「よなよなエール」などのクラフトビールを製造・販売する株式会社ヤッホーブルーイング(長野県軽井沢町)は、“飲酒しているときの防災”に焦点を当てた飲酒者向け防災啓発プロジェクト「お酒好きのための防災プロジェクト」を始動します。第一弾では、居酒屋やバーなどのお酒を提供する飲食店(以下、酒場)における安全確保の声かけ(身を守る行動の呼びかけ・避難誘導、指示など)をテーマに取り組んでいきます。「酒場における適切な安全確保の声かけの方法が分からない」という問題に対して、酒場における適切な安全確保の声かけをまとめた「酒場のための地震防災ガイドライン」を、備え・防災アドバイザー/BCP策定アドバイザー高荷智也氏監修のもと策定しました。従事する酒場の情報をWEB上で選択することでオリジナルのガイドラインを作成することができます。また、「酒場のような騒音環境下で声が届きづらい」という問題に対して、酒場でも届きやすい3,500ヘルツ~5,000ヘルツの周波数成分を有する高い声に変換される酒場のための防災用電子メガホン「キコエール」のコンセプトモデル*1を、有限会社日本音響研究所・株式会社ノボル電機・株式会社quantumと共同で開発しました。12月4日(木)、12月9日(火)には、『「盛り上がる忘年会シーズンに、もしも地震がきたら?」飲食店スタッフ向け防災セミナー』を、公式ビアレストラン「YONA YONA BEER WORKS」新宿東口店で開催します。
*1 技術や未来の可能性を探る位置づけのため、実用性や耐久性、耐火性などは考慮していません

事前調査1.│飲食店でお酒を飲んでいる時の防災に関する意識調査
調査概要│調査期間:2025年11月11日(火) / 調査方法:インターネット調査 / 調査対象:日常的に飲食店でお酒を飲む全国の20代~60代男女300名その1.│65.3%の人が、飲食店でお酒を飲んでいる最中に災害が起こることを想像したことがないその2.│約半数の人が、普段の酔っている状態で安全確保や避難行動に対応できないと考えている


日常的に飲食店でお酒を飲む全国の20代~60代男女300名に、飲食店でお酒を飲んでいる最中に災害が起こることを想像したことがあるかと聞いたところ、65.3%の人がない(ない・あまりない)と回答しました。多くの方が災害が起きることを想定せずに飲食店を利用していることが分かりました。
また、飲食店で普段酔っている状態の時に災害が起きたとすると、安全を確保する行動や必要に応じて避難する行動をできると思うか聞いたところ、約半数の人が対応できない(全くできない・あまりできない)と回答しました。不慣れな場所である飲食店において、利用客の半数が適切な防災行動ができない可能性が高いことが示唆されました。
その3.│酩酊期に店員などによる声かけに気づかないと思っている人が爽快期の5倍以上いる

4段階の酔っている状態を想定した時、店員や館内放送などによる安全確保の声かけの音に気づけると思うか聞くと、酩酊期に気づかないと思う人(気づかないと思う・気づかない可能性があると思う)が爽快期の5倍以上いることが分かりました。利用客は酔いが進むにつれて酒場側からの声かけに気づかなくなる可能性が高いことが考えられます。
事前調査2.│お酒を提供している飲食店の災害対策および飲酒時の被災意識に関する調査
調査概要│調査期間:2025年11月11日(火)~13日(木) / 調査方法:インターネット調査 / 調査対象:お酒をメニューとして提供している飲食店のオーナーまたは店長200名その1.│72.5%の飲食店が防災マニュアルを用意していないその2.│酔っているお客様に対する声かけについて、41%は想定できておらず、38.5%は想定していても対応方法が決まっていない


お酒をメニューとして提供している飲食店のオーナーまたは店長200名に、防災マニュアルを用意しているか聞いたところ、72.5%が用意していない(用意していない・以前はあった)と回答しました。多くの飲食店において災害発生時の対応方法のマニュアル化が進んでいないことが分かりました。
また、酔っているお客様に対する災害発生時の安全確保の声かけの対応を想定できているか聞いたところ、41.0%が想定できていない、38.5%が想定していても対応方法が決まっていない、と回答しました。声かけ相手が酔っているという特殊な状態を想定した対応が進んでいないことが伺えます。
その3.│酔っているお客様に対する安全確保の声かけで難しいと感じる点1位「指示に従わない・動かない」「適切な声かけ・避難誘導がわからない」

