日立は、通信キャリア*1などで日々行われるネットワークの監視や障害対応、機器の設定変更、工事計画など多岐にわたる運用・設計業務を効率化し、現場の迅速な対応を支援するAI解析技術を開発しました。こうした現場では、ネットワーク構成図やトラブル対応記録など、表やデータベースのように項目や形式が決まっていない「非構造化データ」が多く保存されています。これらのデータは自由な形式で記録されているため、従来のAIでは十分に解析できず、必要な知識やノウハウをすぐに活用できないことが、対応の遅れや業務負担の増加といった課題に繋がっていました。今回、日立は、この課題に着目し、非構造化データの解析にあたり、ファイル内部に記録されたXML*2情報と画像情報を組み合わせたクロスモーダル解析*3により、非構造化データを自動で整理・読み取ることを可能にしました。これにより、多くの工数を要していた情報整理や検索作業を自動化し、必要なときにすぐに活用できる知識として提供できるようになるため、障害発生時の迅速な対応やサービス品質向上、現場スタッフの業務軽減などへの貢献が期待されます。本技術の効果を公開ネットワークモデルのJPNM*4で検証したところ、約80%の自動認識精度を達成できる見込みが得られました。
今後、通信キャリアやデータセンター事業者などのお客さまとのPoC(実証実験)を通じて、本技術の実用性と精度の妥当性を定量的に検証し、技術の高度化を進めます。日立は、本技術をLumada 3.0を支える基盤技術の一つとして強化し、安心・安全なデジタル社会の基盤づくりに貢献します。
*1 通信キャリア: 自社で通信設備(基地局や回線網など)を持ち、携帯電話やインターネットなどの電気通信サービスを直接提供する事業者。
*2 XML: データを構造化して表現・共有するための拡張可能なマークアップ言語の一種。
*3 クロスモーダル解析: 異なる種類のデータ(例:テキストと画像など)を組み合わせて解析し、より高精度な情報抽出や認識を実現する技術。
*4 JPNM: Japan Photonic Network Modelの略。研究、開発、事業等に広く活用されることを目的として作成された日本国内の都道府県間を接続するネットワークのモデル。JPNMについて|電子情報通信学会 フォトニックネットワーク研究専門委員会
■背景および課題
通信キャリアのネットワーク運用・設計現場では、ネットワークの監視、障害対応、機器の設定変更、工事計画など多岐にわたる業務が日々行われています。これらの業務で扱うデータには、市販の表計算ソフトで作成した表やデータベースなど構造化されたデータ*5のほか、ネットワーク構成図などの図面やトラブル対応などの運用記録、障害時のメモなど多様な情報が日々生まれ、スライド形式で作成したファイルやテキストなどの異なる形式で保存された多様なデータが含まれています。これらは「非構造化データ」と呼ばれますが、データの記述ルールやデータ形式が定まっていないため、必要なときにすぐに取り出して現場の知識やノウハウとして活用することが難しく、障害原因の特定や業務の自動化に向けたAI導入の障壁となっていました。
*5 構造化データ: あらかじめ定義されたルールや形式により整理されたデータ。
■課題を解決するために開発した技術・ソリューションの特長
そこで日立は、ネットワーク運用・設計現場の知識やノウハウを最大限に活用し、業務の効率化や自動化を支援するAI解析技術を開発しました。本技術は、ネットワーク構成図や日々の運用記録など、形式の異なる多様な現場データを2段階のクロスモーダル解析により、自動で整理・構造化するものです。具体的には、まず第1段階ではデータ全体を広い視点で捉えるため、XML情報(ファイル内の記述内容)の解析と画像解析を個別に行います。次に第2段階では、第1段階におけるそれぞれの解析結果を照合し、照合で一致した部分はそのまま確定し、不一致となった部分についてはより細かく注目する範囲を絞ることで、認識精度を高めます。今回、公開ネットワークモデルのJPNMで本技術の効果を検証したところ、図形の関係性を正確に認識するとともに、見逃しや思い込みによる誤認識を防ぎ、従来の単一モーダル解析と比べて、ネットワーク構造図や対応記録の自動認識精度を約80%まで達成できる見込みが得られました。これにより、現場で蓄積された多様なデータを誰もが活用できる知識やノウハウとして提供し、生成AI活用による運用効率化や障害対応の迅速化を支援します。

図1 開発したAI技術の概要
■今後の展望
今後、日立は、通信キャリアやデータセンター事業者などのお客さまとのPoC(実証実験)を行い、本技術の実用性と精度の妥当性を定量的に検証し、更なる改善を進めます。あわせて、ネットワーク運用・設計の現場で蓄積された知識やノウハウの活用を促進し、運用業務の効率化や知識継承を支援するとともに、鉄道・電力など社会インフラ分野への展開も視野に入れます。こうした取り組みを通じて、日立は本技術をLumada 3.0を支える基盤技術の一つとして強化し、安心・安全なデジタル社会の基盤づくりに貢献します。
なお、本成果の一部は2月11日~13日に大阪で開催されるJANOG57ミーティングで発表予定です。
■関連情報
日立の研究開発ウェブサイト
■照会先
株式会社日立製作所 研究開発グループ
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