「はたらいて、笑おう。」をビジョンに掲げるパーソルグループで、テクノロジーソリューション事業を手がけるパーソルクロステクノロジー株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:正木 慎二、以下:パーソルクロステクノロジー)は、世界的に脱プラスチックの推進が急がれる社会情勢から、緩衝材の脱プラスチック化に注目し、現在多用されている発泡スチロールから段ボールや紙の緩衝材への変更に伴う設計開発を、これまで難しいとされてきたシミュレーション(CAE)で行う技術の確立に向け開発を進めていることをお知らせします。
■背景:プラスチックごみの海洋流出などによる環境汚染防止の観点から、脱プラスチック推進が必要

海洋プラスチックごみなどによる環境汚染問題や廃プラスチック有効利用率の低さが世界各国で課題となっている中、国連環境計画(UNEP)の報告書※1には、プラスチック汚染を防止するための法的枠組みが、全世界で強化されていることが明記されています。
日本においては、政府は「プラスチック資源循環戦略※2」を策定しています。その中には「2030年までにワンウェイプラスチックを累積25%排出抑制する」、「2030年までにプラスチック製容器包装の6割をリユースまたはリサイクルする」などのマイルストーンが記載されています。
また環境省ではプラスチックの正しいリサイクル方法を広めるほか、代替素材を理解しながらプラスチックと賢く付き合っていくことを広げるため「プラスチック・スマート※3」を実施しています。
脱プラスチックに向けた対策のひとつに、例えばテレビやパソコンなどの保護に使われている発泡スチロールの緩衝材を、紙の緩衝材に置き換えるという方法があります。特に製品のサイズや形状に合わせた緩衝材は専用設計のため、開発には強度テストや耐久性テストが必要です。そこでシミュレーションによる開発を検討するものの、紙(段ボールなど)は方向によって強度特性が異なることや、折れ曲がった後の現象(非線形領域)までシミュレーションで再現する必要があり、CAEを使った開発が難しく、まだまだ多くの企業が実際に試作品を作成し、テスト・評価を行うという方法で開発しているのが現状です。
※1 出典:国連環境計画(UNEP)「Legal limits on single-use plastics and microplastics(2018年2月)」
https://www.unep.org/resources/report/legal-limits-single-use-plastics-and-microplastics
※2 出典:消費者庁、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、国土交通省、環境省「プラスチック資源循環戦略(令和元年5月)
https://www.env.go.jp/press/106866.html
※3 環境省「プラスチック・スマート」 https://plastics-smart.env.go.jp/
■概要:紙の緩衝材をシミュレーション設計する技術の確立に向け開発を推進
先述の通り段ボールなどの紙資材は、入力と出力が比例せず複雑な相互作用が働く「非線形」であり、方向によって性質が異なる「異方性」であるため、緩衝材を開発する際に複雑な計算が必要となります。それによりシミュレーションでの開発が難しく、試作して試験する「トライ&エラー」が行われているのが実情です。そこでパーソルクロステクノロジーでは、これまで車両開発分野においてCAEによる開発支援を行ってきた知見を活用し、CAEによる段ボール/紙の緩衝材開発に取り組んでいます。
緩衝材の開発には、コンクリートや鋼板などで構築した落下面に段ボールを垂直自由落下させ、強度や耐久性を測る「落下試験」や、圧力をかけ耐荷重性を評価する「圧縮試験」、輸送時の悪路走行などを想定した「振動試験」などが行われます。これらはすべて外側だけでなく内容物への影響も試験対象となります。

このすべての試験において試作品を作ってテストを行い、再度試作品を作り直すという方法では工数も費用もかかります。パーソルクロステクノロジーでは、落下試験、圧縮試験、振動試験をシミュレーションで行うことで、開発工数、コストを約2分の1に抑え、スピーディーでかつ低コストでの開発の実現を目指しています。
今回は段ボールの落下試験のCAE手法構築について説明します。段ボールの異方性を再現するため、テストピースによる材料試験から材料特性を同定します。段ボールは面内方向や面外方向等の違いに加え、段流れ方向(MD方向)とその垂直方向(CD方向)によっても剛性が異なるため、さまざまな試験が必要となります。以下に、代表として引張試験・フラットクラッシュ試験の結果と、それぞれを解析した結果を示します。

各種試験の荷重-ストローク線図と、それに対応する解析結果の比較です。実線が試験結果を、点線が解析結果を表しており、これらの傾向が一致していることから、CAEによる解析結果は実験結果を再現できていると判断できます。
次に、同定した材料特性を用いた落下解析結果を以下に示します。段ボール箱の中身は図のように、約5キロの製品を保護する緩衝材という設定でシミュレーションしています。前述のように段ボールの落下衝撃解析は複雑な計算が必要となりますが、異方性を考慮したことで変形モード・加速度波形ともに実現象とおおむね傾向が合っていることが分かります。
今後、この結果をベースにさらなる精度向上を実現し、今年度のサービスリリースを目指しています。

このように実物を製作することなくシミュレーションを行うことで、トライ&エラーにかかる工数、コストが大幅に削減できます。
政府が掲げた2030年までに実現を目指す「脱プラスチック施策」の一助となるよう、家電メーカーや精密機器・電子部品メーカー、その他医療機器メーカーや自動車部品メーカーなど、緩衝材の専用設計を必要とするさまざまな企業の課題解決に向け、急ピッチで開発を推進しています。パーソルクロステクノロジーでは、自動車関連の開発で得た豊富な知見と高い技術力をかけ合わせ、他業界に活かすことでさまざまな業界における人と組織の生産性向上に貢献してまいります。
■本格的な実装に向けて
現在、本技術は開発段階にありますが、本格的な社会実装に向けた検証、ブラッシュアップを進めるべく、共に挑戦してくださる企業との協業を積極的に募集しています。実際の現場課題を通じ、より価値のあるソリューションへと進化させたいと考えています。ご関心、ご興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。
●CAE解析サービスの詳細はこちらをご覧ください。https://persol-xtech.co.jp/service/cae/
●サービスについてのお問い合わせ(法人・個人)はこちら https://persol-xtech.co.jp/contact/
■パーソルクロステクノロジー株式会社について< https://persol-xtech.co.jp/ >
パーソルクロステクノロジー株式会社は、自動車・航空宇宙・産業機械・家電・ロボットといったものづくり領域、コンサルティングから設計・開発まで横断的なソリューションを提供するIT領域、そして診断、運用、IoTを含むセキュリティ領域までにおいて、専門的な技術を持ったエンジニアが、あらゆる業界でお客さまの技術支援をしています。私たちは、「尖った技術」の力で人と組織のはたらき方に変革を起こすことで社会課題を解決してまいります。■「PERSOL(パーソル)」について< https://www.persol-group.co.jp/ >
パーソルグループは、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、2030年には「人の可能性を広げることで、100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを目指しています。はたらく人々の多様なニーズに応え、可能性を広げることで、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」 を実感できる社会を創造します。
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