酔っているお客様に対する安全確保の声かけについて難しいと感じる点を聞くと、1位に「指示に従わない・動かない」「指示が理解されない・伝わらない」、3位に「適切な声かけ・避難誘導がわからない」という結果になりました。飲酒者に理解され、行動につながる具体的な声かけの方法が求められていると考えられます。
プロジェクト第一弾のテーマ:「酒場における安全確保の声かけ」
不慣れな環境であることや飲酒による判断力・運動能力の低下を考慮した防災行動が重要日本は世界有数の地震大国であり、首都直下地震は2025年1月15日時点で30年以内に70%程度の確率で発生、南海トラフ地震は2025年9月26日時点で30年以内に60~90%程度以上の確率で発生する*2と言われており、国民一人ひとりの防災意識の向上が常に求められます。これまでの防災対策は自宅や職場での備えに重点が置かれてきましたが、自宅や職場と比較して偶発的な居場所である酒場での防災対策は限定的でした。酒場は、利用客にとって自宅や職場とは異なり不慣れな場所である可能性が高いことに加えて、飲酒によるアルコールの作用によって、判断力・理解力・運動能力が低下していることが想定されます。したがって、利用客が自主的に的確な避難行動をとれるとは限りません。酒場従事者には、自身の命を守ることを大前提に、利用客が特殊な状況に置かれていることを踏まえた適切な安全確保の声かけをすることが求められます。そこで、本プロジェクトにおける第一弾のテーマを「酒場における安全確保の声かけ」としました。
SNSでのソーシャルリスニングや有識者へのヒアリング、意識調査の結果も踏まえて、「酒場における安全確保の声かけ」を啓発していくうえで、2つの問題が挙げられます。1つ目の問題は「酒場における適切な安全確保の声かけの方法が分からないこと」、2つ目の問題は「酒場のような騒音環境下で声が届きづらいこと」です。2つの問題に対して本プロジェクトでは、それぞれ対応策を考えました。
*2地震調査研究推進本部地震調査委員会による発表
<問題1.│「酒場における適切な安全確保の声かけの方法が分からない」>
「酒場のための地震防災ガイドライン」を防災の専門家監修のもと策定
作成ページをWEBでも公開 2,432通りの中から自店舗にあわせたガイドラインを作成可能

適切な安全確保の声かけをするためには、自身が従事する酒場の建物・地理的情報を事前に認識しておくことや、地震発生時後に迅速かつ正確な情報収集をすることが必要です。しかし、その具体的な方針は今まで示されていませんでした。そこで、酒場で地震が発生した際に注意すべきポイントや適切な安全確保の声かけの仕方が分かる「酒場のための地震防災ガイドライン」を、備え・防災アドバイザー/BCP策定アドバイザー高荷智也氏監修のもと策定しました。
自身が従事する酒場の耐震性・地理的情報・店舗環境・店舗設備・顧客特性をWEB上で選択していくことでオリジナルの地震防災ガイドラインを生成することができます。生成したガイドラインには、地震の状況や段階に応じて注意すべきポイントと飲酒者を想定した安全確保の声かけの例が表示されます。画像で保存いただくことでいつでもご覧いただくことができます。100%安全を保証するものではありませんが、自店舗に合わせて、地震が起きたらどこに危険があるか、どんな対策・対応ができるかを考えるきっかけとして活用いただきたいです。なお、全部で2,432通りのガイドラインを作成可能です。
公式サイト:https://yonayonaale.com/bousai/
お酒飲用者に対する安全確保の声かけで重要な7つのポイント
酒場のおける飲酒者に対する安全確保の声かけにおいて気をつけるべきポイントを7つにまとめました。北海道文教大学當瀬規嗣教授、備え・防災/BCP策定アドバイザー 高荷智也氏にヒアリングするとともに、実際に飲酒している被験者への声かけに対する反応を観察する自社調査を通じて整理しました。

・何をすれば良いのか、短く明確に話す
・1つの文章に動作は1つまでにする
・目で見えたままのものを具体的に指示する
・動こうとしない人には、断定的な命令口調で指示する
・どのような危険があるのかを明確に示す
・話すスピードは意識的にゆっくり話す
・繰り返し指示する
ガイドラインの具体的な作成イメージ

<STEP.01 事前チェックポイントを確認!>
店舗が該当する条件の有無をご確認いただきます。
・旧耐震の建物かどうか
・津波浸水想定区域かどうか
・土砂災害警戒区域・特別警戒区域かどうか
※複数該当する場合は、それぞれ作成いただき内容をご確認ください

