かつてサガン鳥栖、鹿島アントラーズでもプレーした韓国人DFへの“暴行”が、思わぬ広がりを見せている。
発端は今年8月。シン・テヨン監督が韓国1部・蔚山HDの指揮官に就任した際のことだった。
当時、シン監督は選手たちとの初の公式対面の場で、Jリーグでのプレー経験もあるベテランDFチョン・スンヒョンの頬を叩いたとされている。クラブのドキュメンタリー映像がインターネット上に公開され、時間を置いて論争へと発展した。
今シーズン終了後、チョン・スンヒョンは「受け取る側が暴行だと感じたなら、それは暴行だ」としてシン監督を加害者だと指摘。多くの人の前で屈辱感を覚えたと主張している。

一方、シン監督は「親しみを表現した行動だった。彼が暴行と受け取ったのであれば、その点については謝罪する」としつつ、「実際に暴行や暴言があったのであれば、今後は監督職を務めない」と反論した。
本件はすでに大韓サッカー協会に正式に問題提起されており、公の議論となった以上、うやむやにすることはできない。事実調査の結果、問題が認められれば、シン監督に処分が下される可能性が高い。
蔚山HDは12月16日、「5日に大韓サッカー協会から受領した『蔚山HD選手団および前監督に関する論争の事実関係確認要請』の公文書について、15日に回答を完了した」と発表した。あわせて「選手との面談を通じて不適切な行為に関する事実関係を確認し、当該行為について当事者に口頭および書面で注意と改善を求めた。シーズン中に(シン・テヨン)監督との契約を解除するなど、必要な措置を講じた」と説明している。
このように、情勢はシン・テヨン監督の処分へと傾きつつある。明確な証拠映像が存在し、チョン・スンヒョンが被害を訴えている以上、反論は容易ではない。ただ、指導者と選手が公の場で対立する姿は好ましくないとして、自制を求める声もサッカー界から上がっている。

韓国スポーツエージェント協会のイ・ドンジュン会長は3日、声明を発表し、「我々の協会は、今回の事案の本質が『是非を巡る論争』ではなく、『尊重の欠如』にあると考える。指導者と選手は立場こそ異なるが、いずれもサッカー共同体を構成する対等な存在だ。互いを尊重し、共通の目標のもとで信頼と理解を積み重ねてこそ、サッカー産業は健全に成長できる」と指摘した。
さらに「今回の出来事をきっかけに、選手、指導者、関係者すべてが“リスペクトの文化”を軸とした新たなスポーツの生態系を築いていく必要がある。今、必要なのは非難ではなく省察、対立ではなく対話、そして何より互いへの尊重だ」と改めて強調している。
(記事提供=OSEN)



