【FOE 2009 Vol.6】契約数とARPUを増加させるJ:COMの「ボリューム+バリュー」戦略
J:COMは、全国で41のCATV局を統括する運営会社。これらのCATV局では、さまざまなサービスを“J:COM”ブランドで展開。コンテンツや通信、放送機器、回線の共同調達を行うことでスケールメリットを出している。
2009年10月末現在、ホームパス(エリア内の世帯数)は約1,088万世帯で、そのうち291万世帯がJ:COMと契約している。多チャンネルケーブルテレビ「J:COM TV」は234.7万世帯が契約、インターネット接続サービスの「J:COM NET」は134.9万世帯、電話サービスの「J:COM PHONE」は151.1万世帯となっている(2008年9月末現在)。さらに、ウィルコムのPHSを提供する「J:COM MOBILE」を合わせて、「グランドスラム」と呼び展開する。
特徴的なのは、これら4つのサービスを1社がまとめて提供していること。阿賀谷氏は「ワンストップで提供しているので、テレビでもネットでも、コールセンターや請求書は1つにまとまっている」とアピールした。
ネット、電話、テレビといった「トリプルプレイ」について各通信事業者は推進しているが、J:COMも同じだ。この状況について「通信会社との競争は悲観ていない」という。「日本では、有料多チャンネルはまだニッチ。通信会社が宣伝をすると、潜在的な顧客の掘り起こしができ、有料多チャンネルの市場が活性化する」と話す。具体的には、2007年から2008年の各国の調査において、アメリカの多チャンネルサービスの契約世帯率は87%、イギリスは46%に対して日本はわずか20%に過ぎない。そのため、潜在的なニーズが多くあると目論んでいるようだ。
J:COMが提供する多チャンネルテレビサービスの主力は、「J:COM TV デジタル」。地上デジタル、BSデジタルのほかCSの多チャンネル放送、VDOサービスの「J:COM オンデマンド」、HD録画ができるSTB「HDR」が利用できる。J:COMオンデマンドに対応したSTBは、今のところ130万世帯に行き渡っている。HDRは2006年にレンタルを開始し、2008年9月末には35万台の契約となった。さらにHDを500Gバイトに強化しDVDへのダビング機能を付与した「HDRプラス」のレンタルも開始した。こちらも出だしが好調ということだ。
J:COM TV デジタルでは、番組のハイビジョン化も進めている。地上デジタル放送とBSデジタルはすべてハイビジョン化しているが、多チャンネル放送は7チャンネルにとどまっている。光ケーブルの周波数帯域が足りないためで「やみくもにハイビジョン化はできない」という状況。そのため、映画、スポーツ、ドキュメンタリーなどニーズが高いチャンネルを優先的に進めている。
ハイビジョンチャンネルなどサービスの向上のために必要なのが、光ファイバーケーブルの周波数帯域。J:COMのラストワンマイルで使用している光ファイバーケーブルには、インターネット、電話、VOD、アナログとデジタルのテレビ放送などの信号が通っている。このうち、アナログ放送のサービスを早期に終了させることで、周波数帯域を開け、サービスの向上につなげる計画だ。2008年10月末現在では、デジタル対応のJ:COM TVは199.7万世帯の加入があり、デジタル化率は76%に達している。「2010年の上半期にテレビサービスのデジタル化率を100%にして、アナログのサービスを終了させたい」としている。これにより、光ケーブルの周波数帯域が空き、ハイビジョンチャンネルが増やせるほか、VODの高度化、IPTV、インターネットの高速化、プライマリーIP電話などのサービスなどが展開できるようになる。
インターネット接続サービスの「J:COM NET」は、現在、下り最大256kbpsから160Mbpsまで4つのメニューを用意している。J:COM NETにて、100Mbps超のサービスを開始したのは、2005年8月の集合住宅向けメニューから。集合住宅まで光ファイバを引き込み、各世帯までは同軸ケーブルを用いたc.LINKでつなぐ方法だ。
2007年4月からは、関西にて戸建て住宅にも対応した最大160Mbpsのサービス「J:COM NET ウルトラ160メガコース」を開始した。ここでは、当時はまだ標準化に至っていなかった「DOCSIS 3.0」を採用し、1本40Mbpsのチャンネルを4本束ねることで160Mbpsを実現した。当時、DOCSIC 3.0対応の設備は値段が高く大型などの欠点があった。しかし、「関西エリアは競争環境が厳しく、機会損失を避けたかった」との考えから踏み切ったと振り返っている。
2008年12月末現在、160Mbpsコースの加入は10万世帯。対応地域においては、新規契約者のうち約30%が160Mbpsコースを選ぶ。さらに、「FTTHからの乗換も増えている」という。
「アクセスラインを自前で持っているのは強み」として紹介したのは、集合住宅の例だ。J:COMのラストワンマイルは、HCFとは限らず、集合住宅まで光で引き込み、各世帯まではLANケーブルはもとより、分配カプラを経由して光ケーブルで接続するケースもある。
東京の勝ちどきでは新しい取り組みがある。大型の集合住宅「THE TOKYO TOWERS」にてサービスを提供した。本来、勝ちどきはJ:COMのサービスエリアではない。しかし、電気通信役務利用放送事業者に登録するとこで、サービスが提供できた。THE TOKYO TOWERSでは、全戸にインターネット接続サービスを提供。「インターネットを標準提供すると、テレビや電話も加入する」との効果もあり、「今後も案件によってはエリア外にも提供」としている。
また、「M&Aは重要な意味を持っている」として、2005年のジャスダックへの上場以降、J:COMはこれまでに関東と関西で多くのCATV局を買収している。具体的には、関東ではさくらケーブルテレビ、小田急ケーブルビジョン、台東ケーブルテレビ、メディアッティ、関西ではケーブルテレビ神戸、ケーブルウエスト、京都ケーブルコミュニケーションズなどがある。これにより、関西地域では2府2県で約70%、関東では50%のシェアを獲得した。
このような取り組みは、J:COMの「ボリューム+バリュー」戦略に基づくもの。ボリュームはサービス地域の拡大、バリューはARPUを上げることを差す。サービス地域の拡大はCATV局の買収により実現。ARPUの拡大は、J:COM NETの160Mbpsサービスをはじめ、テレビサービスの「J:COM TV デジタル」、VODの「J:COMオンデマンド」、HDD内蔵のSTB「HDR」などがある。
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