
2025年6月5日
住友林業
住友林業株式会社(本社:東京都千代田区、社長:光吉 敏郎)が設計・施工した6階建ての社宅(以下 本物件)が茨城県つくば市に完成し、6月1日より利用を開始しました。本物件は平面混構造(中央がRC造、両端が木造)とし、混構造用に開発した構法・部材と当社オリジナルの耐火構造部材を採用。中大規模木造建築の技術とノウハウを活かし、設計・施工の合理化で建設コストや工期短縮を実現しました。本物件を「木造混構造中大規模集合住宅」のモデルケースとして普及させ脱炭素社会の実現に貢献します。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202506040001-O1-kq282Wk2】
■本物件の特長
①混構造に対応した「構法・部材」を活用し、施工の合理化で建設コスト削減と工期短縮を実現
【構造】
木造部分を含めた建物全体の水平力を全て中央のRC造に集中させ地震の揺れなどに強い構造です。これにより木造部分にかかる負担を軽減でき、木造柱や梁のスリム化を実現、コストも削減しました。木造は鉄筋コンクリート造よりも基礎に与える荷重が小さいため建物全体の重量を軽くでき、基礎も小さくすることが可能です。
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【構法】
木造部分に日建設計と共同開発した「合成梁構法」※1を初採用。のこぎり状に凸凹をつけた木梁とRC床版(鉄筋コンクリートを用いた床版)の組み合わせで梁の高さを低減し、天井高を確保。また床に振動が伝わりやすい木造梁に対し本構法はRC床版が木造梁の剛性を高めることで、床の振動を抑え揺れにくい床を実現しました。
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【部材】
木造部分の躯体には国土交通大臣認定を取得した当社オリジナル木質耐火部材「木ぐるみCT(2時間耐火構造部材)」※2を初採用。耐火被覆材に特注品ではなく一般流通品のCLTや不燃材などを使用しているため低コストを実現しました。耐火基準を満たしながら木材を現しとすることで木のぬくもりも感じられる居住空間です。
木造とRC造の接合部分にカナイグループと共同開発した「混構造用接合金物」※3を採用。木造の小梁とRC造の大梁や柱を接合する金物を規格化。一般的な木造建築の特注品と比較しコスト削減と設計作業の効率化が可能です。
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鉄筋コンクリート造の床スラブを木造部分まで伸ばすことで木造部分と鉄筋コンクリート造を同時に施工。「混構造用接合金物」をコンクリート打設前に取り付けるなど現場の作業を簡略化することで同規模のRC造と比較し工期が長い傾向の混構造でも同等の工期を実現しました。木造部分の建て方は型枠工による施工とし、中大規模木造建築の職人不足の課題解決や現場での作業を合理化しました。
②建物のライフサイクル全体でCO2排出量の削減が可能に
【エンボディドカーボン排出量の削減】
OneClickLCA※4を用いて設計時からエンボディドカーボンを見える化し、CO2排出量削減の効果を適時モニタリングしながら設計することでよりCO2排出量の少ない部材を使用。建物全体で322m3の木材を使用(構造材154.8m3、仕上材167.2m3)。軒天や住戸天井等仕上げ材の一部には国産材を使用しています。炭素固定量は267.239トンCO2e bio(CO2ベース) で40年生のスギ約878本の炭素固定量に相当します
【オペレーショナルカーボン排出量の削減】
建物全体の省エネ・創エネで75%以上のCO2排出量の削減を実現しNearly ZEH-M※5を取得。再生アルミを100%使用した環境性能の高いサッシの採用や高効率設備機器を導入し、屋上スペースなどへの太陽光発電の設置で省エネ・創エネを実現しました。建築物の省エネルギー性能表示制度で最上位等級であるBELS★★★★★★、室内の快適性や外部への環境負荷なども含め建物の品質を総合的に評価するシステムで最上位等級のCASBEE-Sも取得予定です。そのほかにも貯水槽付き植栽トレイを利用して独自開発した緑化システムを吹き抜け部に採用。壁面緑化も導入し、直射日光を遮ることで夏場の建物内温度を下げ、冷房使用を抑えます。
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③社員を対象に「木の良さ」を調査
