
2026年9月23日(水)から2027年1月18日(月)まで、フランスのルーブル美術館によりランス別館(Louvre-Lens)で開催される特別展「Trop mignon! L’art du bonheur (So Cute! The Art of Happiness)」において、アザラシ型ロボット 「PARO(パロ)」 が展示されます。
本展は、「なぜ人は“かわいい”ものに惹かれ、幸福を感じるのか」をテーマに、古代から現代まで約300点の作品を通じて、人間の感情と芸術の関係を探求する大規模な国際展覧会です。日本のKawaii文化も重要なテーマとして取り上げられ、PAROは「かわいい」を医療機器(海外)にまで発展させ、災害・戦災の被災者の心のケアにも役立つ、象徴的な展示として紹介されます。
PAROは、世界約50か国の医療・福祉現場で活用されるセラピー用ロボットであると同時に、アート、デザイン、身体性人工知能(フィジカルAI)、人道支援を結び付ける存在として国際的に評価され、王侯貴族や富裕層にもペットとして愛玩されています。
これを機会に、「平時」には、PAROが学校や各種の職場で、子供達の情操教育やSTEAM(科学、技術、工学、芸術、数学)教育と、教員・職員のウェルビーイングに活用しつつ、災害等の「有事」の際には、避難所になる体育館や役所等で早期に円滑に心のケアに活用する、PAROの「デュアル・ユース」を提唱します。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202609166044-O1-u9anKASv】
■展覧会概要
展覧会名:「Trop mignon ! L’art du bonheur」(So Cute! The Art of Happiness)
会場:Musée du Louvre-Lens(ルーブル美術館ランス別館) フランス・ランス
会期:2026年9月23日 (水)~ 2027年1月18日(月)
展覧会テーマ:
本展では、
・動物と人間の感情的な結び付き ・「かわいい」の美学
・ピンク色の文化史 ・ぬいぐるみと安心感
・日本のKawaii文化 ・現代アートと幸福感
などをテーマに、人間の感情や共感性について多角的に考察します。約300点に及ぶ絵画、彫刻、写真、映像、インスタレーション作品が展示されます。
https://www.louvrelens.fr/en/exhibition/so-cute-the-art-of-happiness/
■PAROとは
PAROは、アザラシの赤ちゃんをモデルとして開発されたロボットです。アレルギー、人畜感染症問題、管理問題、高コスト等で、ペット動物を飼いたくても飼えない人や場所があるため、ペット動物の代替として、人に可愛がっていただくことを目的に、1993年から現在の国立研究開発法人産業技術総合研究所【理事長 石村和彦】(以下、「産総研」)が研究開発を行って、2000年からは国内外の医療福祉機関・大学等と連携して臨床研究を推進しています。2004年にパロに関する知的財産権のライセンスを受けた富山県南砺市の株式会社知能システム【代表取締役 島田優平】(以下、「知能システム」)が、パロの製造・販売・輸出等を行っていますが、パロの製造には日本企業80社以上が関わる純粋な日本製です。これは、究極の「高品質」と共に、「セキュリティの確保」を目的にしています。
2005年3月に愛知万博の政府迎賓館(皇室・王侯貴族、各国首脳等VIP向け)と、一般向けの展示に合わせて第8世代のPAROが市販化され、一般家庭でのペット代替と、医療福祉施設でのロボット・セラピーに活用されています。改良を重ねて、現在は第9世代になっています。
海外は、日本と異なり、一般的にロボットに対して「恐怖感」や「嫌悪感」がある一方、ペット文化が発達しており、「アニマル・セラピー」が深く理解されている等の「文化的な違い」があります。また、欧米は、アート作品を見たり、触れたり、造ったりする「アート・セラピー」についても造詣が深いです。
PAROはロボットでありながら、可愛く、生き物らしい、高いクオリティが世界で認められ、王侯貴族等にも受け入れられ、喜ばれてきています。また、外務省ではPAROを「文化啓発用品」として、世界各国の日本大使館や総領事館に配備し、日本の文化の紹介に活用して頂いています。
