フラクタルによる高精度画像認識技術「Fractal NEXT」を開発 - Kyodo News PR Wire|RBB TODAY
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フラクタルによる高精度画像認識技術「Fractal NEXT」を開発



自動運転トラックへの応用へ前進

2026年7月13日
早稲田大学

フラクタルによる高精度画像認識技術「Fractal NEXT」を開発 ~自動運転トラックへの応用へ前進~

 

詳細は早稲田大学HPをご覧ください

【表:https://kyodonewsprwire.jp/prwfile/release/M102172/202607092299/_prw_PT1fl_F9weeXOF.png

 近年、画像認識分野で用いられるニューラルネットワークにおける最近のモデルは、GPU性能の向上とともに高性能化しています。しかし、画像を空間分割した部分画像(パッチ)から得られるパッチの特徴ベクトル(パッチトークン)の抽出やトークンの混合というプロセスにより、必然的に特徴空間情報が失われてしまいます。ビジョンタスク向けの従来のニューラルネットワークモデルは、この問題を軽減するための情報を補う手法として残差接続に着目するResNetが活用されていますが、周波数情報の再現が不十分なため小サイズの物体認識がされないなど、安定性を十分に維持することができないことが課題となっていました。

 早稲田大学理工学術院 鎌田清一郎(かまたせいいちろう)教授らの研究グループは、各パッチ内の空間情報を保持しつつパッチトークンを抽出する手法であるフラクタル・ウェーブレット法「FractalNEXT」を開発しました。これは、ウェーブレット変換を導入することにより画像内の空間情報を保持したままトークン化することで情報損失を最小限に抑えることができ、また層内モジュールに対して自己相似性を有するネットワーク構造を組み合わせて構築したものです。本手法では、画像データセットImageNetでResNet※1を上回る76.8%、画像データセットCIFAR-100※2で81.2%のトップ1精度を達成したほか、物体検出やOCR(古文書くずし字認識)など多様なタスクでも優れた性能を示しました。

 本成果は、論文誌「Neural Networks」に、2026年6月7日に掲載されました。

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202607092299-O2-ma7h1VDd


 

キーワード:
フラクタル、自己相似性、ニューラルネットワーク、SDV、自動運転トラック、くずし字認識、フィジカルAI

 

(1)これまでの研究で分かっていたこと

 近年、画像認識分野で用いられるニューラルネットネットワークにおける従来モデルの1つであるFractalNetが、2017年に深層学習に関するトップ国際会議ICLR(International Conference on Learning Representations)において発表されました。これは、ResNetのような残差接続を使わずに超多層ネットワークを構成する観点で優位性があります。

 しかし、本モデルを実装すると、画像をトークン化する際に空間情報が失われてしまうこと、残差接続なしでは周波数情報を十分保持できないことなどより、ResNetより劣る認識性能を示すことが確認されています。FractalNetは残差ブロックを回避する上で有効なアイデアですが、より高精度の認識性能を実現するためには、どのようなフラクタルブロックを構成すればよいか、すなわち、自己相似性を特徴とするフラクタルブロックの新たな設計が求められていました。

 

(2)新たに実現しようとしたこと、明らかになったこと

 従来モデルFractalNetは、周波数上の情報伝達の安定性を維持する上で、残差接続の限界による認識性能劣化の問題を見落としています。この課題に対処するため、研究グループらは、各パッチ内の空間情報を保持しつつウェーブレット・パッチトークンを抽出する手法であるMultiple Wavelet Patch Partition(MWPP)を提案しました。また、残差接続を補強するために周波数情報を意識したSelective Wavelet Connection(SWC)を導入し、それによって周波数上の情報伝達の安定性を高め、トークンミキサーによって生じる情報損失を補い、MWPPとSWCを基盤として、畳み込みと自己アテンションの両方をトークンミキサーとして統合した、スケーラブルなフラクタルアーキテクチャFractalNEXTを新たに設計しました。

 初期ブロック F1(x)=(Mix○Mix)(x)+SWC(x) から、次の反復式によってフラクタルブロックを構成しました。

 Fk+1(x)=( Fk○Fk)(x)+SWC(x) k=1,2,3,…

 同じ実験環境下において、FractalNEXTは画像データセットImageNetでResNetなどを上回る76.8%、画像データセットCIFAR-100で81.2%のトップ1精度を達成しました。

