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【成功する新業態】月2000円で飲み放題のコーヒースタンド

ビジネス 経営
スタッフとともに味わいを追及したコーヒーは、「もともとコーヒーマニアだった」という下田氏自慢の味
  • スタッフとともに味わいを追及したコーヒーは、「もともとコーヒーマニアだった」という下田氏自慢の味
  • 低予算でもコーヒーショップを開店したい人に向けて、最適のモデル店舗となったcoffee mafia
  • 株式会社favy飲食営業部営業企画課長の下田雅俊氏と、favy編集部の高見澤萌実氏
 少子化によってマーケットが縮小する中では、寡占状態の事業に新規参入しても成果は見込めない。今ビジネスを大きく成功させるために必要なのは、パイを奪い合うことではなく、新たなパイを生み出す「新業態」の開発だろう。

 前例のないビジネスモデルは大きな可能性を秘める一方で、新たな方法論、仕入れやマーケットの開拓をゼロベースから始めることになる。では、どうすれば成功する新業態を生み出すことができるのか? 連載第一回目では、日本初の定額会員制コーヒースタンド「coffee mafia」に、そのヒントを探る。

■中間コストの削減から生まれた“定額制コーヒー”

 「飲食店が簡単に潰れない世界をつくる」。これは、グルメサイト「favy」の運営とともに、飲食市場に特化したマーケティング支援を展開する、株式会社favyのコーポレートメッセージだ。

 同社ではこれまで飲食店に向けて、デジタルマーケティングと飲食業界の専門家によるサポートを展開。その成功のアイディアを形にするため、“新しい飲食店の形にチャレンジをするモデル店舗”として、「創作洋食店C by favy」を16年2月にオープンしている。昼は同社のオフィスとして、夜は飲食店として営業。クラウドファンディングで“生ハム食べ放題”の会員募集を行い話題となった。

 C by favyの成功を受けて、favyでは16年10月に新たな店舗をオープンした。一つが 完全会員制レストラン「29ON(にくおん)」。そしてもう一つが、「coffee mafia」だ。

 coffee mafiaのコンセプトは、“月額2000円でコーヒー飲み放題”と実に分かりやすい。favy飲食営業部営業企画課長の下田雅俊氏によると、そのアイディアの根底には「コーヒーの単価が高すぎる」という思想があるという。

「ドトールコーヒーショップやスターバックスコーヒーなどのカフェの普及、サードウェーブコーヒーのブームにより、今やドリップコーヒーは広く社会に浸透しています。その中でも、もっと気軽にコーヒーを飲める店があっても良いのではないかと考えました。当社では以前からコーヒー豆の焙煎業者と付き合いがあり、直接、大量に豆を買い付けることで、中間コストを削減できます。月額制のアイディアはここから生まれました」

 会員制で安定した収入が見込めることは、飲食店経営への利点も大きい。飲食店の客入りは天気などの外的要因によってムラがある。月によっては売り上げに見合わない仕入れや人件費を計上することもあるだろう。結果、設備費の減価償却が予定通りに進まずに、廃業する原因にもつながりかねない。しかし、毎月一定の収入を得ることができれば、この問題も解決する。

■クォリティの勝負を味一点に絞り、コストとインパクトを両立

 オープンしてから2ヵ月で、会員は約200名まで順調に増えた。西新宿の高層ビル街と住宅街の中間地点という立地もあり、会員の9割5分は20代後半から40代のビジネスマンだという。近隣にはIT企業も多く、コーヒーを何杯も注文しながら仕事をする人も少なくない。

 これは下田氏にとっては、予想通りの展開のようだ。coffee mafiaを立ち上げるにあたり、同氏がライバル視していたのは、コンビニが提供するコーヒーだったという。

「コンビニのコーヒーは、わずか100円で飲めて味も美味しい。オフィスに勤める男性に愛飲されています。我々がターゲットにしているのは、このブラックコーヒーを飲みたい層ですね。街のカフェに行くのは、カフェラテなど甘いものを嗜好する女性なので、そこで差別化を図っています」

 その一方でコーヒーのクォリティを向上させることには余念がない。独自のドリップによって、泡をたてずに、雑味の少ないすっきりとした味わいを追及。この手法に合う豆を探すため、オープン前には仕入れの調査を行ったようだ。結果、「もう他店のコーヒーは飲めない」と自負する自慢の味を作り上げている。マニア向けにシングルオリジンのコーヒー12種類も用意した。


 ただ、coffee mafiaが高級路線を目指しているかというと、決してそういうことでも無さそうだ。同店は先にオープンしたC by favyと同様に、モデル店舗という位置づけ。カフェを始めたい人に向けて、“定額会員制コーヒースタンド”というビジネスの可能性を提案している。加えて、出店に向けてこだわったのが、参入を容易にするための低価格な初期投資だ。

「店の内装には、コストはかけていません。工事もわずか10日間で終え、コンパクトに仕上げています」

 白を基調とした店内では、たっぷりとした日差しで明るさ演出しているが、壁は打ちっぱなしのコンクリート。ガスを引かずに、IHを利用しているのも「排煙ダクトに最もコストがかかるため」だという。

■ネットと飲食店が結びつき、新たなビジネスが生まれる

 Favyが運営するグルメ情報サイトは、月間約2500万アクセス、月のアクティブユーザー数が1000万人以上と膨大な利用者を集めている。インターネットと飲食店を結びつけるという同社の取り組みが成功を収めつつあるのは、こうしたネットユーザーの存在が大きいといえる。今後は2号店の進出も視野に入れており、コーヒー豆の焙煎業者と共同で、インターネット上でプロモーション活動を行っていく予定だ。

 ただ、その最適な拡散方法は店によって異なるようだ。クラウドファンディング「Makuake」での会員権の先行販売では、同時オープンした29ONに予約が殺到したのに対して、coffee mafiaの反応はいま一つだったという。これについて担当の高見澤萌実氏は、カフェという業態にあったと分析している。“出退勤や昼休みに立ち寄る”というカフェの利用者の傾向をみると、ネット上に広く募集するクラウドファンディングとの相性は悪かったのだろう。

 ネットユーザーをいかに取り込むか。そこに注力し、インパクトある新業態の提案で成功しているのが、favyのビジネスモデルの根底にある。その上で、定額制という仕掛けが利用者だけでなく、事業者にとってもプラスになっているのが、coffee mafiaというモデル最大の妙味と言えるだろう。単純に客の関心を引くだけでなく、ロングランが可能となる経営を構築すること。新業態といういつブレイクするか分からない事業の展開においては、忘れてはいけない重要な要素と言えそうだ。

成功する新業態:01|月2000円で飲み放題のコーヒースタンド

《斉藤裕子/HANJO HANJO編集部》
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