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【新ものづくり・新サービス展】新業態を成功させるツボ

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食品を冷凍すると水分が抜けてパサパサになり、味も落ちてしまう。その中でも、細胞を破壊しないように凍結し、味や風味を生かすのが京料理せんしょうのこだわりだ
  • 食品を冷凍すると水分が抜けてパサパサになり、味も落ちてしまう。その中でも、細胞を破壊しないように凍結し、味や風味を生かすのが京料理せんしょうのこだわりだ
  • 花粉症の予防効果があるじゃぱらを使ったポン酢も提供。京料理せんしょうでは健康を意識した京料理のイノベーションを目指す
  • およそ15年前から教材印刷を手掛けてきたトキワメディアサービス
  • トキワメディアサービスの剥がせる製本であれば、数ページの小冊子を表紙でまとめ、1冊の本に仕上げることも可能。必要な部分だけを剥がして持ち歩ける
【記事のポイント】
▼優れた技術をアピールするだけではマッチングははかどらない
▼新技術に付加価値だけでなく、コストダウンの可能性も見出す
▼伝統ある企業は、拡大ではなく革新に価値をおくことが重要


■“剥がせる製本”で高付加価値とコストダウンを両立させるアイディア

 近年では中小企業において、展示会やウェブといったマッチングの機会が増えている。11月30日より東京ビッグサイトで開催されている、「ものづくり補助事業」の成果を集めた「中小企業 新ものづくり・新サービス展」もその一つだ。会場では各社が自慢の技術をさまざまな形で展示している。ただ、その素晴らしさは理解できても、それをビジネスに活かす方法を考えなければいけないのが、マッチングにおける難しさ。そこで注目を集めているのが、単なる技術紹介に終わらず、その活用法までを提案しているブースだ。

 埼玉県・朝霞に工場を持つ印刷会社「トキワメディアサービス」では、その名も「剥がれ三兄弟」という、剥がせる製本技術を開発。これを、章単位の小冊子として剥がして使える教材や試験問題、楽器パートごとに剥がして使える楽譜としての利用を提案している。

 このような提案の中でも興味深いのが、剥がせる製本が高付加価値としてだけでなく、コストダウンにも貢献している点だ。問題用紙でよく使われている下から上へと開く“天開き”の冊子は、ここ数年で見る機会が少なくなった。大量生産が利かなくなったことで、その印刷コストは値上がりしている。しかし、最終的に剥がして使うのであれば、天開きである必要性はない。この提案が受け入れられて、ある発注先では問題集の製本を横開きに変更。コストを抑えることに成功したという。

 また、同社では剥がしたページを元通りに貼り付けられる脱着製本「だっちゃくん」も手掛けているが、これによってテキストの配布側は無くさず、配りやすいようにとビニールなどでまとめる手間やコストを省くことができた。利用者もバインダーのような、後付けのコストを支払う必要はなくなり、発注が増えたトキワメディアサービスも含めて三方良しの関係ができている。

 トキワメディアサービス取締役営業本部長の桑田祐治氏によると、「生涯学習のユーキャン」や「栄光ゼミナール」のテキストに採用されたことで、現在では生産能力の約3割が剥がせる製本や脱着製本のラインになっているという。その開発のきっかけは、ある講師のテキストの使い方にあった。

「分厚いテキストの中でも、1日の授業で使うのは50ページ程度しかありません。鞄の中で重くかさばることを嫌ったその講師の方は、毎日必要な部分だけテキストを切り取って持ち歩いていました。そこに新たな需要を感じましたね」



■厨房の優れた技術で、料理だけでなくビジネスモデルまでを生み出す

 「ものづくり補助事業」の補助金を活用しているのは、製造業の関係事業者だけではない。京都の四条葛野大路に店を構える「京料理せんしょう」、その補助金対象となったプロジェクトが高齢者向けの「ふしめのやわらか重」シリーズだ。

 「ふしめのやわらか重」は板前が作った料理を、凍結含浸法を取り入れた独自の手法で冷凍。舌で潰せるほどに柔らかくした介護食だ。すでに約100件の福祉施設との提携が進んでおり、17年からは関西2府4県まで提供範囲を拡大するという。個人向けではデパートや宅配での提供も検討しているとのことだ。

 料亭と介護食。この一見ミスマッチに思える組み合わせだが、京料理せんしょう顧問の吉川知央氏によると、そこには料亭としてのサービスへの心意気があったという。

「あるお客様が料理を持ち帰ろうとしたときに、祖父が歯が悪くて、同じものを食べられないことを嘆いておられました。そこで何かできないかと料理長が考えて、作ったものが『ふしめのやわらか重』の原型です」

 京料理は伝統を大切にしており、その中でどう付加価値を付けるかが重要となる。介護食という取り組みは、伝統の中には存在していないが、「その中で料亭の味を守ること」には最大限の努力を図っているとのことだ。利尻昆布の出汁を利かせた味、和菓子にも似た見た目の再現、本能に訴える香り。そのすべてを大切にすることで、はじめて「介護食で京料理を食べる」という体験を生んでいる。

 ある福祉施設では誕生月の要介護者だけに、「ふしめのやわらか重」を提供。年末に向けては同じ手法で作ったお節も準備しているという。必要なのは冷凍施設だけなので投資コストも大きくなく、厨房の空いた時間を使うことで、1日300食ほどの提供を実現できる目算だ。

「和食の店には和洋折衷や量販向けの展開をしているところもありますが、京都の料亭には向きません。食に関する技術開発は料亭でも進んでいますが、その中で今回の取り組みのようなイノベーションをおこしていくことが、超高齢化社会の中での新たな料亭の形になるのではと考えています」

 良い技術をアピールして、それを元に大企業に製品を開発してもらう。一つの成功モデルであることは間違いないが、それを続けていては、いつまでも下請けというポジションは変わらない。マーケットのニーズに着想を得て、需要を満たす技術を開発し、それを完成品の形で提案すること。製品のトータルコーディネートが今、ビジネスを成功させるための重要な要素となっている。

【新ものづくり・新サービス展:2】新業態を成功させるツボ

《丸田鉄平/HANJO HANJO編集部》
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