 フラクタル・ウェーブレットFractalNEXTを古文書のくずし字認識に適用し、VMamba、PVTV2、ConvNeXtV2などに比べてF1スコアにおいて最高認識性能を達成しました。

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202607092299-O3-l7d6HLlT


(3)研究の波及効果や社会的影響

 本研究の成果より、画像認識分野に用いるディープラーニングにおいて、新たに提案したFractalNEXTモデルにより、フラクタル・ウェーブレットの有用性の一端を示すことができました。これをきっかけとしてより深いフラクタルの世界を探究することで、大小・遠近など多様な物体が混在するような複雑な画像においても正確な認識を達成することが可能となり、AI基盤技術への貢献、医用画像処理、リモートセンシング画像解析など、幅広い分野への適用が考えられます。

 

(4)課題、今後の展望

 更なる画像認識精度向上と、本研究成果を活用した社会実装には多くの課題が存在します。例えば、自動運転トラックへ本技術の応用を考えると、更なる処理の高速化と、本アルゴリズムのFPGA(書き換え可能な集積回路)などへの実装が必要です。

 本研究グループでは、社会実装の適用に向けて、具体的なテーマとして自動運転車用のセンサ(カメラ、LIDERなど)による自動運転用データセットを構築し、End-to-Endのディープラーニングモデルの構築を目指します。また、社会実装に向けた動きとして、本技術をもとに特許出願(出願番号:2025-154600)を行い、社会実装に向けた技術基盤を構築するとともに、自動運転トラックの研究開発で群馬大学次世代モビリティ社会実装研究センターCRANTS(センター長 天谷賢児教授)と共同での研究を開始しました。

 

(5)研究者のコメント

 本研究グループは、上記の研究をさらに推進するための学内研究拠点として、早稲田大学自動車研究機構に6月1日付でソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)研究所を設立するとともに、北九州キャンパスの情報生産システム研究センター内に8月1日付で「SDV・フィジカルAI研究会」を設置する予定です。これらの研究開発拠点の連携活動と、産官学連携の研究展開により、本課題の更なる研究開発を推進します。中長期的な研究目標として、FractalNEXTを用いた自動運転トラックを2030年までに東京(早稲田大学西早稲田キャンパス)~福岡間(北九州キャンパス)を自動運転レベル4での走行実現を目指し、必要となる研究開発を推進したい思っています。

 

(6)用語解説

※1 ResNet(Residual Network)

画像認識のための深層学習モデルで、入力情報を途中で直接後段へ伝える「残差接続(Residual Connection)」を導入することで、非常に深いネットワークでも高精度かつ安定した学習を可能にしたアーキテクチャです。

 

※2 CIFAR-100

画像認識モデルの性能評価によく用いられるベンチマークデータセットで、100種類のカテゴリに分類された60,000枚(学習用50,000枚、テスト用10,000枚)の32×32ピクセルのカラー画像で構成されています。

 

※3 フラクタル

わかりやすい例では、下図のように上段の初期パターンから反復を繰り返すことにより、同じような形状が至るところに現れるコッホ曲線が有名です。これを「自己相似性をもった曲線」といいます。フラクタルの詳細は、以下の書籍を出版していますのでご覧下さい。

対象書籍:Maria Petrou, Sei-ichiro Kamata, Image Processing -Dealing with Textures, 2nd edition, Wiley, 2021.

 

※4 ウェーブレット変換

ウェーブレット変換は、時系列データや画像データについて、時間と周波数の両方の情報を同時に解析する手法です。フーリエ変換は、全体の平均的な周波数成分しか分からないのに対し、時間とともに変化する周期性を追いかけられるのが特徴です。

 

(7)論文情報

雑誌名:Neural Networks

論文名:FracNeXt: Enhancing visual representation learning in sequence models with fractal wavelets

執筆者名(所属機関名):陸 鵬鋒 (早稲田大学), 鎌田 清一郎*(早稲田大学), 張 梦雲秋 (早稲田大学)

掲載日:2026年6月7日

掲載URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0893608026006957?via%3Dihub

DOI:https://doi.org/10.1016/j.neunet.2026.109234

*:責任著者

 

(8)研究助成

研究費名:日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)

研究課題名:局所視覚特性を利用した高効率画像判別モデルの構築と持参薬判別への応用

(課題番号:JP24K15018)

研究代表者名(所属機関名):鎌田 清一郎(早稲田大学)

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