住友林業の企業内研究機関「筑波研究所」は木の総合的な活用を目指し、「木」や「緑」のもつ機能や特性、それらが心身に与える効果を研究しています。これまでに「木」は視覚(見た目)、触覚(触り心地)、嗅覚(香り)から得られる刺激を通してリラックス、疲労軽減、免疫力向上の効果があると分かっています※6。東京大学恒次先生との共同研究で2025年6月~2026年5月にかけて床の硬さ、光、温湿度、香りや社員の心理的・生理的な状態を測定します※7。旧社宅(観音台寮)と比較して「木」が心身の健康などに与える効果を検証します。非木造建築(RC造・鉄骨造)を木造に変える効果を定性的・定量的に立証し、快適な空間づくりと木造建築の価値向上につなげます。
■今後の展望
今後集合住宅をはじめ中大規模建築物の木造化・木質化を推進し環境負荷の低減と持続可能な社会の実現を積極的に推進します。木の意匠性や環境性能を最大限に活かし、物件に合わせた構法や部材の技術開発と設計手法を融合させ、快適で環境に優しい建築ソリューションを提供します。建築業界の職人不足などの課題に対し、現場作業の合理化に向けた取り組みも進めます。
※1.日建設計と住友林業 木質梁とRC床版(しょうばん)を接合した「合成梁構法」を共同開発 ~中大規模木造建築の普及を後押し~ |住友林業(sfc.jp)
※2.木質部材「木ぐるみ CT」が3時間耐火構造の大臣認定15階以上の中大規模木造建築が可能に |住友林業(sfc.jp)
※3.混構造建築の梁接合金物を発売 ~形状規格化で設計業務を省力化 中大規模木造建築推進~ | 住友林業(sfc.jp)
※4.建てるときのCO2排出量(エンボディドカーボン)を見える化するソフトウェア「One Click LCA」は住友林業が日本単独代理店契約を締結。(参考URL: https://sfc.jp/treecycle/value/oneclicklca/)
※5.集合住宅において年間の一次エネルギー消費量を75%以上削減し、ゼロエネルギー住宅に近い省エネ性能と創エネを実現した建物を指す。
※6.ウェブサイト「木の家Lab.」に筑波研究所の木の効用・効果に関する検証データを一部掲載。
※7.2020年に住友林業と国立大学法人東京大学と締結した産学協創協定『木や植物の新たな価値創造による再生循環型未来社会協創事業』の一環で研究を実施。(参考:2020年9月28日プレスリリース)
■物件概要
所在地 :茨城県つくば市みどりの2丁目31-4,5,6
主要用途 :共同住宅、店舗、事務所(1階はサテライトオフィス・店舗等、2~6階は住居)
総戸数 :46戸 ※ シングル1K(約26 m2)41戸、ファミリー2DK(約52 m2)5戸
敷地面積 :2,825.53 ㎡
構造・階数:鉄筋コンクリート造+木造・地上6階(中央がRC造・両脇が木造の平面混構造)
着工・竣工:2024年5月着工・2025年5月末竣工
住友林業グループは森林経営から木材建材の製造・流通、戸建住宅・中大規模木造建築の請負や不動産開発、木質バイオマス発電まで「木」を軸とした事業をグローバルに展開しています。2030年までの長期ビジョン「Mission TREEING 2030」では住友林業のバリューチェーン「ウッドサイクル」を回すことで、森林のCO2吸収量を増やし、木造建築の普及で炭素を長期にわたり固定し、自社のみならず社会全体の脱炭素に貢献することを目指しています。今後も非住宅建築分野での木造化・木質化を推進し、木の魅力を最大限に生かした付加価値の高い商品・サービスを提供していきます。
【参考資料】
■中大規模木造建築事業の沿革
当社は2010年の木材利用促進法の施行を契機に2011年に「木化推進室」を立ち上げ、本格的に非住宅木造市場へ参入。当初は住宅で培った技術や知見を活かし低層非住宅木造建築物から事業を開始しました。その後、中高層非住宅木造建築物の需要の急増などを背景に2017年に熊谷組と業務・資本提携、2020年のコーナン建設のグループ化を進め、中高層非住宅木造事業を拡大しています。今後も中大規模木造建築の普及を通じ脱炭素社会の実現に貢献します。
■中大規模木造建築事業の特徴
当社は建設業界で川上の部材供給から川下の施工まで、サプライチェーンを通じて幅広い提供が可能です。木材・建材商社としての木材流通に対する知見の深さや住宅建築請負事業で培ってきたノウハウや他社とのネットワーク力、空間提案力を活かし中大規模木造建築事業に取り組んでいます。木の総合的な活用を目指し、広く研究開発を広く進めていくことを目的に筑波研究所で要素技術の研究開発なども注力しています。これらの特徴を活かし低層から中高層の木造建築の設計・施工を希望するお客様からの様々なニーズに対応しています。
■今後の取り組み
2025年は国内の木造建築を多く手掛け2024年を上回る受注金額150億円、販売金額100億円を計画しています。2030年までの長期ビジョン「Mission TREEING 2030」や中期経営経営計画(2025~2027年)の達成に向け中大規模木造建築を普及させ、事業拡大とともに脱炭素社会にも貢献していきます。