【連載・日高彰のスマートフォン事情】もはや端末争いではないスマートフォン競争 | RBB TODAY

【連載・日高彰のスマートフォン事情】もはや端末争いではないスマートフォン競争

IT・デジタル モバイル

「CES 2011」の会場風景
  • 「CES 2011」の会場風景
  • 標準搭載アプリの構成は比較的シンプル。HDMI接続でテレビに接続することも可能
  • 最新のAndroid 2.3を搭載
  • 背面には「Exmor R for mobile」採用の810万画素カメラを搭載
  • 上下から中央に向かって薄くなる円弧状の背面デザイン
  • CES 2011にて、サムスンが展示した「SMART TV」は、ネット接続機能やアプリの事項環境などを搭載したインターネット対応テレビ
 1月6日~9日に米ラスベガスで開催されたConsumer Electronics Show(CES)。従来はオーディオビジュアルの分野が中心の展示会だったが、ここ数年の間で急速に存在感を増したのが携帯端末だ。今回も各社がスマートフォンの戦略的な新機種を多数投入してきた。

 日本のユーザーにとって最も気になる製品は、ソニーエリクソンが発表したAndroidスマートフォンの「Xperia arc」だろう。現時点で各国の市場でどのような商品展開が行われるのか明らかになっていないが、日本国内での販売自体は明言されており、順調に行けば現在の「Xperia SO-01B」の後継機種として、この春にも発売されるのではないかと期待できる。

■より“スピード感”を増した新型Xperia

 従来のXperiaとXperia arcを比較して、改善された点を端的に挙げるならば、2つの意味での“スピード感”だろう。

 まずひとつは、本体のパフォーマンスという意味での“スピード感”である。2010年のCESでは同社初のAndroidスマートフォンとしてXperiaが展示されていたが、商品版と比べると明らかにソフトウェアの成熟度が低く、正直な言い方をすれば、常用するには厳しいと感じるほどユーザーインターフェースの動作速度は緩慢なものだった。しかし結果としては、発売時までにパフォーマンスは大幅に改善し、日本でも一時iPhoneをしのぐほどの人気モデルとなり、CES会場での不安は杞憂に終わった。しかし、「Xperia=キビキビとして軽快なスマートフォン」というイメージで語られることは少なかったように思う。一方で今回のXperia arcでは、初お披露目の段階にもかからわず、このまま発売してもおかしくない完成度で登場したという印象だ(参照:CES 2011の該当記事)

 もうひとつ注目したいのは、発表されたばかりのAndroid 2.3を他社に先駆けて早くも採用したという点だ。現行Xperiaの場合、昨年4月の発売時にはAndorid 1.6で登場し、2.1へのアップデートは約半年後の11月、マルチタッチへの対応は今年に入ってからというスケジュールだったが、Xperia arcでは他社に先駆けて最新バージョンの2.3を搭載。現状、Android 2.3を搭載して発売されたスマートフォンはGoogleの「Nexus S」のみだが、これは一般消費者に向けて広く販売されるものというより、開発コミュニティやアーリーアダプターに向けたリファレンス機という性質が強い製品だ。コンシューマー市場で本格展開される製品としては、Xperia arcが初のAndroid 2.3マシンという見方もできる。つまり、技術トレンドをいち早くキャッチアップしようというSony Ericssonの意志がはっきり感じられるという意味で、従来に比べ極めて“スピード感”のある製品と言える。

 加えて、ソニーの持つ技術資産を生かした要素として、高画質化エンジンの「Mobile BRAVIA Engine」や、高感度低ノイズのCMOSセンサー「Exmor R for mobile」を搭載するなど、ライバルメーカーがすぐには追随できない差別化要素を用意している。これまでのIT機器市場を振り返ると、独自の高度な差別化要素を搭載するものの、それにこだわるあまり性能や使い勝手がむしろ低下したり、技術トレンドから取り残されたりして、市場から消えていった商品はあまたある。しかし、今回のXperia arcを見ると、ベースの部分としては比較的プレーンなAndroid機として仕上げつつ、先に挙げたような高度な独自要素や、良い意味での「軽薄短小」なものづくりをそつなく融合させてきた。Androidというプラットフォームが持つ価値を損なわない形で、他社がなかなか真似できない製品を作り上げたという点で、発売後の推移が楽しみなアイテムである。

■端末の枠を超えたスマートフォン競争

 一方、スマートフォンに勝るとも劣らぬ勢いで、今回のCESにおける台風の目となった製品カテゴリが、言うまでもなくタブレットとインターネット接続型テレビである。個別の新製品についてはニュース記事で振り返っていただければと思うが、今回改めて感じたのは、スマートフォン、タブレット、そしてテレビという3つの機器はスクリーンサイズこそ異なっているが、もはやアーキテクチャには本質的な差がない商品になりつつあるということだ。

 いずれもAndroid OSや同等の機能を持つソフトウェアを搭載し、インターネット上のWebページや動画コンテンツの表示に対応。ユーザーが好きなコンテンツやアプリを自由に選んで購入・追加できる。スマートフォンやタブレットと同じようにテレビの上でもさまざまなアプリを利用する時代が本当に訪れるかどうかはわからないが、例えば、番組とそれに関するツイートを同時に見られるテレビなどは、一度使ってみたいと思う人も多いだろう。また、これらの情報機器がさらに普及すれば、タブレット上で購入した映画をテレビで再生するといったように、機器をまたいでコンテンツやアプリを利用したいというニーズが高まるのは必至だ。

 この年末年始、日本市場では多数のスマートフォン新機種が発売され、好調な売れ行きを見せている。新機種発売のニュースや機種別のランキングなどを見ていると、人気なのはiPhoneかそれともAndroidか、あるいはどのキャリアが加入者数を集めているかといった点がどうしても気になってしまうが、あくまでそれは携帯電話業界内の話である。

 しかし今回のCESを見れば、パソコン、携帯電話、タブレット、AVといった情報機器と、Webコンテンツ、アプリ、ソーシャル系サービス、電子書籍といったさまざまなソフトとの対応関係がいったんバラバラになり、そして再構成されようとしているのは明らかだ。昨今の世界的なスマートフォンブームは、デバイスとコンテンツを取り巻くこのような大きなうねりが目に見える形で表出した一現象に過ぎない。

 もちろん携帯電話である以上、電話機として使いやすい商品でなければならないのは当然だが、スマートフォンを携帯電話の一カテゴリに過ぎないものとしてとらえてしまうと、おそらく近い将来、“ガラパゴス”などと揶揄される状況が日本市場を再び襲うだろう。さまざまな機器を接続して連携動作させることは、技術的には日本の総合家電メーカーが本来得意とするところのはずなのだが、それをプラットフォームやサービスとして展開する段になると、うまくいっていないことが多い。事業者やベンダーの都合でスマートフォンを携帯電話というカテゴリに閉じ込めるのではなく、その枠を超えてユーザーから真に求められる機能やサービス(おそらく、その手本となるのはAppleや任天堂だろう)を提供できるかがガラパゴス脱却のカギになる。

 今年は、各社が投入するスマートフォンの性能や品質がぐっと向上する年になると考えられる。しかし、本当の戦いは端末自体よりも、むしろデジタル機器やコンテンツ市場の向こう数年を見据えた、スマートフォンの先に広がる新しい世界を提示できるかという部分で起こっているのではないだろうか。
《日高彰》

関連ニュース

特集

page top