
■背景
ビル・マンションをはじめとする不動産の運用において、収益の最大化と同時に重要となるのが「修繕・維持管理費の最適化」です。オーナーにとって、不具合や故障は収益減少に直結するリスクであり、その発見・対応のスピードと正確性は、収益構造全体を左右します。
しかしながら、従来のビル管理の現場では、不具合報告が紙やExcelベースで行われ、報告・管理・共有に多大な手間と属人性が伴っていました。
管理ロイドはこれまで、アプリ入力による不具合報告を可能にし、不具合発生状況と修繕ステータスの一覧管理、報告書作成の自動化など、不具合管理業務を効率化してきました。今回さらに一歩進めて、「不具合情報の構造化」を実現するカスタムフィールド機能を新たに搭載しました。
■アップデートの狙いと課題整理
管理ロイドの不具合管理機能は、これまでフリーテキスト入力を中心としていたため、入力の利便性とデータ正規化の相反する問題の対処が必要となっていました。不具合情報の自由度が高いため、データの正規化がされておらず、検索・分析ニーズにおいてはカスタマイズが必要でした。
- 報告書出力時に期待通りの形式でデータを取り出すにはカスタマイズが必要だった
- 将来的なAI活用に向けたデータ基盤がより簡単に整備できるようになる
将来的なAI利活用を想定したデータの正規化を実現する事が今回のアップデートの主目的です。
■実現手段:カスタムフィールドの実装
不具合情報のAI利活用/分析環境を整備するための手段として、今回のアップデートでは、不具合報告時に任意の項目を設定できる「カスタムフィールド機能」を実装しました。これにより、報告内容を構造化・定型化し、現場の入力作業に過度な負担をかけることなく、分析に活用できるデータを蓄積できるようになります。
具体的には、以下のような任意の項目を自由に設定・カスタマイズできます。
- 対象機器(例:空調・給排水・照明など)
- 発生場所(例:3FテナントA室)
- 状況(例:異音・漏水・動作不良)
- 原因推定(例:経年劣化・配線不良)
- 対応内容(例:応急処置・交換)

カスタムフィールドを設定することにより、不具合情報が正規化され、属人性が排除されるとともに、報告・分析・AI活用の土台が整います。不具合情報の分析が進めば、不具合への迅速かつ的確な対応が可能となり、修繕費の最適化を通じて、健全で安定した不動産収益モデルの実現が期待できます。
(なお、カスタムフィールドの設定が不要な場合、THIRDのデフォルトフィールドを準備しております)
■今後の展開:AI活用による革新的機能の開発へ
正規化された不具合データは、今後さまざまなAIによる革新的な機能開発のための学習データとして活用することができます。人材不足が深刻化する中、当社では熟練技術者の判断力をAIが補完できる機能開発を進めています。
その一つが「AI所長機能(デジタル生き字引機能です)」です。
本機能は、設備台帳(設備のメーカー、型番、能力、仕様等をデータ化した台帳)と、不具合履歴(過去の不具合の原因、対策、コスト等)、並びに各種現場で発生するドキュメントを学習したAIに、発生した不具合に対して所長や熟練技術員の深い技術力と経験に基づいた判断に近い情報をいつでも質問できる機能となります。
具体的には、現場で起きている事象と対象機器の情報を入力すると、機器資料や取扱説明書、手順書、不具合報告、工事見積、メーカー報告等過去事例から原因を推定。建物固有の個別要素なども加味した所長・熟練技術者の頭の中をAIに学習させ、その学習した技術的なナレッジをもとにデータベースから類似事例を検索し、過去の対応方針や詳細な対応手順を自動で回答するAIとなります。
これにより、経験の浅い担当者でも、適切な原因判断と迅速な対応が可能になるだけでなく、人員不足で苦しんでいる技術現場の課題解決にも貢献します。技術的な知的資本を人から人へ継承するのではなく、人からAIへ学習させる事が可能になり、知的資本が人から会社へ帰属する基盤を作成することができるようになります。
運用中は個別学習を行うことで、各現場のマニュアルや動画リンクなども表示でき、より実践的なサポートを実現します。
■AI建物管理クラウドシステム「管理ロイド」について
「管理ロイド」は不動産管理会社向けのAI-SaaSソフトウェアです。無料のアプリを使用して点検、検針、清掃報告などの入力を行えば、事務所への帰社後の報告書作成業務が不要になります。これにより、不動産管理実務のペーパーレス化、労働生産性の向上、遠隔確認などが実現できます。紙に起因する単純作業の削減により、労働生産性が向上するとともに、AIを活用した検針ミスの防止や履行管理の一元化により、業務リスクを軽減します。さらに、提出書類のダブルチェックなどをAIがサポートし、不動産管理の品質を向上させます。

また、中央監視装置や外付けセンサー等のデータを管理ロイドと連携することで、管理ロイド上で物件の遠隔監視を行い、設備管理業務に建物データを利活用することができ、低コストで既存物件をスマートビル化することができる新機能「遠隔監視オプション」もご提供しています。
「遠隔監視オプション」では、中央監視装置からの設備機器の発停情報、電流、電圧、圧力などの各種運転データ、警報発報の情報などが管理ロイドに連携されます。外付けセンサーからは漏水、振動、圧力、水位などのデータが瞬時に管理ロイドに送られ、遠隔監視や点検の効率化に活用することができます。
具体的には、中央監視装置の運転データを点検数値へ自動変換し、必要な報告書の即時作成が可能となります。また、設備機器の警報発報情報が自動で不具合管理機能に起票されるため、設備機器の不具合に対して迅速に対応することができます。さらに、複数物件の一括監視と遠隔指示が可能になるため、日中・夜間の監視人員を削減することもできるなど、大幅な業務効率化を実現できます。

■株式会社THIRDについて
会社名:株式会社THIRD(サード)
設立:2015年10月
URL:https://third-inc.co.jp/
所在地:〒160-0004 東京都新宿区四谷4-25-13 濱庄ビル2階
代表取締役:井上 惇
TEL:03-6274-8031
会社概要:
THIRDは、AI技術を強みとして、不動産業界や建築業界向けのDXを提供するスタートアップです。2015年にゼネコン出身の工事現場監督が集まり建築工事のコスト削減コンサルティングを主軸に創業しました。現在は現場監督の知見をAIに置き換え、不動産管理の労働生産性を改善するAI-SaaSソフトウェアの「管理ロイド」や、工事のコスト削減を実現する「工事ロイド」などを提供しています。
また、不動産業界/建築業界向けおよび金融業界や製造業界向けのAIの受託開発を行うAIソリューション事業を展開しています。
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