安全で働きやすい“未来の土木現場” - Kyodo News PR Wire|RBB TODAY
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安全で働きやすい“未来の土木現場”



ワークエンゲージメントを高めるビジョン動画を公開

ポイント
・ 土木業界の将来動向を踏まえて、必要なサービス・技術群とその開発ロードマップを構築
・ 人間拡張技術を用いた未来の土木現場を体験的に伝えるビジョン動画作成
・ 研究開発がもたらす未来を社会に提示し、未来に意識を向けたディスカッションやフィードバックの獲得が容易に

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202506110353-O1-h0PXL2L5

概 要 
国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」という)人間社会拡張研究部門 コマツ-産総研Human Augmentation連携研究室は、ワークエンゲージメントを高める未来の土木現場のビジョン動画を作成して公開しました。

先進諸国の土木業界では、労働環境の厳しさや技術継承の難しさといった課題を抱えており、日本においても人手不足や就業者の高齢化が深刻化しています。そこで近年、人材確保に向けた新たなアプローチの一つとして、仕事に対して前向きで充実した心理状態を示すワークエンゲージメントの向上を図るため、より少ない労力で効率よく安全に作業や学習・判断ができることを目的とした人間拡張技術の活用が期待されています。しかし、人間拡張技術の研究開発のために必要な知見を得ようにも、長期的視点からの技術導入に関する意見集約を通常のインタビューだけで実施することは困難でした。

今回、未来に意識を向けたディスカッションのため、人間拡張技術を用いた新しい土木現場をより体験的に伝える手段として、建機オペレーターの目線から仕事や生活の変化を描くビジョン動画を制作しました。動画の制作にあたって、まず、業界の将来像や社会動向を踏まえつつ人間拡張技術を活用した将来の経営者、オペレーター像を作成しました。そして、それらを実現するために必要なサービスや技術群を抽出し、それらの開発ロードマップを構築した上で、その一部を建機オペレーターの一日の暮らしに紐付けした動画で表現しています。本動画の目的は人間拡張技術の研究開発がもたらす未来の土木現場を社会に提示することであり、未来に意識を向けたディスカッションやフィードバックを得て、研究開発の推進力が得られると期待しています。

本動画は、YouTubeの「産総研チャンネル」(https://youtu.be/JcoNLxH4xcQ)で視聴可能です。

下線部は【用語解説】参照

開発の社会的背景
近年、日本の建設業の就業者数は減少を続けており、2023年時点で483万人と、1997年から約200万人減少しています*1。これに伴い、高齢化や人手不足、労務費の増加、さらには技術継承の難しさなど、さまざまな課題が顕在化しています。特に、土木業界では「3K(きつい、汚い、危険)」といった厳しい労働環境のイメージが、若年層や女性の就職を阻む大きな要因となり、高齢化と人手不足を深刻化させています。一方で、老朽化するインフラの整備や自然災害に対する防災・復旧対応など、土木分野への社会的ニーズは今後も高まり続けることが見込まれており、持続的に人材を確保・育成できる環境づくりが急務となっています。

土木業界ではこのような課題の解決に向けて、労働環境を改善し仕事への意欲や充実感を向上するワークエンゲージメントを高める取り組みが注目されています。最近では、従業員の健康管理を企業の経営課題としてとらえて、戦略的に取り組む「健康経営®」を推進する建設業関連の企業が年々増えており、2024年度の健康経営優良法人認定では、建設業は中小規模法人部門で最多の3,848社が認定され、全体の認定法人数の23%を占めました。

研究の経緯
産総研は、2020年にコマツと共同で「コマツ-産総研Human Augmentation連携研究室」(以下、「本研究室」という)を設立しました。本研究室では、建設業界におけるワークエンゲージメント向上のため、人の身体的・認知的能力をテクノロジーで補完・強化する「人間拡張技術」の研究や開発に取り組んでいます。

安全で働きやすい職場のあり方を具体化することを目指した取り組みの第一段階として、ワークエンゲージメントを高める人間拡張技術に関する新しい研究開発ニーズを探索するために、土木事業を展開する13社の経営者および建機オペレーターを対象としたインタビュー調査を実施しました。この調査を通じ、土木業界におけるDXや健康経営の取り組みの現状について一定の知見を得ることができましたが、将来を見据えた技術的ニーズに関する示唆を十分に見いだすことはできませんでした。その理由として、長期的視点からの技術導入に関する意見集約が通常のインタビューだけでは困難だったことが挙げられます。そこで今回、将来の技術導入を考えるきっかけとすべく、安全で働きやすい未来の土木現場の姿を提示することを試みました。

