同じ2016年に生まれた名作韓国ドラマでも、10年後の扱われ方はここまで違う。
主要キャストが再集結する特番が組まれるドラマもあれば、祝祭ムードでは振り返りにくい作品もある。
振り返れば、2016年は韓国ドラマにとって特別な一年だった。
『太陽の末裔 Love Under The Sun』『トッケビ~君がくれた愛しい日々~』『シグナル』『雲が描いた月明かり』『青い海の伝説』『麗<レイ>~花萌ゆる8人の皇子たち~』など。今なお日本でも語られる名作、話題作が相次いで生まれた年だ。
だが、10年後の現在地はそれぞれ大きく異なる。
主要キャストが再集結する作品がある。続編の撮影まで終えながら、止まってしまった作品もある。そして、当時を象徴する大ヒット作でありながら、いま改めて“祝う”には少し複雑な事情を抱える作品もある。
2016年の“韓ドラ黄金期”は、10年後のいま、思わぬ形で明暗を分けている。
10周年を祝う『トッケビ』
最も華やかな形で10周年を迎えようとしているのが、『トッケビ』だ。

tvNは、開局20周年を記念する「tvN 20周年エディション」の一環として、特別バラエティ番組『ともに輝く神-トッケビ10周年旅行』(原題)を企画した。
コン・ユ、イ・ドンウク、キム・ゴウン、ユ・インナら主要キャストが参加し、ドラマの象徴的な舞台だった江陵(カンヌン)を訪れるという。
5月に公開されたティザー映像では、俳優たちが劇中の名場面を思わせる場所を再訪し、「本当に10年ぶりに来た」「なんだか不思議な気分」と語る様子も映し出された。ドラマを象徴する赤いマフラーやそばの花のブーケも再登場し、視聴者の記憶を呼び起こす演出となっている。本編は7月4日に放送される予定だ。

『トッケビ』は2016年12月から2017年1月にかけて放送され、ケーブルチャンネルとしては異例の全国視聴率20%超えを記録した大ヒット作だ。
脚本家キム・ウンスクの世界観、イ・ウンボク監督の映像美、OSTのヒットまで重なり、放送終了後も“人生ドラマ”として語り継がれてきた。
10年後に主要キャストがそろい、ロケ地をめぐり、当時の記憶を笑顔で振り返る。まさに“きれいに祝える名作”の姿といえるだろう。
同じ流れに加わったのが、『雲が描いた月明かり』だ。

韓国KBSの関係者によると、同作の放送10周年を記念した特別バラエティ番組の制作が進められているという。放送日は未定で、出演者も調整中だが、制作自体は決定しているとされる。
2016年8月から10月にかけてKBS2で放送された『雲が描いた月明かり』は、ツンデレな王世子イ・ヨンと、男装して内官として生きるホン・ラオンの宮中ロマンスを描いた時代劇。パク・ボゴムとキム・ユジョンの瑞々しいケミストリーで人気を集め、最高視聴率23.3%を記録した。
『トッケビ』と『雲が描いた月明かり』に共通するのは、10年後も作品の記憶をポジティブに呼び戻せることだ。キャストの再会、名場面の再現、当時を懐かしむ空気。それらが、そのまま番組の魅力になる。
だが、2016年の名作すべてが、同じように10周年を迎えられるわけではない。
続編が止まってしまった『シグナル』
対照的なのが『シグナル』だ。

2016年1月から3月にかけてtvNで放送された同作は、過去と現在をつなぐ無線機を軸に、未解決事件を追う刑事たちを描いた名作サスペンス。キム・ヘス、イ・ジェフン、チョ・ジヌンらの熱演もあり、最高視聴率13.4%を記録した。
作品性の高さから長く続編を望む声があり、実際にシーズン2の制作も進められた。シーズン1の脚本を手がけた脚本家キム・ウニがシーズン2の脚本も担当し、2025年8月には撮影も終えた。2026年に放送されるとも伝えられた。
しかし『シグナル』シーズン2は現在、放送時期が見通しにくい状況に置かれている。
チョ・ジヌンの過去をめぐる論争の影響で、『シグナル』シーズン2はtvNの下半期編成からも外れた。大ヒット作の続編でありながら、俳優をめぐる問題が作品全体に影を落とした形だ。

