海外のWiMAX事情と国内の課題は?——アッカ・ネットワークスWiMAX推進室 高津氏に聞く | RBB TODAY
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海外のWiMAX事情と国内の課題は?——アッカ・ネットワークスWiMAX推進室 高津氏に聞く

ブロードバンド その他
米ボストンで開催された「WiMAX World USA Conference & Expo」
  • 米ボストンで開催された「WiMAX World USA Conference & Expo」
  • アッカ・ネットワークス WiMAX推進室 副室長 高津智仁氏
  • 12月から横浜市中心部で実験を開始する
  • 「WiMAXはオープンな環境であり、機器コストも含めて、既存の携帯電話などと比べると低額で提供できるため、誰にでも使って欲しい」
●大きな盛り上がりを感じたWiMAX World USA

 無線ブロードバンドサービスの本命とされているWiMAXは、現在国内のキャリアを中心に実験準備が進められている。では、海外の事情は一体どうなっているのだろうか。海外と国内の状況を比較しながら、国内において実証実験を進めるアッカ・ネットワークスの次の一手を聞いた。

 先ごろ米ボストンで開催された「WiMAX World USA Conference & Expo」では、140社ほどの出展社が集まり、さまざまなWiMAX関連製品が展示された。同イベントの詳細はRBB TODAYのWiMAX特集でもレポート済だが、実際に現地を訪問したアッカ・ネットワークスの高津智仁氏(WiMAX推進室 副室長)は、このイベントを振り返り、「米国は新しいものに対するフロンティア精神があり、電話の交換機からIP電話に移行するような大きな盛り上がりを感じた」と語る。ただし、インフラ系のハードベンダを中心に進んでいるようで、まだ明確な提供サービスイメージやビジネスモデルについては、これからという印象を受けた。そのような中で、「キャリア側の立場として、WiMAXのビジネスモデルに直結するようなものを、先手を打って進めていく必要がある」(高津氏)と強調する。
 たとえば、高津氏がビジネス上の観点から、WiMAX Worldで特に印象に残った出展は、WiMAXのトリプルプレイサービスを展開するwiNetworks社のブースだったそうだ。同社は、トリプルプレイサービスに加え、WiMAXモバイルTVやインタラクティグTV、VODといったサービスの展開も視野に入れている。今後のインターネットTVがリアルタイム放送として進化していくのか、あるいはVODのようなサーバ蓄積型として進化していくのか、とても興味深く感じた」(高津氏)という。

 また、WiMAXのサービスにおいて、このようなコンテンツを提供する場合に権利などの整理が不可欠であり、著作権を配慮したソリューション展開も具体的に考える段階に入りつつあることを実感したそうだ。このような環境を提供する場合、それを誰が基盤として提供すればよいのかがポイントになる。今後、国内でも、我々のようなキャリアが管理すべきなのか検討していく必要がある」(高津氏)と指摘した。
 日本と同様に2.5GHz帯でモバイルWiMAXを展開する有力事業者の出展も目に留まった。WiMAXを使った4Gサービスの計画を発表したSprint Nextel社や、半固定の無線インターネットサービスを提供するClearwire社などがそれだ。
 特にClearwire社は、欧米でWiMAXに特化したサービスを展開する事業者として注目を浴びており、海外3都市を含む31の地域で、16万2000人の加入者を集めている(2006年9月現在)。ただし現時点では、米国の都市部ではWi-Fiをメッシュで張り巡らしたり、ニューヨークでは公共のセキュリティに対してTD-CDMA方式を使うことを明言しているため、WiMAXが一概に優位であるということでもないらしい。
 高津氏は、「もし、現在Clearwireが提供しているようなモデルを日本で展開するならば、ある程度平野が広がっているルーラル(郊外)から先のエリアに対しての利用が中心になるだろう」と予測する。とはいえ、国内では日本特有の事情もある。Wi-Fiは出力が制限されており、部分的な展開となっているため、そのような環境では、「WiMAXが都市部に入り込む余地は十分ある」と見ている。

●都市部から始まり、郊外やデジタルデバイドエリアにまでWiMAXのサービスを広げる

 アッカ・ネットワークスはYRP(横須賀リサーチパーク)のルーラルエリアにおいて、すでにモバイルWiMAXの基本特性などの検証を終え、つい先ごろ都市部での実証のために、横浜市中心部での実験を12月より開始することをアナウンスした。同社が郊外と都市部の両方での実証実験を行う理由は、無線の新規参入として基礎データを蓄積することもあるが、キャリアとしての社会的な使命感もあるからだという。大都市中心のサービスから、さらに踏み込んだ形までを視野に入れているのだ。

 「もちろん、サービスの立ち上がりでは、まず新しいことに敏感なユーザーを対象として、都市部での展開が中心となりますが、郊外やデジタルデバイドエリアなどにもサービスも検討していきたいと考えています。WiMAXはオープンな環境であり、機器コストも含めて既存の携帯電話などと比べると低額で提供できるため、誰にでも使って欲しい」(高津氏)
 たとえば、セキュリティや防災など自治体で展開しているセーフティネットをうまく組み見込めるようなインフラとして、WiMAXが連携できれば、より便利になるかもしれない。
「アッカとしてはWiMAXの特性を活かしたサービスを提供していけるように、様々な可能性や方向性を排除せずに前向きに検討しています」(高津氏)

 アッカの強みは、中継局から基地局までの有線ネットワークのオペレーション能力と、キャリアとしての品質についての高さである。この点については、法人サービスを中心に展開してきたため、他社キャリアよりも抜きんでた対法人への対応力と技術力がある。一方、無線においては新興ということもあり、いちから実地での検証を積み上げてきた。「最新の無線技術のひとつであるWiMAXを用いて無線の経験を積んでいるため、効率的に無線技術力の蓄積を行っている」(高津氏)と自信をのぞかせる。
 次のフェーズとしては、具体的にどのようなサービスを展開していけるか、という点に絞られていくだろう。WiMAXはインフラだけでなく、アプリケーションまで視野に入れて考えないと商品化は難しいからだ。アッカは従来から、DSL、光、無線などアクセス環境やネットワークを用意し、音声や映像などのサービスをのせてパートナーに提供できるACCA Solution Platformを提供してきた実績もある。このプラットフォームにWiMAXを加えることで、上位レイヤまで見据えたソリューションを提供できる点は大きいと言える。
 アプリケーションサービスを組み込んだ形で、WiMAXの真価を発揮する事業モデルをいかに育てていけるか——そこに国内でのWiMAX成否の鍵が掛かっているかもしれない。
《井上猛雄》
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