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【連載・日高彰のスマートフォン事情】各社Androidスマートフォン投入も、依然として「ガラパゴス」は変わらず

IT・デジタル スマートフォン
10月に発表されたKDDIの新ラインアップ
  • 10月に発表されたKDDIの新ラインアップ
  • 「IS03」
  • GALAXY S
  • 「LYNX 3D SH-03C」Pure White
  • Desire HD
 この冬から春にかけて発売される、携帯電話大手3社の新機種が出揃った。言うまでもなく、各社揃って年末商戦の主力としているのはスマートフォンである。また、これまでのスマートフォンではほとんどサポートされてこなかった、おサイフケータイやワンセグといった日本特有の機能・サービスに対応する機種が出てきたのも大きなトピックだ。

 各社・各機種の個別的な違いはともかく、今回登場した機種全体を眺めると、同じAndroid搭載スマートフォンとはいえ、国内外のメーカーで大きく戦略が異なっていることがわかる。国内メーカーは、先に挙げた日本独自のサービスを含む、ほかにはない付加価値を売り物にしている。一方海外メーカーは、日本市場向けのカスタマイズは比較的小規模にとどめ、世界共通機種のいわば「量産効果」により、コストパフォーマンスや開発スピードの速さを武器にしている。

 各社とも、ユーザーの需要は国内モデル・グローバルモデルの両方に対してあると判断しており、端末ラインナップは内外の2本立てで構成していく方針のようだ。ユーザーにとってみれば、選択肢が大いに越したことはないので、喜ばしいことである。

 一方、国内の端末メーカーにとっては、ようやく本格的なAndroid市場参入を果たせたものの、引き続き厳しい戦いが続きそうだ。

 ドコモやauからも“iPhoneのような携帯”=Androidスマートフォンが登場してきたことで、家電量販店の店頭では販売員に次のような質問をしている人をよく見かけるようになった。

 「これ(Android機)はiPhoneとは何が違うんですか?」

 そこで真っ先に返ってくることの多い答えが「Flashに対応しているので、iPhoneよりたくさんのWebサイトが見られます」というものだ。確かに、発売以来ユーザーからの要望は多いもののアップルが頑なに拒んでいるのが、iPhoneのFlash対応である。Flashが再生できないとトップページから移動すらできないWebサイトも未だ少なくないが、そのようなサイトでも見られるのはAndroidの大きなメリットだ。

 しかし、そうは言っても現状販売されているAndroid機の中で、発売当初からPC版のFlash Playerに相当するFlash 10.1に対応しているのは「GALAXY S」「Desire HD」くらい(年末までにソフトバンクから「GALAPAGOS」「Streak」が登場見込み)で、その他の機種はアップデートでの対応か、サブセットのFlash Liteでの対応か、あるいはFlash自体に非対応となっている。Flash 10.1の利用にはAndroidのバージョンが最新の2.2である必要があるため、Android 2.1の機種ではOSアップデートまでフルバージョンのFlashはお預けとなる。Flash Liteでも一応表示はできるコンテンツもあるが、再生の品質やスムーズさには歴然とした差があり、特に最近需要の大きい動画コンテンツの再生にはFlash 10.1が必須と言って差し支えない。

 FlashというiPhone対抗の最大の武器が、OSのバージョンの都合で満足に利用できないのであっては、せっかくのAndroidの魅力も半減である。

 しかし、この冬にドコモとauから登場する国産Android機は、いずれもAndroid 2.1を搭載している。今後のAndroid 2.2へのアップデートは確約されているが、ドコモの「LYNX 3D SH-03C」は来年春ごろ、auの「IS03」は時期未定と、いつになったら2.2が利用出来るようになるのかははっきりしない。

 気になるのは、両社とも「自社ならではの付加価値による差別化」の戦略を強調していることだ。スマートフォンの世界では各社から同じような機種が登場するため、カスタマイズを加えて「自社モデル」に仕立てようというわけだが、当然のことながら独自仕様が追加されて「素のAndroid」から離れれば離れるほど、OSアップデーターの開発にも時間がかかる。国産Android機の2.2アップデート時期がなかなか確定しないのも、独自の作り込み部分が大きいことが理由のひとつになっているであろうことは想像に難くない。おそらく、それらの機種が2.2になるころには、世界では次のバージョンのAndroid端末が既に登場していることだろう。

 もちろん、スマートフォンユーザーの裾野を広げるためにおサイフ・ワンセグ対応が必要という理屈は理解できる。しかし、予約だけで5万台に達したというドコモの「GALAXY S」は、おサイフケータイもワンセグも赤外線通信も対応していない。日本独自の機能やサービスよりも、美しい画面やシンプルでスリムなデザイン、軽快な操作感、そしてフルバージョンのFlashといった特徴に魅了された人々も少なくないということだろう。これまで繰り返されてきた「おサイフがないからスマートフォンは売れない」といった言い訳も、どこまで正しかったのか疑問が残る。

 冒頭述べた通り、ユーザーにとっては選択肢が増えてメリットのある状況だが、メーカーはどうか。海外勢のグローバルモデルとの正面対決ではコスト面で対抗することができない以上、現状ではキャリア仕様に応じることによる差別化の道しかないかもしれないが、いつまでもそれだけでは、世界の最新ロードマップに追いつくことはできないし、従来型の携帯電話で経験したガラパゴスの袋小路にはまり込むだけである。しかも、SamsungやLGといったメーカーは、日本のガラパゴス機能を自社製品に搭載するノウハウをここ数年で確実に蓄積してきた。今はグローバルの価値を日本市場へ持ち込む戦略をとっているが、彼らの経営判断次第ではスマートフォンでも国内メーカーと正面対決を挑んでくる可能性がないとは言えない。

 国内機能をサポートしつつも、世界の趨勢を十分なスピードでフォローできないことには、本当の成功は得られないだろう。未来を見越したそれだけの開発投資ができるか、日本企業の本気度が問われている。
《日高彰》
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