<STEP.02 店舗別の特徴を選択!>
店舗形態や顧客特性で該当する項目の有無をご確認いただきます。
店舗環境
・広いフロア、宴会場タイプ
・個室など仕切りが多い
・ワンフロアではなく、奥まっている場所がある
・避難経路にエレベーターがある
・避難経路に階段がある
・テラス/屋外席がある
店舗設備
・カウンターや小さな机がある
・大きな窓がある
・落下しそうな照明がある
・ディスプレイ(酒瓶、吊り下げグラス、大型の植物など)がある
顧客特性
・お客さまに外国人の方がいる

<STEP3>店舗に合わせたガイドラインが完成!
選択いただいた情報をもとに、店舗オリジナルのガイドラインが生成されます。自店舗に合わせて、地震が起きたらどこに危険があるか、どんな対策・対応ができるかを考えることが何よりも重要です。
※本ガイドラインを使用すれば、100%安全確保ができるというわけではありません
<問題2.│酒場のような騒音環境下で声が届きづらい>
騒がしい酒場でも届きやすい高い声に変換!平時はランタンとして使えるデザイン
酒場のための防災用電子メガホン「キコエール」コンセプトモデル開発


酒場のような騒音環境下で安全確保の声かけを届けるためには、なるべく大きく、高い声を出すことが有効です(※メカニズムについては後述)。しかし、地声で出せる声の大きさ・高さには限界があります。そこで、大きい音に出力できるだけでなく、発声した声が酒場でも届きやすい3,500ヘルツ~5,000ヘルツの周波数成分を有する高い声に変換される、酒場のための防災用電子メガホン「キコエール」のコンセプトモデル*2を日本音響研究所・ノボル電機・quantumと共同で開発しました。


店の奥にしまわれがちな防災グッズを、いざという時にも使っていただけるよう、平時は店内にも馴染むランタンのような照明として利用できる設計にしています。現在「キコエール」の販売は予定しておりませんが、飲食店の方に実際に体験いただく機会として飲食店向けのセミナー兼体験会の実施や1月中旬頃から酒場向けに貸し出しも予定しています。貸し出しの応募受付は、12月4日(木)に公式サイトにて開始します。
【飲食店様向け「メガホン」お貸出し受付フォーム:https://jp.surveymonkey.com/r/NX83BSJ】
https://www.youtube.com/watch?v=9EfUPaDIFbU
「キコエール」等倍と1.3倍を比較した動画
<音声変換機能に関する実証結果1.>騒がしい音環境下で声を届けるには3,500ヘルツ~5,000ヘルツの周波数成分が重要なるべく大きく、高い声を出すことで利用客に声が届きやすくなる

日本音響研究所がBGMや会話で騒がしい店舗*3で音を分析をしたところ、600ヘルツ・3,500ヘルツ・10,500ヘルツを中心とする周波数帯に音のエネルギーが集中し、山(極大)を持つことが分かりました。災害発生後の店内においても不特定多数の利用客の声が行き交い、同様の音環境になることが想定されます。このような環境下において、利用客に安全確保の声かけを届けるためには、大きい音を出すことを前提に3,500ヘルツ~5,000ヘルツの周波数成分が強い声を出すことが有効であることが示唆されました。男性・女性に関わらずなるべく高い声を発声することで、3,500ヘルツ~5,000ヘルツの周波数成分を有する声の成分(倍音)が強くなります。また、高い声を発声する(声帯の振動数を高める)ことで、肺からの空気量が多くなり音圧が上昇するので、大きな声を出すこともできます。
*3 「YONA YONA BEER WORKS」新宿東口店・恵比寿東口店・新虎通り店
<音声変換機能に関する実証結果2.>3,500ヘルツ~5,000ヘルツの周波数成分を有する声に変換するメガホン


