既存サービスとの統合を見据え、新たな実験が始まるWiMAX | RBB TODAY
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既存サービスとの統合を見据え、新たな実験が始まるWiMAX

エンタープライズ モバイルBIZ
【左】アッカ・ネットワークスWiMAX推進室のシニアエキスパート【右】同WiMAX推進室 担当部長
  • 【左】アッカ・ネットワークスWiMAX推進室のシニアエキスパート【右】同WiMAX推進室 担当部長
  • WiBroを実際に体験してもらうためにKTが用意したバス
  • WiBroを実際に体験してもらうためにKTが用意したバス
  • 会場風景
  • 会場風景
  • SAMSUNGのHSDPA端末
  • KTのWiMAX対応PCMCIAカード
  • WiMAXの技術的背景を語る小松氏
 WiMAX標準化へ向けて仕様の検討や機器の認証を行っている業界団体「WiMAX Forum」。このForumメンバーであるアッカネットワークスに、WiMAX Forumの概要や、韓国のWiMAX事情、さらに同社のWiMAX実証実験について話を伺った。

 10月のWiMAX Forumの国際会議は韓国のソウルで開催された。国をあげてモバイルブロードバンドに力を入れている韓国では、現在WiMAXの商用化に向け、韓国版のモバイルWiMAXサービス「WiBro」を強力に推進。実際にWiMAX Forumの会議でも、KTがWiBroサービス用CPE(Customer Premises Equipment)としてWiBroカードを参加者に配布し、Forum会期中に同サービスを利用できるようにしていたという。WiBroは2.3GHz帯を利用し、移動中でも音楽や動画などの大容量データをやり取りできる高速通信(最大3Mbps下り/1Mbps上り)をサポートしている。

 アッカ・ネットワークスの七條薫氏(WiMAX推進室 担当部長)も、KTのサービスを実際に体験したひとりだ。KTでは、WiBroサービスをユーザに体験してもらうために、会期中ソウル市内でバスを定期運行。車上でこのサービスを利用できるプロモーションを展開した。

 「定期バス上でのサービスについては、見学者の関心が高かった。バスの中ではひとりに1台ずつ端末が用意され、WiBroでビデオチャットなどのサービスを自由に体験できるようになっていた。ただ、商用サービスを開始したとはいえ、実際にはまだプロモーションやユーザ獲得などのありかたについて限定しているようで、本格的な展開は来年以降の模様だ」(七條氏)

 以前、「WIRELESS JAPAN 2006」のレポートでも紹介したとおり、KTはWiBroの具体的なサービスについて明確なビジョンをもっているようだ。コミュニケーション、マルチメディア、データを利用できるモバイルトリプルプレイをベースとしたWiBroサービスを視野に入れている。とはいえ、コンシューマレベルでのサービスとしてWiBroが幅広く浸透するには、もう少し時間がかかりそうな状況だ。

●セキュリティとQoSに関わる部分について、議論を交わすWiMAX ForumのNWG

 さて、WiMAX Forumについて話を戻そう。同Forumでは、具体的にどのような作業をしているのだろうか。現在、Forumの会員数も急増しており、2006年4月時点で各国のメーカーや通信事業者など368社が加盟。北米、ヨーロッパ、アジア地区などを中心にワールドワイドな展開を図っている。

 WiMAX Forumには、ネットワークワーキンググループ(NWG)、サービスプロバイダワーキンググループ(SPWG)など、いくつかのワーキンググループがある。WiMAXの技術背景をキャッチアップするためNWGで活動しているアッカネットワークスの小松直人氏(WiMAX推進室のシニアエキスパート)は、NWGの活動について次のように語る。

 「NWGでは、WiMAXシステム全体の問題についてカバーしている。ただし無線に関わる部分というより、それ以降の基地局からネットワークまでの問題を中心に、ネットワークの設計・実装・運用上の観点から幅広い議論が行われている。ドラフトのドキュメントチェックなど、地道な作業も多い」

 NWGでは、WiMAXのネットワークシステムに関するリリースを目標として設定し、段階的な議論を進めている。まず、SPWGでオペレータやベンダが要件をとりまとめる(ステージ1)。これをベースに、NWGがネットワークという大きな枠組みの中で概論的な問題を話し合ったり(ステージ2)、プロトコルのスペックなど詳細な実装方法について議論する(ステージ3)。これらの作業が同時並行して進められるかたちだ。

