まぶしい純愛よりも“姉妹愛”に泣いた!韓国ドラマ『なにもしたくない~立ち止まって、恋をして~』 | RBB TODAY
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まぶしい純愛よりも“姉妹愛”に泣いた!韓国ドラマ『なにもしたくない~立ち止まって、恋をして~』

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『なにもしたくない~立ち止まって、恋をして~』(U-NEXTで独占先行配信中)
  • 『なにもしたくない~立ち止まって、恋をして~』(U-NEXTで独占先行配信中)
  • バックパックと身体1つでアンゴクへやってきたヨルム。最初はよそ者扱いされてしまう。
  • 日中に酔い潰れ、深夜に図書館で目を覚ますヨルム。デボムが保護してくれていた。
  • 最初はヨルムに冷たく接していたボムだが、キョウル(犬)の件で味方になってくれる。
  • 誰でも投げだしたい時はあると思うが、それを実行に移すのはなかなか難しい。
  • ヨルムが前日酔っ払ったことを後悔するシーンでも、ロケーションに魅了される。
  • 皆で1泊2日の小旅行、川遊びでほんのりいちゃつくシーンは爽やかさの極み。
  • ヨルムとデボムの恋愛はハグと手繋ぎまで。あとはご想像にお任せください、ということなのだろう。
 6月2日、U-NEXTで独占配信中の韓国ドラマ『なにもしたくない~立ち止まって、恋をして~』(全24話)の残りのエピソード、17話から24話までが配信された。(以下、ネタバレあり)

■筆者プロフィール
山根由佳
執筆・編集・校正・写真家のマネージャーなど何足もの草鞋を履くフリーライター。洋画・海外ドラマ・韓国ドラマの熱狂的ウォッチャー。観たい作品数に対して時間が圧倒的に足りないことが悩み。ホラー、コメディ、サスペンス、ヒューマンドラマが好き。


ほんわか癒しムードから物騒な雰囲気に


 本作は、都会暮らしに疲弊した主人公イ・ヨルム(キム・ソリョン)が、海沿いの田舎町アンゴクへ移住することで経験する悲喜交々を描いたヒューマンドラマ。ヨルムはお気に入りの図書館に通ううち、司書アン・デボム(イム・シワン)や不登校児キム・ボム(シン・ウンス)、ボムの同級生ホ・ジェフン(パン・ジェミン)と仲良くなり、大家の息子ペ・ソンミン(クァク・ミンギュ)やボムの祖母チョン・ヨンスク(キム・ヘジョン)など、他の住民たちにも徐々に受け入れられていく。

バックパックと身体1つでアンゴクへやってきたヨルム。最初はよそ者扱いされてしまう。


日中に酔い潰れ、深夜に図書館で目を覚ますヨルム。デボムが保護してくれていた。


最初はヨルムに冷たく接していたボムだが、キョウル(犬)の件で味方になってくれる。


 しかし、ヨルムが住むことになった元ビリヤード場はデボムの姉が殺害されたいわくつきの場所で、物騒な落書き事件が何度も発生。ボムは同級生たちからいじめられており、アル中でギャンブル狂いの父に頭を悩ませている。また、デボムも姉の殺人事件がトラウマになっており、以前属していた世界とのしがらみも抱えている。

 ラストスパートでこれらの問題が解決していくのだが、その過程がなかなかキツい。前半、ヨルムの飲酒による珍事件や、屋上パーティに小旅行など楽しい光景が繰り広げられていた分、ギャップが大きかった。伏線回収に必要な展開ではあったが、“ヒーリングドラマ”と銘打っているのであれば、そこまでやらなくて良かったのではないか、と思わざるを得ない。登場人物たちがあまりにも気の毒であった。

「幸福とは何か」忙しい現代人に響くメッセージ


 後半の衝撃展開はさておき、主人公の心象描写には、最後まで心打たれるものがあった。物語のはじめ、母と恋人を失っても変わらず会社と家を往復し続ける無機質な日々に「毎日太陽が沈み、太陽が登る。世の中は何も変わらない。私だけ一人ぼっちになった」と荒んでいたヨルムだったが、そのナレーションが、筆者に社会人生活で一番辛かった時期を思い起こさせ、共感を覚えた。そんなドン底状態から「人生のストライキ」と称し、自分を慈しむ時間を大切にしようと一歩踏みだす姿には、憧れの気持ちを抱いた。

誰でも投げだしたい時はあると思うが、それを実行に移すのはなかなか難しい。


 そして、牛乳配達のアルバイトをしながらアンゴクで生活を続けることになったラスト。日の出前の道を自転車で思い切り走ることが1日の始まりとなり、帰宅後に飲む水や、洗濯物を干す時の音や石鹸の香りに五感をくすぐられ、昼下がりには図書館でうたた寝。1日の終わりには、ボムと笑い合ってから眠りに就く。そんな慎ましい日常に幸せを感じ、「“幸福”とは、不足がない状態」「本当に十分満ち足りている。人生の道しるべはまだ見つからないけど、私は今満ち足りている。生きよう」と語る姿に、自分も人生を肯定していこうと思わされた。ヨンスクがヨルムに伝えた「退屈でも大丈夫だし忙しくても大丈夫。人が生きるとはそういうことだから」という言葉も、心に残っている。

