兵役を終えたメンバーが再集結し、ついに完全体での活動を再開したBTS。
3月21日、ソウル・光化門(クァンファムン)広場で行われた復活公演「BTS THE COMEBACK LIVE : ARIRANG」は、Netflixを通じて世界190カ国に生配信され、“王の帰還”を告げる歴史的な祝祭となった。
しかし、その熱狂の裏で市場は冷ややかな反応を示した。
所属事務所であるHYBEの株価が、週明け23日に前営業日比で約15%も急落したのだ。翌24日には買い戻しの動きも見られたが、その勢いは限定的で、株価は依然として不安定な推移を辿っている。

“BTS完全体復活”という最大級の好材料がありながら、なぜ株価は沈んだのか。市場では、期待感が事前に織り込まれていたことによる「材料出尽くし感」に加え、公演の動員数が予測の26万人を大幅に下回ったことへの失望も指摘されている。主催者推計で約10万人、ソウル市の集計では約5万人にとどまったという。
だが、より深刻なのは、BTSという大黒柱が戻ったことで、皮肉にも「BTS以外の不安要素」がより鮮明に浮き彫りになったことではないだろうか。
主力グループの不安定な現状
現在のHYBEを語るうえで、主要グループを取り巻く不穏な動向は無視できない。
まず衝撃を与えたのが、ENHYPEN(BELIFT LAB)だ。3月10日、最年長メンバーでメインボーカルのヒスンが、突如としてグループ脱退を発表。事務所に留まりソロ活動へ転向する形だが、人気メンバーの離脱はファンに大きな衝撃を与えた。社屋前でのトラックデモや座り込み抗議にまで発展した騒動の余波は、今も収まっていない。

さらに、第4世代の象徴であるNewJeans(ADOR)も危機的状況にある。前代表ミン・ヒジンとHYBEの泥沼の対立の末、2025年末にダニエルが専属契約を解除しグループを離脱。現在はハニ、ヘリン、ヘイン、ミンジの4人体制での再始動を模索しているが、かつての爆発的な勢いを取り戻せるかは未知数だ。
また、BTSに次ぐ主力ボーイズグループのSEVENTEEN(PLEDIS)も、メンバーの相次ぐ兵役履行により、完全体での活動に制約が生じている。ユニット活動などで空白を埋めているものの、グループ全体の収益力への影響は避けられない。
つまりHYBEは現在、「ENHYPENのメンバー脱退」「NewJeansの不透明さ」「SEVENTEENの兵役空白」という3つの難題を同時に抱えているのだ。
否めない決定打の欠如
もっとも、HYBEのアーティスト層が薄いわけではない。マルチレーベル体制のもと、ラインナップの豊富さは業界随一だ。
BTSと同じBIGHIT MUSICには、安定した人気を維持する弟分のTOMORROW X TOGETHERが控えており、他にもパフォーマンスに定評のあるLE SSERAFIM(SOURCE MUSIC)や、急成長を遂げるILLIT(BELIFT LAB)といった有力なガールズグループが揃っている。さらに日本市場を拠点とする&TEAMや、昨夏デビューしたばかりのaoen(アオエン)など、多彩なカードを揃えている。

しかし、これらのグループがどれほど成功を収めても、BTSが築き上げた「世界的な社会現象」という圧倒的なスケール感には届いていないのが実情だ。
突きつけられた「ポストBTS」の厳しさ
BTSがK-POPを世界的なメインストリームへ押し上げた経済規模や象徴性は、もはや一企業の枠を超えている。今回の株価急落は、BTSが戻ってきた今なお、市場が「BTS後の持続可能な成長モデル」に確信を持てていないことの裏返しと言えるだろう。
BTSがいれば安泰という時代は終わった。唯一無二の存在に頼り切るのではなく、揺らぐ既存グループの再建と、それに代わる真の次世代スターをいかに育成できるか。

王者が帰還した今、HYBEに向けられているのは祝福の拍手だけではない。足元で広がる危機をどう克服するのか。市場の視線は、かつてないほど厳しくなっている。
■BTSが“特別”である理由を「同期」と「同世代」から読み解く



