地下鉄にも広がるLTE!各キャリアの取組みは?……重要なのは“本当につながるかどうか” | RBB TODAY
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地下鉄にも広がるLTE!各キャリアの取組みは?……重要なのは“本当につながるかどうか”

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MMD研究所「Android端末、iPhone 5 全国主要地下鉄通信速度比較調査」
  • MMD研究所「Android端末、iPhone 5 全国主要地下鉄通信速度比較調査」
  • ITジャーナリストの法林岳之氏
■注目度を増すLTE通信、各社の取組み

 昨年来、スマートフォンにおける通信環境への注目度は高まり続けている。とりわけ、高速モバイル通信の代名詞ともなったLTEに関しては認知度、注目度ともに高く、街を歩けば「お、ここLTE入ってる」「あれ、さっきまでLTEつながってたのに」といった会話が普通に聞こえてくるほどだ。そんな中、キャリア各社は「基地局何万ヵ所設置」「人口カバー率何%突破」といった指標を出しながらLTE通信網の整備状況をアピールし、競い合っているが、そうした指標が必ずしもユーザー側の実感と結びついていないという指摘もある。エリア化されたはずが3Gしか入らなかったり、確かにLTEも入るが少し移動するとすぐ切り替わってしまったりする場合もあり、キャリア発表だけを鵜呑みには出来ない。

 そうした状況で、ユーザーは何を参考にネットワークを評価し、判断すればいいのか。各社のLTE整備の特徴なども含めて、ITジャーナリストの法林岳之氏に話を聞いた。

 まず各社の特徴だが、「一番早く標準化をコミットしたのはドコモで、技術的なことやLTEが目指すべきところなど総合的に最も理解していると思います。ただ、3G(W−CDMA)の時に、世界でいち早くを意識しすぎた結果、グローバル標準と乖離してしまったということもあって、LTEに関しては急ぎすぎず堅実に進めている印象です」「KDDIは、歴史的にみると、通信方式を変えたり、新しい方式を取り入れるタイミングが上手い。会社のカラーなのかなと思いますが、CDMAの頃から周波数をいかに効率よく使うかということを常に考えていたようで、LTEも用意周到に準備を進めておいて一気に垂直立ち上げしてきました」「ソフトバンクも古くから取り組みは行っていますし、また旧ウィルコムの技術者が多数いることもあって技術力は持っています。しかし、物理的な基地局設置場所の確保や実際にスループットを出すという部分で、先の2社に比べて少し苦労しているように思います」と話した。各社、サービスインの時期やこれまでの歴史、立ち位置などによって長所短所があり、取り組み方にも差が出てくるようだ。

■基地局の数、エリアカバー率はどう見るべきか

 今、各社が基地局数やエリアカバー率などを競っている状況については、「LTEに限った話ではありませんが、基地局設置というのはとても技術を要するもので、ただ数を建てればいいというものではありません。他の基地局との電波干渉や建物の影響など考えながら、効率よく適切な位置に建てることが重要です。もちろんネットワーク側の設定も大切で、きちんとマネジメントするにはネットワーク設計者の経験が不可欠です」と、単に数だけを追いかけることには疑問を呈した。また、「昔地下鉄のエリア化が始まった当初は、駅に入ってきた多数の人が一斉にエリア内に入ることで、位置決めの処理が追いつかず、電波は立っているけど繋がりにくいということがよく起こっていました」とのことで、一口にエリア化といっても、そこで実際にどれだけの人がどれだけの通信をするのか、それに応じたキャパシティを持たせていなければ、数字と実感との乖離が起きてくる。実際の利用環境をどれだけ想定できているか、これもネットワーク構築の大きなポイントになるだろう。

■利用意向の高い地下鉄の整備状況

 実際の利用環境の中で、特に通信環境を維持したいという要望が高く、各社力を入れて整備しているのが地下鉄だ。地下鉄のエリア化は、各キャリア共同で進めているが、実際の通信環境に差はあるのだろうか。今年の1月にMMD研究所が実施した「Android端末、iPhone 5 全国主要地下鉄通信速度比較調査」によれば、全国主要地下鉄でのLTE補足ではAndroid、iPhone 5ともにKDDI(au)が優位な結果が出たという。これは全国6都市、34路線、615の駅ホームでLTEの補足状況を調べたもの。Android端末ではKDDI(au)の補足率が97.2%、NTTドコモが48.5%、ソフトバンクモバイルが8.0%、iPhone 5ではKDDI(au)の補足率が92.2%、ソフトバンクモバイルが10.9%とどちらもかなり大きな差が出ている。

 この結果について法林氏は「先ほど話したように、基地局設置には高い技術を要します。さらに日本の地下鉄は非常に入り組んだ作りになっていて、トンネルもまっすぐ一直線ではないので、かなり綿密に計算してアンテナの位置や角度、ネットワーク側のチューニングなどを行わないと、十分なネットワーク環境は構築できないでしょう。その点、KDDIは上手くマネジメントできているのだろうと感じます」とした。また他のキャリアに関しては、「恐らくですがドコモはユーザー数が多いことが一番のネックになっています。シェアに応じたキャパシティを用意するのはかなり大変でしょう。ソフトバンクは、通常日本で運用されているFD-LTEと、ソフトバンク4Gで使用しているAXGP方式の両方を進めていかなければいけないので、苦労していると感じます」とのことだ。

■どこで、どれだけ安定してつながるかが重要

 電波は水物、とよく業界では言われる。確かに、電波は周りの影響を受けやすく、たとえばRBB TODAYが提供しているSPEED TESTで通信速度を計測してみても、少し位置を変えたり計測日時をずらすだけで数値が異なったりする。なので、計測は複数回行い、あまりにぶれた数字は除外するようにしている。「個人的には、速度など、あまりベンチマークに振り回されない方が良いと思います。それよりも、どこで使えるか、どれだけ安定して使えるかを意識した方がいい。各社から発表される情報は一つの傾向として捉えるようにして、それぞれの情報だけでなく総合的にどうなのか判断するべきだと思います」。カバーエリアが広くても安定しない、速度が速くてもエリアが狭い、というのでは“快適な使い心地”とは言えない。地下鉄をはじめ、それまで「圏外」が常識だった場所でストレスなくネットワークが利用できた時は「おっ!すごい!」という感動を覚える。しかし、そうした感動を覚えることも無くなるほどに、どこでもシームレスにネットワークにつながる社会が来れば、それに越したことはないだろう。
《白石 雄太》
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