【ひろしまIT総合展】日本が今すべきこと…製造プラットフォームサービス事業 | RBB TODAY
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【ひろしまIT総合展】日本が今すべきこと…製造プラットフォームサービス事業

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「ドイツ第4次産業革命と我が国製造業のグローバル戦略」と題して講演する藤野直明氏
  • 「ドイツ第4次産業革命と我が国製造業のグローバル戦略」と題して講演する藤野直明氏
  • 藤野直明氏
  • 藤野直明氏
 西日本最大のIT展示会「ひろしまIT総合展2015」の同時開催イベント「ひろしまIT融合フォーラム」にて、野村総合研究所 産業ITイノベーション事業本部 主席研究員 藤野直明氏が「ドイツ第4次産業革命と我が国製造業のグローバル戦略」と題して講演した。

 ドイツの第4次産業革命、通称インダストリー4.0は、日本同様製造業の国と言われるドイツの学術アカデミーAcatechが2013年 メルケル首相に提言して実現したドイツにおける産官学による技術政策のことである。

「日本は人工知能、ビッグデータといった言葉に着目したが、本当に必要だったのはCPSでした」

 藤井氏が繰り返すCPSとはサイバーフィジカルシステム(Cyber Physical System)のことだ。発展したサイバーの領域を生産システムなどと連携させ大量のデーターを蓄積・分析することで、企業や国の垣根を越え、生産の企画から生産準備までのラインを連携させ、工場の現場と中枢をリアルタイムにつなげる「統合度の高い分業体制」を可能にするCPSは、ドイツのみならずアメリカ、アジアでは韓国などではすでに何年も前から研究されているが、日本ではほんの40名ほどしか専門家がいないのだという。

 2億ユーロもの補助金を得たインダストリー4.0の背景には、ドイツの未来への強い危機感がある。現時点でドイツは製造業の国としての優位性を感じているものの、米国の新Big4(Apple, Google, Amazon, Facebook)の製造業への参入、中国やインドにおけるESO(エンジニアリング サービス アウトソーシング)の台頭を目の当たりにし、過去に日本の製造業の侵攻を経験したドイツだからこそ、10年後に現状を維持できるかどうかに対しては敏感であったのだ。

 インダストリー4.0を理解するキーワードは「グローバル化」「標準化」「デジタル化」の3つだ。この中でとりわけ日本で行われていないのが「標準化」である。インダストリー4.0では、ハードとソフトのモジュール化・インターフェースの標準化を徹底することで、いわゆるオープンイノベーションを可能にする。日本は伝統的に「匠の技」とも言える各製造業者内での閉じた経営モデルを持っているが、その意味でインダストリー4.0は正反対と言える。

 藤野氏が例を挙げたドイツの企業Bosch社では、「マザー工場」という概念がデジタルによって再構築されているという。Bosch社は、世界11カ国の自動車部品工場において5000の標準生産設備をネットワーク化、工場での物流や保守の全てをデータベース化して「スマートな」マザー工場を実現している。もちろん現場で解決できない問題はすべて瞬時に中枢に送られ、その結果もまたデータベースに取り込まれる。藤野氏が日本も推進するべきだ、と主張するのはまた、Bosch社も行っている製造プラットフォームサービスの事業化だ。

「例えるならテレビゲームは、誰でも使うことはできても、開発はできない。それと同じように、新興国に最も高度なノウハウの部分、コア・モジュールの部分はブラックボックスにした状態で、製造のプラットフォームサービスを事業として提供するんです。インターフェースが統一されているから、グローバル展開の新しいモデルとしても検討できる。製造ノウハウを流出するのではなく、製造プラットフォーム事業なんです」

 製造業以外の、例えば空港の国際物流においてはすでに1989年からフルオートメーションシステムが導入されているそうだが、実は日本ではこの分野ですら、2社しか利用をしていないという。アバクロやコーチ、ギャップといった世界的アパレルを多数含む、世界40カ国2万5000以上の工場が利用している商品企画から配送管理までを行うアパレル用クラウドサービスにいたっては、日本企業の利用はゼロ。オープンイノベーションやプラットフォームサービス、すなわち先ほどのCPSにおいて、いかに日本が立ち遅れているかは明白だ。

 野田氏は、世界で日本を除いた「標準」ができつつある中で、日本が考えるべきはドイツのような5~10年後の経営戦略だと主張する一方、かつて企業にあったような中・長期戦略の検討をするような部署がないことを嘆く。

 野田氏が講演で一貫して訴えたのは、CPSにおいて世界に立ち遅れた日本の奮起であった。これまでの自前主義からオープンイノベーションへと移行し、その成果をデジタル化し分析して「製造プラットフォームサービス事業」として世界へ展開する。

「これは、巨大な白地のマーケットです。日本がやれないはずがありません」

 今回の野田氏の講演は、インダストリー4.0の解説であるのと同時に、今後の日本のIT産業への叱咤激励でもあった。
《築島 渉》
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