【SaaS World 2009 Vol.1】Amazonのプライベートクラウド—VPCとRDS
Amazonには、大きく3つの事業ドメインがあり、ひとつはもっとも有名な物販サイトのサービスである。書籍販売から始まったAmazonは、現在電気製品や日用品などコンシューマ向けの総合物販サイトとしてグローバルに展開している。2つ目はSeller Businessと呼んでいるAmazonのECプラットフォームのいわばOEMビジネスだ。企業やリテール業者に対して、自社の製品や商品のオンライン販売のために、Amazonのネットワークや倉庫、ECプラットフォームを提供している。3つ目が、Amazon EC2に代表されるクラウド型のITリソースの提供ビジネスだ。対象は主に開発者やITプロフェッショナルであり、彼らにCPUリソースやストレージなどを時間単位でサービスのみを提供している。
Amazon Web Service(AWS)は、この3番目のビジネスを展開している。AWSの主なサービスには、Amazon EC2(CPUリソース)、Amazon S3(ストレージ)の2つが有名だ。AWSでは、現在北米の東海岸(バージニア州北部)、西海岸(カリフォルニア州北部)、そしてEUのアイルランドにデータセンターの拠点を展開している。先日、2010年上期にシンガポールにも拠点を増やす発表をしたばかりで、同下期にはさらなるアジア太平洋地域での追加拠点の発表も予定しているとした。どの国になるかは現在複数の場所を評価中であるとだけ述べた。
そして今回の講演では、Amazonがエンタープライズ向けのクラウドサービスにも注力していることを強調していた。EC2やS3も企業の開発者や情報システム担当者の利用は進んでいるが、これを推し進めるためセキュリティ機能や信頼性を強化するサービスを8月以降続けてリリースしている。
それが、Amazon VPCとAmazon RDSだ。
Amazon VPC(Virtual Private Cloud)は、EC2やS3のクラウド上のリソースを、専用のVPNによって企業内のネットワークとセキュアに接続させるサービスだ。もちろん、クラウドのリソースは、理論的に分離されプライベートクラウドとして利用できる環境が用意される。企業としては、サーバーリソースをクラウド上に確保し、そこに既存の業務システムやグループウェアなどを、オンプレミス環境と同じポリシーや制御の元で稼働させることができる。
そのため、既存の慣れたIT環境、セキュリティ、信頼性などを維持したまま、クラウドによるコストダウン、スケーラビリティも確保できるという。
Amazon RDS(Relational Database Service)は、MySQLのデータベースエンティティを提供するもので、インスタンス名、ストレージサイズ、クラス、ユーザーアカウント、ネットワークの設定などパラメータを設定するだけですぐにRDBMSが使えるようになる。時間にして5〜10分で済む作業だという。ストレージをクラウドとして利用するだけでなく、DBMSも利用したいというユーザーのニーズに応えるためのものだ。セットアップが簡単なだけでなく、自動バックアップやリカバリ、ソフトウェアのアップデートなどのメンテナンスもクラウド側が処理してくれるので、ユーザーはMySQLの機能だけを使うことができる。
RDSもVPCと同様な導入メリットは発揮するが、特に数分でDBが使えるようになるという迅速な展開、APIコールによるスケールアップ、スケールダウンの手軽さ、サーバーやソフトウェアのメンテナンスからの解放、そしてEC2と同等なレスポンスなどは、オンプレミスDBMSにはない特徴となる。
RDSとVPCの料金体系は、EC2などと同じ時間単位の従量課金だ。追加のストレージやデータ転送、IO処理なども従量の対象となるが、たとえば、RDSのデータベース1インスタンス(5GBから1TBまで)で、10セント/月が基本となる。
最後に、AWSのクラウドサービスの日本での事例として「ウェブポ」という年賀状サービスのサイトを紹介した。ウェブポはユーザーがサイト上で作成したデザインや文面で、年賀状を作成して指定した人に送付(年賀状は年賀はがきとして作成され郵便として届く)するというサービスだ。このサービスプロバイダはAWSのクラウドサービスによってウェブポを実現している。年賀状のような季節性の高いサービスは、そのときだけ必要なリソースをクラウドで利用するほうが効率がよい。
講演後、Barr氏に、時間単位の課金は長期間の利用では、システムを買い取る場合より割高にならないかと質問したところ、それは使い方にもよるので簡単には比較できないとした。自社で保有することで発生する管理コスト(これはランニングで発生する)の考慮の仕方、クラウドではスケールダウンも簡単なので使わないときはかなりコストダウンも可能であり、場合によっては解約しても再契約も数分で済むので、使い方を工夫すればよいとの考えだ。そのため、AWSでは、これらのクラウドサービスを短期目的のものとは考えていないそうだ。
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