PAROのセラピーへの応用について、日本では「医療」と「福祉」が分離されているため「福祉用具」として主に「介護」で利用されています。一方、海外では全て「医療」である「社会制度の違い」があるため、パロが「医療機器」として登録され、医療福祉で活用されています。
2009年に、アメリカのFDA(Food and Drug Administration: 食品医薬品局)から「治療効果」と「安全性」が認められて「バイオフィードバック医療機器(クラス2)」の承認を得ました。その後も、市販化後のさまざまな臨床試験を積み重ね、小児から高齢者まで、救急、急性期から終末期まで、「せん妄」や「認知症」等の「神経認知障害群」や発達障害、ガン、脳損傷等のさまざまな患者の不安、抑うつ、痛み、興奮(暴力、暴言、徘徊等)、不眠等の「行動・心理症状」の改善を目的に、PTSDや認知症の患者が多い退役軍人省病院に導入されたり、処方箋に基づく公的医療保険の適用になったりし、副作用が無い安全な「非薬物療法」として喜ばれています。
現在では、アメリカの他、ヨーロッパ、イギリス、スイス、オーストラリア、シンガポール、香港でパロが「医療機器」登録され、世界約50か国で導入されています。病院(救急、急性期、回復期、慢性期・生活期、終末期)、高齢者施設、障害者施設、認知症ケア施設などにおいて、小児から高齢者まで、さまざまな人々の「心のケア」を支えています。
PAROは単なる機械ではなく、人との触れ合いの中で信頼関係や愛着を育み、人々の笑顔や会話を生み出す存在として世界中で高く評価されています。これらを踏まえて、2025年の大阪・関西万博では、「世界赤十字・新赤月運動ウィーク」に、パロが展示されました。
ギネス世界記録は、2002年にイギリス・ロンドンの科学博物館でのPAROの展示をきっかけに、PAROを「世界で最もセラピー効果があるロボット」に認定し、現在も継続しています。
■アートとテクノロジーの融合
PAROは芸術性と先端技術を融合した独創的な存在です。PAROは人から受け入れられて初めてセラピー効果を発揮するため、ふれあう人からの「受容性」を高めることが目的です。
人がPAROに対して自然に親しみや愛着を抱けるように、人の感覚を適切に刺激するため、
・柔らかな毛並み(感染症対策のため銀イオンで制菌加工した安全な素材で最高級品)
・温かみのある触感や抱き心地(温度センサで体温制御、3次元的重量バランス)
・愛らしい表情(一体ずつ手作りとトリミング)
・やさしい鳴き声(カナダ北東部の本物のアザラシの赤ちゃんの泣き声)
・滑らかで穏やかな動き(ノイズが少なく、人の強い力に対処する知的静穏型アクチュエータ)
などが細部にわたり考慮され、設計されています。これにあたり、欧米のビスポーク車、精密機械時計、プライベート・ジェット機等の「ラグジュアリー」を参考にしつつ、2種類の世界遺産がある歴史的文化都市の富山県南砺市の木彫、漆塗り、絹織物、金箔等の伝統工芸のフィロソフィーを取り入れています。そして、PAROは、一体一体、熟練の職人の手作業によって、工芸作品や芸術作品のようなクラフトマンシップによって製作された、「人を癒すために創られたアート作品」と言える存在です。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202609166044-O2-sEVV680b】
■身体性人工知能(Embodied AI)の最先端技術
PAROは世界を代表する「身体性人工知能(Embodied AI)」(フィジカルAI)の実用例です。
身体性人工知能とは、身体を持つ存在(ロボット)として、人間と相互作用しながら知的な振る舞いを発現する人工知能技術を指します。PAROは、研究開発者の産総研の柴田崇徳による1992年の博士論文「ロボットの階層的知的制御」(名古屋大学)に基づき、1993年に現在の産総研に入所後、1995~98年に研究員を兼任したアメリカのマサチューセッツ工科大学人工知能研究所において、身体性人工知能の応用として動物型ロボットの試作・評価を重ねて、1998年に第1世代のパロを発表、その後、日本で社会実装のための改良を重ねてきました。PAROには、
・触覚センサ(全身とヒゲ)
・光センサ(プライバシー保護のため明るさのみで、カメラは排除)
・音センサ(音声認識と3Dの音源同定)
・姿勢センサ(抱っこされた時の姿勢等の認識)
