「第25回 KPMGグローバル自動車業界調査」を発表
・自動車業界経営者の36%は、「自社が今後3年以上にわたり、ビジネスモデル・製品・オペレーションの重大な変化を伴う、抜本的な変革期に突入する」と回答
・自動車メーカーの86%がAIへの積極投資を進め、AIがもたらす破壊的変化に対処する準備ができていると回答した経営者はわずか20%
・リーダー企業の約半数が顧客満足を戦略上の最重要課題と捉えているが、長期的な収益性の鍵として重視すると回答した企業は全体の16%
・サプライチェーンの混乱に「備えがあまりできていない」利益目標を上回っていると回答した企業は45%に、「非常に備えられている」と回答した企業同割合94%
KPMGインターナショナル(チェアマン:ビル・トーマス)は、「第25回 KPMGグローバル自動車業界調査」を発表しました。
世界の自動車業界は、今まさに重要な転換点に立っています。高まるコスト低減圧力、予測困難な地政学リスク、サプライチェーンの脆弱性、消費者ニーズのシフトなど、多くの企業は変化への対応に苦しています。KPMGの第25回グローバル自動車業界調査では、自動車メーカー、サプライヤー、ディーラー、モビリティ会社、金融サービス会社の経営者775名の見解を集約し、業界がいかに破壊的変化を乗り越えようとしているかを、包括的な視点で示しています。
25年目を迎える本調査では、劇的に変化している業界環境が明らかになっています。回答者の上位15%にあたる少数の高業績企業は、変化に取り組むだけでなく、その変化を活用することで、イノベーション、顧客満足、業務効率化において他社を凌駕しています。その成功の原動力は、「変革の先導Spearhead Transformation」、「テクノロジーの習得Master Technology」、「信頼の獲得Earn Trust」、「緊張のでのかじ取りNavigate Tensions」、「共に成長 Thrive Together」からなる5つの戦略的な柱変革の5Tです。この枠組みは、業界リーダー企業と取り残されるリスクを抱える企業との間に明確な差を生み出す指標となりつつあります。
KPMGインターナショナル グローバル自動車セクターリーダーのは次のように述べています。
「自動車業界は単なる進化の域を超え、根本的な再定義の時代に突入しています。新たなテクノロジーの台頭、消費者ニーズの変化、そして地政学的な分断が業界のルールを書き換えています。競争力を維持するためには大胆な戦略転換が不可欠です。5Tの枠組みは、破壊的変化への対応にとどまらず、未来のリーダーのための羅針盤になるのです。」
AIとSDVが再構築する2030年への道
自動車会社の86%がAIに大規模な取組みを行っていると回答しており、業界全体でAIや先端技術への投資が加速しています。経営者はこれらの投資が、特に研究開発(48%)やサプライチェーンの最適化(46%)において、目に見える生産性向上につながることを期待しています。にもかかわらず、これらのテクノロジーがもたらす変革へ「十分備えられている」と感じているリーダーはわずか20%にとどまっていることから、企業間の備えの差が拡大し、リスクが増大している状況が見えてきています。
この変革の大きな要因となっているのが、SDV)の台頭です。87%の経営者が2030年までにての車種において自動運転が標準化されると予測しています。しかし、SDVはサイバーセキュリティやデータのリスクなど、新たな脆弱性をもたらします。特に欧州・中東・アフリカ地域では71%の経営者がそれらのリスクを懸念しており、北米・中南米地域(64%)やアジア太平洋地域(54%)と比べても高い傾向です。デジタルの複雑さが増すにつれ、企業は、特に安全や顧客の信用に直結するテクノロジーについて、独自所有するか、共同開発するか、または外部委託するかの戦略的選択を求められています。中核システムを制御し安全性を確保する技術力は、次世代モビリティの主導権を握る決定的な要素となるでしょう。
顧客体験:一貫性のない体験
自動車業界では、顧客満足が依然として非常に軽視されています。顧客満足を長期的な収益性の鍵と捉えている経営者は全体の16%に過ぎず、多くの企業がだパフォーマンスの主要な評価指標として生産性に注目しています。一方、リーダー企業は異なるベンチマークを設定しており、48%が顧客満足を戦略上最も重要な指標に位置付けています。その点において、それ以外の企業(10%)との差は顕著です。
消費者は自動車のライフサイクル全体を通してシームレスつパーソナライズされた体験を求めているものの、一貫性のないデジタル体験が顧客との関係性を弱体化させています。経営者の3人に1人が、デジタル販売の普及により顧客との深いつながりを築くが難しくなったと認識しています。特に価格の手頃さやインフラの問題が普及の障壁となっているBEV市場で、その問題は顕著に表れています。それらの向かい風にもかかわらず、84%の企業はBEV需要の活性化は自社の責任だと考えています。それは急速に変化する市場において、成長と顧客ロイヤティを維持するための顧客中心のイノベーションが急務であると考えられていることを物語っています。
地政学の圧力が再定義する自動車のサプライチェーン
地政学上の分断は、引き続き自動車業界にとって最も破壊的な要因の一つです。不確実性の高まり、過剰な生産能力、規制の枠組みの多様化により、企業は調達・生産・市場参入の戦略見直しを迫られています。今後3年間で最も破壊的な要因は何かという問いに対し、経営者は「サステナビリティ」と「サプライチェーンの変革」を挙げました。特にアジア太平洋地域の経営者の27%が、地政学と経済の圧力を最も懸念していると答えています。これを受けて、全体の68%の企業81%のリーダー企業を含むが、近隣国への移転、友好国への移転、現地生産を通じて、サプライチェーンの再構築を積極的に進めていると回答しています。これらの戦略的な転換は目に見える成果をもたらしていて、サプライチェーンの混乱に「備えがあまりできていない」企業の、利益目標を上回っていると回答した企業は45%に留まったのに対し、「非常に備えられている」と回答した企業では同割合が94%となっています。世界的に不確実性が高まる、サプライチェーンのレジリエンスが業績と競争力を左右する決定的な要因となっています。
本稿は2025年9月4日にKPMGが発表したプレスリリースをに翻訳したものです。日本語表記と英語表記に差異がある場合は英語の原文を優先します。
レポートの全文については、「KPMGグローバル自動車業界調査2025」のサイト(英)をご参照ください。
今後、日本の消費者調査を加えた日本語版を発表する予定です。
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