 アンゴクという場所も、大変良かった。名峰・智異山(チリサン)のすそ野に広がる街・求礼(クレ)、山に囲まれた谷城(コクソン)、島と海が織り成す南海(ナメ)など韓国国内の様々な場所での撮影により生まれた架空の場所だが、実在するのならぜひ一度は訪れたいと思うほど美しい。ヨルムが脱サラするきっかけを与えた桜並木、青い空に青い海、昔ながらの商店街など、のどかな光景にも心が洗われた。

ヨルムが前日酔っ払ったことを後悔するシーンでも、ロケーションに魅了される。


あまりにもピュアなラブストーリー


 さて、副題に「立ち止まって、恋をして」とある本作だが、ヨルムとデボムの恋愛模様はどうだったのか。優しい性格のキャラクター2人が互いに好意を持ち、徐々に距離を縮めていく様子は、微笑ましかった。ヨルムが図書館通いを続けるうちに会話をする機会が増え、一緒にランニングをするようになり、チメク(チキンとビール)デート帰りの100個の質問でさらに仲を深め、初の映画館デート、夜明けまでチャットや電話……と、交際前のドキドキ感はしっかり描かれている。

 しかし、ヨルムがデボムの家に寝泊まりすることもあれど、何も起きない。(その際には“様々な事件”を抱えていたからそんな気持ちになれないのは仕方ないのだが)最後のお楽しみかと待ち侘びていたキスシーンもないまま終わりを迎えてしまい、正直物足りなさは否めなかった。

皆で1泊2日の小旅行、川遊びでほんのりいちゃつくシーンは爽やかさの極み。


ヨルムとデボムの恋愛はハグと手繋ぎまで。あとはご想像にお任せください、ということなのだろう。


 どちらかと言うと、ヨルムとボムの物語の方が印象深かった。最初はツンケンしていたボムが、祖母がヨルムに助けられたことで心を開くようになり、辛い時にはヨルムを頼るように。実の姉妹さながらの関係性へと発展していく。高校2年生であるボムの置かれる状況があまりにも悲惨なのだが、その分、“不必要に干渉しないがボムの精神的な支えとなるヨルム”、の図が際立っていた。ヨルムとデボムの恋愛も微笑ましい気持ちで楽しんだが、それ以上に、ヨルムとボムが幾度も辛い出来事を経験し、その度に慰め合ったり喧嘩をしたりと絆を深めていく様子に感動を覚えたのである。

ヨルムとボムが互いを想い合うことが分かるシーンには、度々涙を流した。


子どもと犬にナイス脇役賞をあげたい


 ほぼすっぴんで挑んだというヨルム役キム・ソリョン、役柄に合わせてフワフワの髪型にしたというデボム役イム・シワンは、好感度抜群のキャラクターがそれぞれハマり役だった。前回の記事でも触れたように、その感想は最後まで変わらない。なので、今回はソンミンの息子ペ・ジュンを演じたキム・ジュンが素晴らしかったことを最後に伝えておきたい。

 ジュンと言えば、ドラマ『賢い医師生活』のメインキャラクター・イクジュンの息子ウジュ役を演じたことで有名な子役。その際にも愛くるしい魅力を放っていたが、本作でも抜群の存在感。いつも図書館前でボール蹴りをして遊んでいる子ども3人組の1員という役柄なのだが、酩酊して図書館に現れたヨルムを「(髪の毛が)メデューサだ」とからかったり、父からお駄賃をもらってヨルムに水鉄砲で攻撃したりと、ワンパク感が増し増し。デボムに図書館の留守番を任された際、一丁前に司書の仕事をしようと努めていたのも可愛らしかった。父ソンミン役クァク・ミンギュとの相性も抜群である。

子ども軍団のリーダー格を演じたジュン。(写真中央、ピンク色のシャツ)


 ヨルムの愛犬キョウルも本作の名脇役の1人(1匹)。振り返ると、ヨルムはキョウルを媒介にアンゴクの住民たちと親しくなっている。シワンはキョウル役の犬のことを「誰よりも演技が上手かった」と言っていたが、それも納得。海辺で手紙を書こうとするヨルムを良い塩梅で邪魔してそのまま一緒に遊ぶ、ヨルムが失くし物を探している最中に魚の頭を投げるとすかさず取りに走るなど、何気ない場面で細やかな演技力を発揮している。愛嬌たっぷりのこのワンコ、今後もどこかの作品で活躍している姿を見たいものだ。

人間の役者たちを邪魔せず、自分の見せ場ではしっかりと演技していたキョウル役のワンコ。(写真左)




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