地声で出せる声の大きさ、高さには限界があるため、声の倍率を変換する技術をノボル電機に提供いただき、大きい音を出力するだけでなく、3,500ヘルツ~5,000ヘルツの周波数成分を有する声に変換できるメガホンの開発を進めました。日本音響研究所と共同で実施した実験*4の結果、酒場のような環境下において、男性は1.30倍、女性は1.25倍の倍率の声が聴こえやすいことが示唆されたことから、コンセプトモデルには1.30倍、1.25倍、1.10倍、等倍の設定を用意しています。将来的には、発声した声に応じて自動で適切な声に変換される装置の開発が望まれます。
*4 酒場の騒音環境下において発声者役の男女一名ずつが、8段階の倍率(等倍~1.75倍)ごとに発声した単語を飲酒した被験者18人が聞き取るテストおよび、集音したそれぞれの音の分析。実験において発声した男性・女性は、発音した音の響きがブレずにしっかり出すことができるスタッフで実施しています。プロジェクトメンバーの中から、発音のブレなさの指標となる母音のフォルマント周波数(声道の共鳴によって強調される周波数)が最も平均値に近いスタッフを選びました。
株式会社ノボル電機
ノボル電機は創業以来80年「安心される専門メーカー」という理念を掲げ、「安全」を届け「安心」を作る音の専門メーカー。スピーカー・アンプ・マイク・メガホン等の拡声用音響装置を主に製造・販売し、防災行政無線用や緊急車両向けの拡声器など防災関連にも強い。メガホンでは消防や警察に採用されている防水軽量・耐衝撃型のプロ仕様から、蓄光型などのユニークなタイプも開発している。近年では、本プロジェクトのような新規特注案件にも注力し、開発や受託生産など幅広く事業を展開している。
株式会社quantum
quantumは、クリエイティビティを軸にしたインキュベーション力で、新規事業開発、ベンチャークリエーション、ハンズオン投資によるグロース支援を行うスタートアップスタジオです。2016年の創業以来、100社を超える企業、大学などとインキュベーションを実践しています。これからもventure buildersとして、1. 新規事業のインキュベーション、2. ベンチャークリエーションとグロース支援、3.デザイン&エンジニアリングの3つの事業セグメントを重ね合わせて「世界を変えるインパクトのある新規事業の創造」に挑戦していきます。
quantumについて ( https://www.quantum.ne.jp )
忘年会シーズンに酒場スタッフ向け防災セミナー兼体験会を開催
『「盛り上がる忘年会シーズンに、もしも地震がきたら?」飲食店スタッフ向け防災セミナー』を、公式ビアレストラン「YONA YONA BEER WORKS」新宿東口店にて12月4日(木)、12月9日(火)11:00~12:00に開催します。飲食店経営者・スタッフの皆さまに向けて、「お酒好きの方への防災」を楽しくまじめに学べるセミナーです。意外と考える機会が少ない、酒場での防災。地震が来た時、お酒を飲んでいるお客様はどんな点が危険なのか?どのように声かけをすればいいのか?を学べます。酒場のための防災用電子メガホン「キコエール」の体験会や「酒場のための地震防災ガイドライン」でオリジナルのガイドラインを作成するワークショップを実施する予定です。セミナー応募フォーム:https://jp.surveymonkey.com/r/S8SVKJF
・応募締め切り:12月8日(月)昼12:00
・各回:20名(先着順)
・参加料金:無料(ビール3杯+軽食)
本プロジェクトにご協力いただいた専門家の皆様とコメント

北海道文教大学 當瀬 規嗣 教授(生理学)「アルコールは判断力・理解力・運動機能を抑制 酔客への的確な安全確保の声かけが重要」

備え・防災アドバイザー/BCP策定アドバイザー 高荷 智也 氏「飲酒時の災害対策は事前防災が極めて重要 飲酒者を想定した酒場側の防災計画の準備を」

有限会社日本音響研究所 所長 鈴木 創 氏「落ち着いて、いつもより少し高めの声で、はっきりと短い言葉で伝えることが重要」
専門家の皆様のコメント詳細資料(PDF)
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飲み会イベントを実施してきた立場から「安全確保のための声かけ」に着目
ヤッホーブルーイングは、「ビールに味を!人生に幸せを!」をミッションに掲げ、ビールファンにささやかな幸せをお届けしたいという想いで日々活動をしています。「お酒好きのための防災プロジェクト」は、ある日、一人のスタッフが「クラフトビールを楽しんでいる時に災害が起きたら、飲酒をしているからこそ気をつけるべきポイントがあるのではないか」と気づき立ち上げたプロジェクトです。

ヤッホーブルーイングでは、2010年から公式ビアレストラン「YONA YONA BEER WORKS」をはじめとする多くの酒場で飲み会イベントを実施してきました。クラフトビールを通じた楽しい場を企画・提供する中で、賑やかな店内ではスタッフの声が届きにくく、飲酒している利用客に話している内容が伝わりづらい場面に何度も直面してきました。これらの経験から有事の際にも「声かけ」の工夫が必要なのではないかという気づきに繋がりました。


ヤッホーブルーイングでは事業所ごとに年1回実施する避難訓練は、原則参加を必須とし、日頃からスタッフ一人ひとりの防災意識を高める活動をしています。本プロジェクトを皮切りに、自社の事業所やイベントに限らず、酒場での防災意識の向上に取り組んで参ります。
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