【連載・日高彰のスマートフォン事情】中国メーカーの台頭……縮まる日本メーカーとの差 | RBB TODAY

【連載・日高彰のスマートフォン事情】中国メーカーの台頭……縮まる日本メーカーとの差

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2月に開催された「MWC 2011」におけるZTEのブース
  • 2月に開催された「MWC 2011」におけるZTEのブース
  • 2月に開催された「MWC 2011」におけるHuaweiのブース
  • Android 2.3搭載「Skate 4.3」
  • Android 2.3搭載「Skate 4.3」
  • 「004HW」
  • Pocket WiFi S
 1月の「2011 International CES」(米・ラスベガス)、2月の「Mobile World Congress」(スペイン・バルセロナ)、3月の「CTIA WIRELESS」(米・オーランド)と、毎年第1四半期には携帯電話端末業界に関連の深い展示会が相次いで開催される。世界的な注目を集めた代表的なスマートフォンを挙げるとすれば、Sony Ericssonの「Xperia arc」、Motorolaの「ATRIX 4G」、Samsungの「GALAXY SII」、LGの「Optimus 3D」、HTCの「EVO 3D」といったところだろうか。そして、各社のAndroid 3.0搭載タブレットも盛り上がりを見せている。いずれも最新のAndroid OS、大型・高解像度のディスプレイ、そして高速なプロセッサを搭載するハイスペックなモデルとなっている。

 これらの機種は欧米や、香港、韓国、台湾といったアジアの“携帯電話先進国”でハイエンド機種として販売されること間違いないだろう(各市場にあわせ通信方式を変更した別機種になる可能性はあるが)。また、一部の機種はXperia arcのように日本市場にも入ってくるだろう。

■よりハイエンドな端末を手掛けだした中国メーカー

 一方、いまのところ大きく目立ってはいないものの、ここでも気になる存在になりつつあるのが中国ベンダーだ。例えば、従来日本市場ではデータ通信モデムやモバイルルーターで知られていたHuaweiだが、グローバルモデルとしては4.1インチワイドVGAの液晶ディスプレイやSnapdragon 1GHzを搭載したスマートフォン「IDEOS X6」を用意している。この商品名での発売はこれからだが、既に一部の携帯電話事業者向けにはOEM提供が始まっているという情報もある。

 また、昨年の年間端末出荷台数で世界4位(米IDC調査)に躍進したZTEも、同社のハイエンド機種「Style S」を今年半ばに出荷すると見られている。プロセッサこそSnapdragonよりワンラング下のモデルを採用しているようだが、4.3インチワイドVGAの大型ディスプレイ、そしてAndroid 2.3を搭載する。

 これまでも中国ベンダーからたくさんのAndroid搭載機が発売(ほとんどはOEM提供)されていたが、その多くは小型でハーフVGA程度の解像度で、プロセッサ等の性能にも特筆すべき点はない製品だった。しかし、昨年末から最近にかけて発表された機種を見ていると、世界の大手メーカーとも肩を並べるクラスの性能の製品が出始めている。

■ワンセグやおサイフ機能などは必ずしも必要ではない

 この動きは、日本市場にとってどのような意味を持つのだろうか。かつての海外ベンダー端末は、日本に特有の無数の要求事項に応えきることが難しく、一部を除いては機能やブランドなどの付加価値要素よりも価格の安さが売り物とされ、携帯電話自体にこだわりのないユーザーや、大量導入を行う法人などによって選ばれる傾向にあった。

 しかし、スマートフォンの時代になって状況は一変した。それが最も顕著に表れているのは、NTTドコモから発売された「GALAXY S」が好調なことだろう。確かに、製造元のSamsungはこの機種を日本に投入するにあたり、国内向けに周到な準備を行っており、例えば発売時からspモードに対応するなど、決して簡単ではないカスタマイズを加えている。しかしハードウェアとしてはグローバルモデルとほぼ同一であり、ワンセグ、おサイフケータイ、赤外線通信といった機能は搭載していない。アーリーアダプター層はともかく、一般層に受け入れられる製品となるためにはこのような日本独自機能への対応は必須と考えられていたが、実際の売れ行きを見ると、必ずしもそうではなかった。画面表示の美しさや操作のサクサク感は、一般層にとっても魅力的なポイントとなった。もちろん、ワンセグなどには根強い需要があるが、今の日本市場はそれらを持たない機種であっても対等に戦える環境になったと言うことができるだろう。

 そのタイミングで中国ベンダーの機種が高性能化しているということは、少なくとも国内の端末メーカーにとって一定の競合となる可能性があるということである。イー・モバイルの「Pocket WiFi S」に続いてソフトバンクモバイルがHuaweiのAndroid機「004HW」を発売するが、現在ローエンドからミドルクラスの機種にとどまっている国内市場での採用が、今後ハイエンド機にも広がっていくことは十分考えられる。(中国ベンダーの課題は端末自体というよりも、日本国内でのマーケティング活動やサポート体制のさらなる強化にあると言えるかもしれない。)

■日本メーカーによる海外進出への壁

 そして、国内の端末メーカーにとっては、海外進出の場面において彼らが真のライバルとなる。日本の市場規模に限界の見えた昨今、国内各社ともスマートフォンを軸とした端末事業の海外展開を課題としているが、まだこれからという段階だ。しかし、ローコストモデルだけでなくハイエンド機にも中国勢が触手を伸ばしてくると、いかに拡大を続ける世界のスマートフォン市場とはいえ、“残りのパイ”はますます小さくなることが懸念される。

 今年のMobile World Congressでは、QualcommやNVIDIAなどがスマートフォン向けプロセッサのロードマップを相次いで発表しているが、今後さらに優れたパフォーマンスを持つハードウェアが続々と登場してくることも、中国勢にとって追い風になるだろう。PCの場合ローエンドのネットブックとゲーマー向けのハイスペック機を比べると価格差が数十万円にもおよぶことがあるが、スマートフォンの場合そこまでの価格差が生まれるほどボトムとトップの差は大きくない。性能の良いチップセットがより手頃な価格で調達できるようになれば、先発メーカーとのスペック上の距離は相対的に小さくなるだろう。

 さらに言えば、今年市場が急拡大すると予想されているタブレットは、なおさら厳しい競争になることが予想される。なぜなら、本体のサイズに制限のあるスマートフォンにおいては日本の電機メーカーが長年得意としてきた「軽薄短小」の設計・実装技術をアドバンテージとして生かせる余地がまだあると考えられるが、タブレットはスマートフォンに比べ筐体の大きさそのものに余裕があるため参入障壁は低い。Android 3.0(Honeycomb)の登場によってソフトウェア面での性能や使い勝手も大きく改善されており、ますます多くのベンダーがこの市場に入ってくることだろう。

 海外の展示会などで中国のベンダーが製作したAndroid端末の試作機を見ていると、確かにまだ「なんちゃってスマートフォン」の域を出ない粗雑な作りの製品は見受けられるが、中には大手メーカーの製品だと言われても不思議でないものもあり、それは決して少なくはない。海外のスマートフォンメーカーというとAppleやSamsungなどが真っ先に挙げられるが、その次に控える中国勢の動きにも注目すべきであり、日本メーカーにとってその攻略は「今後」ではなく「喫緊」の課題と言えるだろう。
《日高彰》

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