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【ニールセン博士のAlertbox】ユーザビリティは誰にでも出来る

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Jacob Nielsen博士
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 ユーザビリティとは料理のようなものだ。皆が成果を必要とするが、ちょっとしたトレーニングをすれば誰にでもそれなりには出来る。しかし、美食家向けの料理を作り出すには熟練の手を必要とする。

 ディスカウントユーザビリティ運動の基本的理念の1つに、我々には世界中で行われるユーザビリティへの取り組みの総量を大幅に拡大させる責務があるというのがある。この実現のためには、より多くの人にユーザビリティという業務に取り組んでもらうことが必要となる。

この目標は以下のいくつかの理由により、問題なく実現可能である。

・ユーザーテストのようなユーザビリティの基本的な活動を行うことはデザイナーや開発者にも可能である。小規模のプロジェクトで、ユーザビリティ専門のエキスパートがいなくても、なんとかはなる。

・シンプルなユーザビリティ(例えばユーザー5人のテスト)は安い経費で実行可能だし、アジャイル開発のような進行速度の速いプロジェクトにも簡単に組み込める。

・もっとも重要なユーザビリティの手法も学ぶのは難しくない。例えば、我々は3日間の実地訓練ワークショップで、ユーザーテストのやり方をデザインチームに教えているが、そこでは彼ら自身のデザインと何人かの顧客を使ったすぐに出来るテストを体験してもらっている。

 正直なところ3日あれば、小規模なユーザビリティプロジェクトは完了する。

・1日目:調査の計画を建て、テストのタスクを書き出す。
・2日目:(セッションの間に片付けをしながら)5人のユーザーを各1時間テストする。
・3日目:結果を分析して、特に推奨されるデザイン改善点をまとめる。

 どんなに進行速度の速いプロジェクトでも、ユーザーエクスペリエンスを改善するために3日確保することは可能なはずだ。1度もユーザーテストをしないまま、疑いを知らない人に向けてデザインを放つことなど許されることではない。

 ユーザビリティのROI(投資利益率)は非常に高い。今までテストを一度もしたことがない場合、コンバージョンレートやその他のビジネス指標の値を倍以上に出来ることも多いだろう。

■ユーザビリティの専門家が手伝えるのはいつか

 私の経営している会社は売り上げの3分の1をユーザビリティのコンサルティングによって得ている(それ以外の3分の2はユーザーリサーチのレポートを独自に発行したり、ユーザビリティカンファレンスを定期的に主催したりすることによって得ている)。ユーザビリティは誰にでも出来るとどうして私が言えるのか。仕事をしてない時の自分のことを書いただけかって? そうではない。

 ユーザビリティとは夕食を作るようなものである。

・皆、成果は必要だ:あなたが最終的には何かを食べる必要があるのと同じく、あなたの会社にもビジネス上の目標を達成する必要がある。ユーザビリティを通してデザインを改善すれば、ずっと良い成果を手に入れることが可能になる。

・一番基本的なことなら誰にでも実行出来る:鶏肉を揚げたり、じゃがいもを料理したり、顧客5人を使って短時間のテストを実施したり、ユーザビリティガイドラインのチェックリストに則ってデザインに点数をつけたりすることは、ほとんど誰にでも出来るものである。

・こうした基本は誰でもごく短時間で習得出来る:どれもそれほどは難しくない。

・卓越したレベルというのは基本を超越したところに存在している:高級レストランに行って、料理長の手による料理を食べることと、自分で20分でさっと作ったものを食べることの間には非常に大きな違いがある。同様に、ユーザビリティの専門家はあなたのユーザーのニーズと可能なデザインの方向性について知見を与えてくれるが、それらは専門がユーザビリティでない誰かから得られるアドバイスよりもずっと洞察に富む。

・初心者から専門家にいたるまで、スキルのレベルというのは連続体の形で表され、二極化しているわけではない。学習するごとにうまく出来るようになるというわけだ。ユーザビリティと料理は継続して教育を受けることに特に向いたものである。なぜならば、学んだこと何もかもが今後何年も有用であるからだ。これこそが私がユーザビリティのトレーニングを力説する理由である。学んだこと一つ一つのすべてによって、より良い成果を手に入れることができるのである。

 料理の喩えはさらに他の例にも当てはめられる。

・星がいくつもついているような美食家向けのレストランは素晴らしいものだが、時には近所にある目立たないレストランがふさわしい場合もある。同様に、世界的に認められたユーザビリティ会社を連れてくる代わりに、二流のユーザビリティ会社はもちろん地元の三流のコンサルタントを雇うべきときもある。デザインプロジェクトのほとんどには、スキルの低い担当でも十分にこなせるような、単純作業的で平凡なユーザビリティ作業も多く含まれているからである。

・たとえそうするお金があったとしても、外食というのは毎日するべきではない。1週間のほとんどの日において慎ましい食事を取ることにより、ウエストラインは保たれる。同じように、日常的なユーザビリティ活動の多くがデザイナーや開発者自身によって行われるとしても、それはプロジェクトにとって悪いことではない。こうした人々がユーザビリティのガイドラインのことをよく知れば知るほど、彼らはデザイン上の間違いを侵さなくなるし、製品を実際にどう使用するかわかった後に必要になる手直しも減る。

・多様性は人生を豊かにする。メキシコ料理、インド料理、中華料理、日本料理、イタリア料理、フランス料理、どれも偉大な料理だ。なぜ1つだけを選べよう。同様に、いろいろなユーザビリティの手法、例えば、ユーザーテストやガイドラインのリビュー、外部の専門家による分析、解析や比較テスト、フィールドスタディを組み合わせれば、最適なデザインに関する最もすぐれた知見が得られる。熟練したユーザビリティの専門家が持っているのは非常に中身の充実したツールボックスである。それは数日間のトレーニングによって誰にでも使いこなせるシンプルな手法の域を超えたものである。

・たまには自分以外の人間に仕事をしてもらうのもいいものだ。私はインド料理が大好きだが、作ったことは一度もない。スパイスを混ぜ合わせてローストするだけでもたいへんだと思うからである。そのうえ、うちにはタンドールオーブンもない。こうしたことに精通した人なら、より短時間で作業をすることが可能だし、作業にふさわしい道具も既に持っている。

・会社の方針や「いつもやっているやり方」に縛られない部外者であることに価値がある。料理においても、おばあちゃんの神聖なレシピとは違うやり方で鶏肉を料理したくなることもある。ユーザビリティでは、新鮮な視点を持つ人には新しいものが見えるし、内部の人間なら検討するだけで首になってしまうようなことを口に出すことも出来る。(例えば、本人が気に入っている副社長の大きなアニメーションはホームページ上には載せるべきものではないかもしれない。もしそれを外したいようであれば、遠慮無く私のせいにしてよろしい)。

 これは実にバランスの問題である。そう、他の分野と同様にユーザビリティにおいても専門家は付加価値をつける。専門家というものはほとんどの人がなし得ること以上のことをするのが可能なのである。しかし、だからといって、ユーザビリティは専門家だけの責任で行うべきものではない。ユーザーエクスペリエンスを向上させるためには、チームの皆が責任を持つ必要がある。そして、ユーザビリティは誰にでも出来る。基本的な手法がごく簡単だからである。

※この記事はユーザビリティ研究者ヤコブ・ニールセン博士が運営するサイトuseit.comで連載中のコラム『Alertbox』の転載・翻訳記事です。
株式会社イードが運営する「U-site」では、博士からの正式な許可を得て同コラムの全編を日本語訳し公開しています。
《RBB TODAY》

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