 現時点で、リリース1ではステージ3まで進んでおり、かなり詳細な仕様について議論がなされている。セキュリティとQoSに関わる部分については特に関心が高いようだ。たとえば、DHCPサーバで端末にIPアドレスを割り振る際に、プロキシ方式がよいのか、あるいはリレー方式がよいのか。その際にセキュリティの問題はどうなるのか? といった問題を、エンジニアリングの観点からフランクに議論しているそうだ。

 このように、WiMAX Forumでは標準化に向けた作業が着々と進められている。しかし、日本国内では、まだ2.5GHz帯の正式な免許交付までに、もう少し時間がかかりそうな状況だ。小松氏は、「標準化への作業を注視しながら1年先を見越し、自分たちのシステムをどうハンドリングしていけばよいのかということを考えている」と語る。ワールドワイドに行われている標準化の作業と、日本国内の状況のギャップを埋めるために、キャリアとして的確な予測が必要になるということだ。

●具体的なWiMAXサービスの実現に向け、都市部での実証実験を推進するアッカ

 国内では、まだ現時点でサービスの実現に見えない部分もあるWiMAXだが、アッカは早期サービスの実現に向けて、さまざまな実証実験を進めてきた。現時点で同社のWiMAXに対する検証は、どのような段階まで進んでいるのだろうか。

 アッカはYRP(横須賀リサーチパーク)において、すでにモバイルWiMAX(IEEE802.16e)の基本特性などの検証を終え、山林を含んだ郊外地域における基礎データを収集した。そして、この12月より、いよいよ横浜市中心部でも、さらに踏み込んだ実験を開始する予定だ。

 「横浜での実証実験は、サイト数を3か所に増やし、合計8つの基地局による複雑な構成になっている。都市部は郊外部とまったく環境が異なってくるため、電波がどのように到達するか? など、他の要素も含めて、より現実に近いプランの検証をしていく」(七條氏)

 WiMAXのインフラは、横須賀の実験同様、アルカテルの基地局を利用するという。受信側のCPEもアルカテルとパートナーシップを結んでいる端末ベンダの製品を30台ほど用意している。

 具体的な実験としては、前述のように、まず都市部と郊外部での電波の飛び方の違いを押さえることがひとつ。都市部ではビルが林立しているので、電波を到達させるためには、反射を利用して電波を飛ばすイメージになるという。電波の方向をシミュレーションしながら、実際にどのように電波が届くのか検証し、デザインに反映できるノウハウを蓄積したい意向だ。

 また、WiMAXではマルチアンテナもサポートしている。これは、電波到達範囲や信頼性を高めるために用意されているオプションだ。アッカでは、AAS(Adaptive Antenna Systems)によるビームフォーミングの実験も行う予定だ。ビームフォーミングはスループットに効いてくるため、特に重要な実験となる。

 このほかにも、さらに新しい実験がいくつか盛り込まれる予定だ。まず品質面での実験がある。無線区間とIPコアネットワークで統合されたQoSを実装し、ネットワークリソースを効率的に活用できるようなサービスの開発を目指すという。

 「QoSについては、品質を区分けしていくための手法と考えている。サービスごとの品質確保だけでなくて、もう少し大きな枠組みでとらえている。品質の定義にもよるが、ユーザによっては音声が途切れない、必要なときに必要な帯域を確保できる、帯域は細くても常に利用したい、バースト的に帯域を一気に利用したいなど、考え方も異なるだろう。したがって、それぞれのユーザが要求する品質をいかに満たせるか? という観点からも検証をしたい」(小松氏)

  アッカはWiMAXネットワークの「QoS」をリアルタイムで制御する手段として、「IMS」(IP Multimedia Subsystem)を採用する。IMSは、個別に設備をもっていた従来の電話網、携帯電話網、インターネット網をIPで水平統合する「NGN」(Next Generation Network)のキーコンポーネントとなるもの。主にサービス層の制御についての共通化を担う役割だ。

 「IMSは、一次的な投資という観点が注目されがちだが、動かし続けなければならないオペレータのネットワークでは、運用という視点が重要。単に使い慣れた技術を維持するのではなく、こうあるべきだ、という一貫した設計ポリシーを持ち続けることで、運用をシンプルに考えることができる。こういう根本的なところが、運用を行っている現場ではボディブローのように効いてくる」(小松氏)

 アッカは、IMSを導入することによってネットワーク層やサービス層の制御の設計ポリシーを統一化し、現場サイドでの効率的な運用を考慮したネットワークシステムを目指す方針だ。
《RBB TODAY》
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