【第20回東京国際映画祭】クロージングセレモニー〜各賞の行方は!?(前編) | RBB TODAY
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【第20回東京国際映画祭】クロージングセレモニー〜各賞の行方は!?(前編)

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トロフィーを受け取るデヴィッド・パットナム卿
  • トロフィーを受け取るデヴィッド・パットナム卿
  • 喜びを語るデヴィッド・パットナム卿
  • 森岡利行監督
  • 若松孝二監督
  • アルミン・フォルカース監督と「リーロイ!」出演者
 10月28日、第20回東京国際映画祭の各賞の表彰を含むクロージングセレモニーが渋谷Bunkamuraオーチャードホールで行われた。司会はオープニングセレモニーでもお馴染みのジョン・カビラと久保純子。

 まずは、日本が誇る亡き黒澤明監督の功績を称え、才能あふれる監督または映画製作者に授与される黒澤明賞の表彰が行われた。同賞審査委員長の品田雄吉氏より告げられた第4回となる今年の受賞者は、第1回東京国際映画祭で審査員長を務めたデヴィッド・パットナム卿。日本で大ヒットした「小さな恋のメロディ」や「炎のランナー」をはじめ数々の作品を手がけてきたイギリス出身の世界的プロデューサーだが、現在は映画界から退き、“ロード”の称号を持つ上院議員であり、ユニセフの活動に尽力し、地球温暖化問題にも取り組んでいる。

 「黒澤さんは映画の巨人」と称え、受賞の喜びを口にしたパットナム卿は、最初で最後となった出会いのエピソードも披露した。尊敬する“先生”石田達郎氏(第1回東京国際映画祭ゼネラルプロデューサー)の葬儀の席で隣りに座った黒澤監督のサインがどうしても欲しくて、後ろの席の女性から口紅を借りてハンカチにサインしてもらい、そのハンカチは額縁に入れて自宅に飾ってあるのだと。

 また、若い映画作家に向けて、どんなに厳しい状況にあっても、局面を打開する力が映画にはあるのだとの思いを込め、ローマ帝国の五賢帝のひとりマルクス・アウレリウスの言葉をアレンジして「もし、真実でないなら、どうか、どうか口にしないでほしい。もし、自分が口にしようとしたことが正しいと信じられないのなら、そんな映画はつくらないでほしい」とメッセージを送った。

 続いて、日本映画・ある視点部門各賞の受賞者が審査委員長でバラエティ・ジャパン編集長の関口裕子氏から発表された。特別賞には「子猫の涙」の森岡利行監督が選ばれ、審査員で映画監督の篠崎誠氏から賞状と賞金が授与された。「メキシコオリンピックのボクシングで銅メダルを獲った叔父が、その後、京セラの株券偽造で逮捕されまして、北野武監督がそれにコメントしてくれたことに触発されて書いた」初めての脚本であり、企画の段階で10年が経過、04年に日本エンジェル大賞を受賞したことで映画化が実現し今回の受賞に至ったと明かす森岡監督。「選んでいただいた審査員の皆さん、観てくれた観客の皆さん、映画に関わった関係者の皆さん、ほんとにありがとうごございました」と感謝の言葉を口にした。

 作品賞には、「実録・連合赤軍—あさま山荘への道」が選ばれ、審査員でフェスティバル・ディレクターのマリオン・クロムファス氏から若松孝二監督に賞状と賞金が贈られた。「72年の2月に日本の90%の人がテレビに釘付けになった事件」を映画化した若松監督は、「映画に時効はない」ので、50年たっても100年たっても、あの若者たちはなぜあの事件を起こしたのか、真実は何かを残したかったから作った映画であり、また、「苛酷な状況でスタッフと俳優さんが耐えてくれたことにこの場を借りて感謝したい」と述べた。

 次にアジアの風部門の審査委員長で映画評論家の上野昂志氏が最優秀アジア映画賞を発表した。受賞したのはイエンイエン・ウー&コリン・ゴー監督作品「シンガポール・ドリーム」。審査員で映画監督の奥原浩志氏より賞状及び賞金が、加えて渋谷区長賞の賞状と盾が作品関係者の代理としてシンガポール大使館一等書記官に授与された。

 中東から南アジア、さらに東アジアまで全域にわたって様々な作品が寄せられた今年の総評として、上野氏は「作品の背景になっている国や文化の多様性がどれを観ても示されていて、非常に多くのものを学んだ」と、全体に豊かな内容の作品が揃ったことを評価した。さらに表現も背景も多様な中に、ある種の普遍的な共通性を見出し、夫婦、親子、兄弟という家族を扱った作品が非常に多く、中でも、女性の視点から描いたものが多かったと指摘した。それはアジアだけでなく、世界的な映画の傾向であり、その中で「シンガポール・ドリーム」はそれぞれの個性、抱えている問題を非常によく描いていたと述べた。また、スペシャル・メンションとして、ビデオで撮影され、都会に生きる家族が見事に描かれている、ディーパク・クマーラン・メーナン監督のマレーシア映画「ダンシング・ベル」を挙げ、加えて、もし主演女優賞のカテゴリーがあれば「さくらんぼ 母の愛」のミャオ・プゥに授与したいと述べ、「来年に向かってさらに、より豊かなアジアの風を吹かせてくれることを期待して、今回出品された監督・出演者の皆さんに心からお礼を申し上げたい」と結んだ。

 続いて、六本木ヒルズですでに発表されたコンペティション部門観客賞受賞のドイツ映画「リーロイ!」のアルミン・フォルカース監督、主演俳優のアライン・モレル、プロデューサーのオリファー・シュトルツ夫妻、ヤン・クルーガーが登壇し、代表してフォルカース監督が「驚いているのと同時に、たいへん名誉に思っています。予想もしていなかった賞ですから。ドイツに帰国して、恋しく思うのは日本の方々のことだと思います。来日して10日間、これほど優しく温かくされたのは初めての経験です。ほんとうにありがとうございました!」と喜びと感謝の気持ちを述べた。(photo by 稲葉九)
《齊田安起子》
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