【第20回東京国際映画祭】クロージングセレモニー〜各賞の行方は!?(後編) | RBB TODAY
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【第20回東京国際映画祭】クロージングセレモニー〜各賞の行方は!?(後編)

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壇上に上がるマリーナ・ロッコ
  • 壇上に上がるマリーナ・ロッコ
  • マリーナ・ロッコ、サルバトーレ・マイラ監督、プロデューサーのジャンマリオ・フェレッティ
  • 壇上に上がるピーター・ハウイット監督
  • 喜びを語るピーター・ハウイット監督
  • エリン・コリリン監督
  • サッソン・ガーベイ
 そしていよいよコンペティション部門。出品された15タイトルと国際審査員団があらためて紹介され、モントリオール世界映画祭ジェネラルディレクターのセルジュ・ロジック、「ライフ・イズ・ビューティフル」で知られるイタリアの作曲家ニコラ・ピオヴァーニ、「多桑/父さん」の脚本家で監督のウー・ニエンジェン、「おかあさん」「東京物語」などに出演してきたベテラン女優・香川京子、「居酒屋兆治」「鉄道員(ぽっぽや)」の降旗康男監督、そして審査委員長で「スター・ウォーズ」「ブレードランナー」など数多くの名作・ヒット作を放ってきた映画プロデューサーのアラン・ラッドJr.の各氏が各賞の発表とプレゼンターをつとめた。

 最優秀芸術貢献賞はイタリア映画「ワルツ」。サルバトーレ・マイラ監督、女優のマリーナ・ロッコ、プロデューサーのジャンマリオ・フェレッティが登壇し、ウー・ニエンジェン氏から賞状、トロフィー並びに賞金が授与された。マイラ監督は作品に関わったすべての人に対する賞であることを光栄に思うとした上で、重要なフェスティバルで実験的な作品が受賞することは「作家が商業的なことを考えずに作品をつくるのを認められたことになりますから大変うれしく思います。つまり、映画は常に新しいことを追求して行けるのだということを証明しているのではないでしょうか」と述べた。

 また、プロデューサーのフェレッティ氏は「明日にはイタリアに帰国しますが、すぐに次回の映画祭のために新しい映画の製作に入りましょう!」と朗らかに宣言した。

 最優秀主演男優賞にはポーランド映画「トリック」で6歳のステフェク少年を演じたダミアン・ウルが選ばれ、代理としてアンジェイ・ヤキモフスキ監督と美術監督のエヴァ・ヤキモフスカにニコラ・ピオヴァーニ氏から賞状、トロフィー、賞金が贈られた。ヤキモフスキ監督は「ダミアンがこの知らせを聞いたらどれだけ高くジャンプすることでしょう。これまでは各地の映画祭に彼を連れて行ったので、今回もそうしようと思っていたら、彼のお母さんに、もうたくさん、勉強をさせてちょうだいと言われてしまったんです」と笑わせた。

 最優秀主演女優賞には香川京子氏からインド映画「ガンジー、わが父」のシェファリ・シャーの名が告げられ、フェロス・アッバース・カーン監督が代理で賞状、トロフィー、賞金を授与され、「ここに来られただけで嬉しいのにたいへん驚いています。この映画に関わったすべての人たち、審査員の方々、何よりもシェファリ・シャーに感謝したいと思います。そして、この映画は100年前に武器よりも言葉で闘うことを奨励したガンジーに捧げていますので、この場を借りて感謝の気持ちを捧げたいと思います」と喜びを表した。

 最優秀監督賞に輝いたのは「デンジャラス・パーキング」のピーター・ハウイット監督。アソシエイト・プロデューサーのジュールズ・ベーカー・スミス氏を伴って登壇し、降旗康男監督から賞状、トロフィー、賞金を受け取った。「何てことだ! 何てことだって繰り返しちゃうよ! もう気を失うしかないね。審査員の皆さんの顔を見て、きっと私の作品は気に入らないだろうなってジュールズと話していたところで(笑)。私に人を見る目がないこと証明されて良かった。今まで俳優、脚本、監督と映画業界でのキャリアは30年。25歳くらいにしか見えなくても、実は50歳。今までで最高の栄誉です。このトロフィーを手にすべき人はたくさんいますが、あげません! 『デンジャラス・パーキング』を作るにあたっては素晴らしい人々に恵まれ、彼らはほとんどノーギャラです、私も含めて。まあ、私はリッチですから問題ありませんが。私って愉快でしょ。資金集めに苦労したことは確かで、説得もし、中には騙した人も。だから、スタッフ、キャスト、ここいるジュールズにも、すべての人に感謝したい。この賞はそういった人たちひとりひとりの努力の賜物だから。あとふたつ言わせてください。まず、東京国際映画祭の関係者に感謝を。皆さん温かく迎えてれて、この映画祭を盛り上げようという気持ちが伝わってきて。私はその気持ちを母国に持ち帰りたい。宝物にして一生忘れません。最後に、3人の人物にこの賞を捧げたい。まず、私の美しい妻ロレイン。どんなときでも傍にいてくれる最愛の妻に。そして、あとふたり、ひとりはまだこの世に生まれていません。来年の1月に生まれてくる我が娘エイミーに。最後のひとりはすでにこの世にいませんが、ほんとうに賞を受けるべきは、原作小説の作者スチュアート・ブラウンです、彼の精神は映画の中に生きていて、作品の評価はすべて彼に向けられるものだと思うから、この賞を捧げたいと思います。また、戻って来るよ!」