など多様なセンサが搭載されています。これらにより、ふれあう人からの撫でる、抱きしめる、話しかける、名前を呼ぶ、といった働きかけを認識し、その状況に応じて自律行動や反応を変化させ、「強化学習」により飼い主の好みの性格に変わったり、新しい名前に反応するようになったりすることで、飼い主と長期的な関係を築いていきます。PAROは単なる会話AIではなく、「身体を通じて、人と関係性を築く人工知能」を持つロボットとして、世界の研究者や医療関係者から高く評価されています。
■世界の医療・福祉現場で活躍するPARO
PAROは海外では「医療機器」として、質が高いエビデンスに基づき、フランスやイギリスの「ガイドライン」や、北欧、アメリカ、豪州、シンガポール、香港等の社会制度(公的導入、公的補助、医療保険適用等)に組み込まれている、世界で唯一のロボットです。
日本では、厚生労働省と経済産業省の「介護テクノロジー」で、2025年からの重点分野「認知症生活支援・認知症ケア支援」の「選定機器」の第1号です。これにより、高齢者や障害者向けの介護事業者がパロを導入する際には、厚生労働省の「介護テクノロジー導入支援事業」(1体当たり30万円、定員10名当たり1体を目安に必要なだけ)の補助金を利用することが可能です。
これまでに、20件以上の「ランダム化比較試験」(1件5~7年間かかる)による臨床試験(薬物の臨床試験・治験に相当)や、それらのメタアナリシスの結果等により、パロのセラピー効果のエビデンスが示されています。
・ストレス軽減
・不安、痛み、抑うつ、興奮(徘徊、暴力、暴言等)、不眠等の改善
・孤独感の低減、コミュニケーション促進、社交性の向上
・QOL(生活の質)の向上
・軽度認知症者の認知機能(MMSEのスコア)の維持・改善
・介護者・看護者の負担感の低減
などの効果が報告されています。特に認知症ケアや高齢者ケアの分野では、「ロボット・セラピー」として広く活用されています。(https://doi.org/10.7210/jrsj.43.964)
ルーブル美術館があるフランスでは、2018年に既存の4種類の抗認知症薬が「効果が低く、副作用が問題」として、保険適用から除外された後、認知症対策として高齢者のケアを重点化するため、各州政府によりPAROが全額助成で導入されるようになり広く活用されています。また、小児病院や歯科病院等でも導入されたり、救急病院で臨床試験が行われたり、多様化しています。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202609166044-O7-hI49hYx5】
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202609166044-O9-7cu2Q8d2】
https://www.kanazawa-u.ac.jp/news/180050/
(2026年9月27日(日)に金沢大学で開催される「日本災害復興学会」で詳細を発表予定)
■災害の被災者支援
PAROは災害の際に、WHO(世界保健機構)が提唱する「Mental Health and Psychosocial Support (MHPSS:心の健康と心理社会的支援) in Emergencies and Beyond」に寄与します。
日本では、東日本大震災(2011年)、熊本地震(2016年)、能登半島地震・豪雨(2024年)等の被災地において、避難所、仮設住宅、高齢者施設、病院、障害者施設などで利用されてきました。災害による喪失感や不安、孤独感を抱える被災者に対して、PAROは安心感や心の拠り所を提供し、
・笑顔を引き出す
・気持ちを和らげる
・涙し、悲しみを表出させる(グリーフ・ケア)
・会話を促し、人と人とのつながりを生み出す(被災者同士や、被災者と支援者の関係)
役割を果たしてきました。避難所や被災地では、「久しぶりに笑顔になれた」、「抱いていると安心する」、「周囲の人との会話が増えた」などの声が寄せられており、長期的な「心の健康と心理社会的支援」に貢献しました。
■戦災の被災者・避難者への心のケア
PAROは紛争被害を受けた人々の支援にも活用されています。
ロシアによるウクライナ侵攻後には、ミサイル等の爆発や、敵兵からの暴力・暴行による本人・家族・近隣者等の死傷を受け、避難を余儀なくされた人々のストレスや不安やその他のPTSDの治療を目的として、ポーランドの医療機関や支援施設へパロが導入されました。特に、