もちろん、名作の価値そのものが消えるわけではない。『シグナル』が韓国ドラマ史に残る作品であることは変わらない。しかし、続編や記念企画は、作品の完成度だけで動くものではない。出演者の現在、世論の反応、放送局のリスク判断が重なると、どれほど待望された作品でも止まることがある。
『トッケビ』や『雲が描いた月明かり』が10周年特番へ向かう一方で、『シグナル』は続編が足踏みしている。ここに、10年後の明暗がはっきり出ている。
沈黙の『太陽の末裔』
そして、2016年に放送されたドラマのなかで最も象徴的でありながら、最も扱いが難しいのが『太陽の末裔』だろう。

2016年2月から4月にかけてKBS2で放送された同作は、最高視聴率38.8%を記録した社会現象級の大ヒット作だ。軍人ユ・シジンを演じたソン・ジュンギと、医師カン・モヨンを演じたソン・ヘギョのロマンスは、韓国だけでなくアジア各国で話題になり、“ソンソンカップル”という言葉まで生んだ。
2016年を代表する韓国ドラマを一つ選ぶなら、『太陽の末裔』を挙げる人も少なくないだろう。
にもかかわらず、『トッケビ』や『雲が描いた月明かり』のような10周年再集結企画は、今のところ出ていない。
ヒット作だからといって10周年企画が必ず行われるわけではない。ただ、『トッケビ』のような再集結型の特番を組みにくい事情は、やはり想像に難くない。
主演のソン・ジュンギとソン・ヘギョが、ドラマでの共演をきっかけに実際に結婚し、その後離婚した経緯があるからだ。作品の人気が2人の現実の関係と強く結びついて語られてきたぶん、主要キャストが笑顔で集まり、当時の名場面を懐かしむような企画は、どうしても組みにくいのではないか。

これが特番の有無を直接決めていると断定することはできないが、『太陽の末裔』が『トッケビ』のような空気で10周年を祝うのは簡単ではないだろう。
作品そのものは大ヒットし、今なお韓国ドラマ史に残る名作でありながら、私生活の経緯が作品の振り返り方を難しくしている。
実際、2023年3月にKBSが創立50周年を迎えてコンサートを開催した際、歌手の背景のスクリーンには『太陽の末裔』の名シーンが流れたのだが、それが議論となったことがある。
流れた映像が、ソン・ジュンギとソン・ヘギョの劇中のキスシーンだったからだ。
KBSを代表するドラマであり、そのドラマの有名シーンであるため、放映される理由は理解できる。ただ、一部からは、離婚した夫婦のキスシーンをあえて出す必要はあったのかという意見も出ていた。
オンライン上では「あえて、なぜ…空気を読むべき」「火事になった家に油を注ぐ行為」「いくら俳優でも再婚したばかりなのに」といった声が上がった。一方で「ドラマはドラマにすぎない」「50周年特集にふさわしい演出」といった意見もあった。

つまり『太陽の末裔』は、扱う側も一定の配慮を求められる作品になったわけだ。
一方で、ソン・ジュンギ個人は新たな道を歩んでいる。2027年上半期に放送予定の新ドラマ『ラブ・クラウド』(原題)への出演が伝えられ、『太陽の末裔』以来、約10年ぶりのKBSロマンチック・コメディとして注目されている。
こうして振り返れば振り返るほど、2016年は確かに韓国ドラマの黄金期だった。
名作は10年後も名作だが、出演者の現在、続編事情、世論、放送局の判断、そして作品と現実がどれほど結びついてしまったかによって、その扱われ方は大きく変わる。
2016年の名作がいま見せている明暗は、韓国ドラマがもはや作品単体ではなく、俳優の人生や世論の記憶まで背負うコンテンツになったことを物語っている。
■【写真】ソン・ジュンギ、再婚妻とともに初めて公式の場に登場