研究の内容
【技術・サービス開発ロードマップの構築】
土木事業を展開する13社の経営者および建機オペレーターを対象としたインタビュー結果に基づいて現状の想定顧客の情報に加え、今後の社会変化の予測を踏まえた将来の顧客像を構築しました。そして、同顧客像に求められるサービスとその実現技術を10年間(2023~2032年)の時間軸上に位置づける、技術・サービス開発のためのロードマップを構築しました。ロードマップ構築にあたっては、本研究室で実際に技術研究開発を行っているメンバーも参加しました。

【ロードマップを踏まえたビジョン動画の開発】
構築したロードマップの中で想定される技術・サービスの導入シナリオを基に、身体的な健康を管理する「スマートウオッチを用いた体調管理」、柔軟な働き方を支える「箱庭VR技術(遠隔の人たちがVR等を用いて情報共有をしたり会議をしたりする技術)」、「事務所や自宅から建機を操作する遠隔施工システム」、「施工のタイムシェアリング」、外国人労働者との連携を支援する「現場での多言語コミュニケーションツール」、熟練オペレーターの減少を補完する「建設機械オペレーターのスキル分析と評価」、「トレーニング・スキル伝承プログラム」の7種類の技術を組み合わせた、2032年の女性建機オペレーターの一日の仕事の様子を表すビジョン動画を作成しました。この動画により、新たな技術がもたらす未来の土木現場を疑似的な体験を通じて人間拡張技術を通じた土木現場革新の考え方への理解が深まると共に、同技術分野のさらなるニーズ抽出に繋がると期待されます。

【ビジョン動画に基づく事業者インタビューとインターナルコミュニケーション】
土木現場のDXや健康経営に先進的に取り組む3社から動画に対するフィードバックを得ました。総じて動画が示すような「若い世代に魅力的な世界」になることに対して共感が得られました。また、個々の労働者のスキル獲得やモチベーションの向上と合わせてプライバシーの配慮の重要性に関する示唆が得られました。これらのフィードバックを基に動画のアップデートを行いました。また、ビジョン動画を用いて、本研究室内のメンバー間で目指す土木現場のあり方についての意識共有を行い、推進する研究課題と目指すべき目標イメージのすり合わせを行うことができました。

【土木業労働者(経験者含む)を対象としたアンケート調査】
アップデートした動画を基に土木業労働者(経験者含む)300名を対象としたWebアンケートを実施しました。その結果、67%の回答者が内容に共感できると回答しました(図1)。また、特に30代未満の回答者と50代以上の回答者が高い共感を示しています(図2)。本結果から、今後活躍が期待される若年層の観点で、本ビジョン動画の示す働き方の受容性が高い可能性を示すと共に、現場、あるいは事業全体の管理を担うことが求められる経営層やベテラン従業員の期待にも応えうる内容であると考えられます。

【ビジョン動画の公開】
ビジョン動画はYouTubeの「産総研チャンネル」を通じて、誰でも視聴できます。動画視聴の感想や意見のフィードバック、特にこのビジョン動画が示すような未来の土木現場実現に向けた協業・連携を希望する企業の方からのコンタクトを期待します。

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今後の予定
今後は本動画を活用しながら、土木業界におけるワークエンゲージメント向上に向けた取り組みの方向性について企業経営者、建機オペレーター他、関係者の皆様とのビジョン共有や意見交換を継続すると共に、本ビジョンの実現に向けた人間拡張技術の研究開発・社会実装を推進していきます。

今回発表した動画の詳細
YouTube「産総研チャンネル」
URL:https://youtu.be/JcoNLxH4xcQ

参考文献
*1 総務省統計局「労働力調査年報2024年」(2025-04-01発行)

用語解説
ワークエンゲージメント
従業員が、仕事に対して前向きで充実した心理状態になり、仕事や組織に対する関係性を強めようとすること。

人間拡張技術
ロボットや人工知能(AI)、仮想現実(VR)などを駆使して人間の身体能力、認知能力、社会能力を拡張する技術のこと。

健康経営
現場従業員の安全や健康の管理を、従業員の満足度やモチベーション、さらにはワークエンゲージメントに繋げ、それを組織の生産性に繋げる総合的なマネジメントのこと。
「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標。

DX
デジタルトランスフォーメーションの略。デジタル技術を活用し、事業や業務内容を変革することを指す。

 
プレスリリースURL
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2025/pr20250613/pr20250613.html

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