ハリウッド俳優アンセル・エルゴートが、韓国で思わぬ批判を浴びている。
理由は、9月2日にソウルで開かれた文化イベント「CJ NIGHT IN CELEBRATION OF FRIEZE SEOUL」に、日本の伝統衣装である「浴衣」を着て出席したことだ。
この日の会場には、イ・ビョンホン、イ・ジョンジェ、パク・チャヌク監督、G-DRAGONら韓国を代表する著名人が集結。
そんななか、アンセルだけが浴衣姿でフォトウォールに立ったことで、韓国では「なぜ韓国のイベントで浴衣なのか」という疑問が噴出した。
だが、今回の騒動は単純に「韓国で日本の服を着たから怒られた」という話なのだろうか。
韓国メディアの報道を見ていくと、問題視されているのは、もう少し複雑なようだ。
問題は「浴衣」そのものではない?

まず重要なのは、このイベントの性格だ。
韓国メディア『MBC芸能』は、イベントについて「グローバルな関係者を招待し、韓国の生活文化を知らせるため、Kフード、韓国の蒸留酒などを提供し、韓国作家の作品も紹介した」と説明している。
つまり、単なる華やかなパーティーではなく、韓国の文化やライフスタイルを海外の来場者に紹介する意味合いを持ったイベントだったということだ。
そのため、韓国側からは「韓国文化を紹介する場で、なぜ日本の伝統衣装を選んだのか」という違和感が生まれたようだ。
『ファイナンシャルニュース』も、「韓国で開かれた公式日程という点で、文化的な文脈を考慮すべきだったという指摘が出た」と伝えている。
一方で同メディアは、「個人の服装選択として見るべきであり、政治的・歴史的意味を過度に付与する必要はない」という反対意見も紹介した。
つまり韓国国内でも、浴衣そのものを問題視する声だけで一枚岩になっているわけではない。
今回、もうひとつ大きく問題視されているのがドレスコードだ。
前出の『MBC芸能』によると、主催側は出席者に「カクテル・アタイア」を案内していたとされる。いわゆるセミフォーマル寄りの服装を求めるドレスコードだ。
これについて、日本との歴史問題について発信の多い誠信(ソンシン)女子大学のソ・ギョンドク教授は、自身のSNSで「主催側が案内したドレスコードを無視して、あえて浴衣で登場したのは非常に無礼な行為だ」と批判した。
さらに「いくら日本人女性と結婚したとしても、時と場所を区別して服装を選ぶのは基本的な礼儀だ」とも主張している。
つまり、少なくともこの批判では、「日本の服だから問題」なのではなく、韓国文化を紹介する公式イベントで、しかも指定されたドレスコードから外れてまで浴衣を選んだことが問題視されている。
韓国側が本当に引っかかっているもの

韓国メディアのなかには、さらに踏み込んだ見方もある。
『TVデイリー』は今回の騒動について、「政治的意図なのか、無知なのか」と問いかけた。同メディアが注目したのは、アンセルがアジア文化とまったく縁のない人物ではない点だ。
アンセルは以前から日本文化への親しみを公にしてきた。日本人パートナーがおり、日本語で会話する姿も公開している。また、米ドラマ『TOKYO VICE』に主演し、2024年には「東京は僕の第2のふるさとになりました」とも語っていた。
だからこそ『TVデイリー』は、「日本文化に深く親しんできた人物が、ソウルで開かれた韓国企業主催のイベントであえて日本の伝統衣装を選んだこと」に疑問を示した。
さらに同メディアは、仮に政治的な意図がなかったとしても、「韓国と日本の文化を区別せず、ひとつの“東洋風”としてまとめて消費する、ハリウッド特有の浅い文化的理解が表れたとの指摘も避けにくい」という趣旨で批判している。
かなり厳しい見方だが、今回の韓国側の反応を理解するうえでは象徴的でもある。
ここまで韓国メディアの主張を整理すると、今回の騒動で問題視されているのは、浴衣そのものというより、「なぜ、その場所で、その服だったのか」という点に集約されそうだ。
韓国文化を紹介するためのイベントだったこと。主催側が「カクテル・アタイア」を案内していたこと。そして、日本文化に深く親しんできたアンセル本人であれば、韓国と日本の文化的な違いもある程度理解しているはずだという期待があったこと。
そうした条件が重なった結果、韓国では単なる衣装選びではなく、「配慮を欠いた」「文化的な文脈を読めていない」とする批判が強まったようだ。
もちろん、本人が政治的なメッセージを込めて浴衣を選んだという根拠は、今回提示された報道にはない。だからこそ、韓国メディアの一部も「政治的意図なのか、無知なのか」と疑問形で扱っている。
ただ、国際的な文化イベントでは、本人に悪意があるかどうかだけでなく、その服装が「どこで、何のために着られたのか」まで意味を持ってしまう。
今回の浴衣騒動は、その難しさを改めて示した一件といえそうだ。
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