 審査員特別賞は「思い出の西幹道(仮題)」。セルジュ・ロジック氏から、リー・チー・シアン監督、脚本のリー・ウエイ、女優のシェン・チアニーに賞状、トロフィー、賞金が贈られた。リー監督は「こんなに大きな賞をもらえるとは思ってもいませんでした。感謝を捧げたい人は大勢いますが、まずはパートナーであり脚本回であり妻であるリー・ウェイに。94年からこの脚本を温め、当時彼女はまだ北京大学の学生でした。もちろんその時は13年後に映画として完成するなんて思っていませんでした。その13年間は中国が日々変わり続ける激動の時期でした。私たち自身も激しい波に巻き込まれたりもしましたが、この作品を映画化したいという熱い思いは燃え続けたのです。どんなことが起ころうとも信じ続けることが大切なんです。この先もささやかではあっても日々の幸せを感じながら生きて行きたいと思います」と感無量の面持ちで述べた。

 そして、栄えある最高賞の東京サクラグランプリにはイスラエル=フランス映画「迷子の警察音楽隊」が輝いた。審査委員長アラン・ラッドJr.氏からエリン・コリリン監督と主演男優サッソン・ガーベイに賞状、トロフィー、賞金5万ドルが、また、東京都知事賞の賞状と麒麟象も贈られた。コリリン監督は「たいへん嬉しく誇りに思います。東京国際映画祭の皆さんはワンダフルな方々ばかりで、とても温かく迎えてくださいました。近いうちにまた戻ってきたい」とやや声を震わせて喜びを伝えた。そして「この作品は私の友人であり同僚である脚本家で監督のエリン・コリリンの夢でした。そしてその夢を実現させたのです」とイスラエルのベテラン俳優サッソン・ガーベイは若い監督を守り立てた。

 アラン・ラッドJr.氏は総評として「今回、世界各国の素晴らしい映画を観ることができました。しかし、こういう映画祭では賞を獲れば嬉しいし、獲れなければ哀しいものですが、私たち審査員が言えることは、今回は賞に値する作品がたくさんあったということです。一本ずつ吟味しながら意見を交換し合いました。そういった意味でも今回の東京国際映画祭は一流の映画祭になったと思います」とまとめた。

 最後に角川歴彦チェアマンが「映画という芸術は誠に魅力的で華やかなものです。観客に夢を与え、ときにはその人の人生に決定的ともいえるような影響を与えることもある素晴らしいメディアです。しかし、映画の現場は実態としては非常にハードなビジネスです。ヒットするかしないかという現実に橋をかける裏方の存在も重要です。映画祭はそんな裏方の人たちも含め映画の創造に参加しているすべての人々に光りを当て、コミュニケートできる唯一のイベントだと私は考えています。東京国際映画祭(TIFF)は第20回を数えて、初めてその根本的な役割を実現することに成功しました。世界中の映画人が参加して、国際という言葉にふさわしい国際色豊かな場になり始めました。これにはTIFFそのもの努力とフィルムマーケットTIFFCOMとの多様な相乗効果が貢献しています。“クール・ジャパン”を世界に発進する秋葉原エンタまつりも見逃せません。これからも東京国際映画祭が映画産業に関わってゆく人たち、スポンサー、政府、地元の人たちに喜びと勇気を与え続けることを願ってやみません。最後に裏方として映画祭に関わっていただいた皆さんに感謝します」と締めくくり、受賞者、審査委員、ボランティア・メンバーら映画祭に参加し盛り上げた大勢の人々がステージに集い、キャノン砲で吹き上げられた紙吹雪が舞い散る中、第20回東京国際映画祭は閉幕となった。(photo by 稲葉九)
《齊田安起子》
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