氏は、講演でネットワーク家電のメリットとデメリットを浮き彫りにした。
大きなメリットは、「より家電が分かりやすくなる」ことだ。たとえば、細かい洗濯コースをアイコンで選んだり、エラーコードを日本語で表示できるようになる。同氏は「フリースジャケットの洗濯コースを誤って衣類を傷めることがあったが、FEMINITYならホーム端末から操作するだけで簡単に洗濯できる」と具体例を挙げた。もちろん、サーバと通信することで、新しい衣類に対応する洗濯コースも追加できる。
ネットワーク家電は、サポートでも大きなメリットがある。家電が通信機能を持つことにより、故障の自動診断・通知が可能になるのだ。現状の故障対応について、一色氏は「故障の連絡をもらっても型番が特定できない。購入時期などを基に型番を推測して、訪問修理に伺うのが実情」と漏らす。しかし、ネットワーク家電なら、エラーコードと機器情報をメーカーに送ることにより、型番はもとより故障箇所まで簡単に把握できる。
とはいえ、ネットワーク家電はメリットばかりではない。家電もネットワークにつながれば、クラッカーからの攻撃の対象になりうる。PCへの攻撃と異なり、白物家電への攻撃の被害は深刻だ。たとえば、電子レンジやファンヒーターなどを不適切に使用すれば火災になりかねない。
この問題に対し、一色氏は「セキュリティは悩ましい問題。FEMINITYでは、リモートから家電を動作しないように設計している」と語った。
東芝家電機器社 LIFE NETクリエーション部 事業推進担当グループ長 一色正男氏 |
続く、「日立のネットワーク家電システムについて」では、日立ホーム&ライフソリューション ネットワーク家電システム事業ユニット ユニット長の加藤隆夫氏が、家電に必要なネットワーク特性のほか、他業種との協力について語った。
まず加藤氏は、ネットワーク家電のインフラとなる「ホームネットワーク」について、「PC系」「オーディオ・ビジュアル系」(AV系)「白物系」の3つに分けて考えるべきと提唱した。これは、機器によって必要なネットワーク特性が異なるため。AV系は帯域が必要とされるが、1〜2フレーム欠落してもバッファでカバーできる。これに対し、白物系は通信を家電の制御に使うため、帯域が狭くても確実に行なう必要があるという。加えて、家電には複数の物理層に対応できる、家電向けのプロトコルが必要と訴えた。
さらに同氏は、「インフラの問題が解決されても、ネットワーク家電は成り立たない。ネットワーク家電はコンテンツと無縁ではないのだ」と述べ、「電子レンジにレシピを配信するビジネスも考えられる。ネットワーク家電は機器だけを提供するのではなく、サービスまで提供する新しい製品。ネットワーク家電の実現には幅広い協力が必要」と他業界の参加を呼びかけた。
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日立ホーム&ライフソリューション ネットワーク家電システム事業ユニット ユニット長 加藤隆夫氏 |
(山本浩司)