・戦争体験によるトラウマを抱える子ども
・不安を抱える高齢者
・長期避難生活を送る人々
の心の安定を支援するツールとして活用されています。
また、国連移住機関(UN IOM)や国連児童基金(UNICEF)の各「MHPSSプログラム」にも、PAROが組み入れられて、テクノロジーによる新しい人道支援の実践例として注目されています。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202609166044-O10-v611RDWx】
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202609166044-O11-8KCt8uiq】
■世界的アーティストと共に展示
本展ではPAROが、古代のエジプト時代から現代のアーティストの約300点の作品とともに紹介されます。例えば、近代アートでは、オーギュスト・ルノワール氏による「かわいい子供」をモチーフにした作品等が展示されます。一方、かわいさを悪用した事例として、ナチスが戦争に「かわいい」を利用した事例も紹介されます。
現代アーティストでは、村上隆氏等の作品が展示されます。村上氏は、日本の「Kawaii」文化を現代アートとして再解釈し、世界へ発信するアーティストです。花やキャラクターをモチーフとした作品は、日本文化における「かわいい」の力を象徴しています。
また、ジェフ・クーンズ氏は、《Balloon Dog》に代表される作品で知られ、親しみやすい造形やポップな表現によって、人々に喜びや楽しさをもたらす現代アートを追求しています。
https://www.bernardaud.com/jp/jp/artists/jeff-koons
PAROは、村上隆氏が芸術で表現する「Kawaii」、ジェフ・クーンズ氏が造形で表現する「喜び」を、ロボット工学と人工知能によって実現している存在と言えます。PAROは「ペット代替」や「医療・福祉機器」として誕生しましたが、そのデザイン性、感情への働きかけ、人との関係性を生み出す力によって、本展の主題を象徴する展示物となっています。
■なぜPAROがルーブル美術館で展示されるのか
ルーブル美術館のキュレータによれば、PAROは、
・人に愛着を抱かせるデザイン
・人の幸福感を高めるインタラクション
・身体性人工知能の最先端技術
・医療機器としての科学的実績
・災害被災者支援での実績
・ウクライナ被災者・避難者への支援の実績
・日本発のKawaii文化との親和性
などを兼ね備えており、PAROは単なるロボットではなく、芸術・デザイン・人工知能・医療・福祉・人道支援を結び付ける文化的存在として評価されました。
ルーブル美術館ランス別館での展示は、「かわいい」が持つ力を科学、芸術、社会貢献の観点から体現する代表的事例として、PAROが国際的に認められたことを示しています。
なお、これまでにもPAROは、アート作品として、ロンドンのVictoria & Albert Museum(展示後、収蔵)、Design Museum、ニューヨークのMuseum of Modern Art (MoMA)など、世界各地の著名な美術館や博物館でも展示されてきました。
■結論
PAROのルーブル美術館ランス別館の特別展での展示は、日本発のロボット技術が世界最高レベルの文化・芸術の舞台で評価された象徴的な出来事です。
PAROは、
・人を幸せにするアート
・心に寄り添うデザイン
・身体性人工知能の最前線
・科学的根拠に基づく「医療機器」(海外)・介護テクノロジーの「選定機器」(日本)
・災害・戦災の被災者・避難者を支える人道支援ツール
という多面的な価値を持っています。
東日本大震災、熊本地震、能登半島地震等の被災地、そしてウクライナ避難民支援の現場で人々の心を支えてきたPAROは、芸術、科学、医療、福祉、人道支援をつなぐ21世紀の新しい文化的存在です。
今後、防災として、「平時」にはPAROが学校で、子供達の情操教育やSTEAM(科学、技術、工学、芸術、数学)教育や教職員のウェルビーイングにも貢献しつつ、「有事」には避難所になる体育館等で活用できます。
プレスリリースURL
https://www.aist.go.jp/aist_j/news/announce/au20260917.html

