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【「エンジニア生活」新連載・技術人 Vol.3】MID開発プラットフォームを手がけるエンジニア――ソフィアシステムズ・小池輝氏

ソフィアシステムズ開発本部モバイルソリューション開発部グループリーダー・小池輝氏
ソフィアシステムズ開発本部モバイルソリューション開発部グループリーダー・小池輝氏
 「『エンジニアを支援する仕事』にやりがいと責任の重さを感じています」。ソフィアシステムズ開発本部モバイルソリューション部で、モバイル機器の開発プラットフォームの研究に取り組むグループリーダー・小池輝氏。小池氏が勤務するソフィアシステムズ(神奈川県川崎市)は、1975年創業当時から、マイコンの組み込み機器向けのエミュレータ(開発支援装置)の開発・製造を主力事業としている会社だ。UMPC(ウルトラ・モバイル・パソコン)やMID(モバイル・インターネット・デバイス)、携帯情報端末/IP電話向けの開発プラットフォーム、評価ボード受託開発、機構設計、OSポーティング、高性能デバッカの供給、さらにプロジェクトのコンサルティング業務も行っている。主力のエミュレータは、組み込みメーカーが(実機に搭載前の)製品評価に使う装置。IBM、インテル、NEC、東芝、富士通、ルネサステクノロジなど顧客は幅広い。

 小池氏が研究する開発プラットフォームとは、エンジニアのモバイル機器に組み込むソフト・ハードウェアの評価だけでなく、実機を使ったデモが可能な製品。いわば「開発製品のデモ機」である。それを使用することで、開発の時間とコストの大幅な軽減につながる。つまり、冒頭のエンジニアを支援する仕事とはこれを指しているのである。

■エンジニアとしてのやりがいを見つける

 1996年3月、大学院を卒業した小池氏はソフィアシステムズに入社した。どうして同社を選んだのか。「理科系に進んだらエンジニアを目指す。そんな当たり前の感覚で、具体的に何を研究したいということもなく、漠然と入社しました」と正直に答える。大学院時代はロボット工学が研究テーマであり、確かに同社の事業とは異なる。入社してからは同社が当時から力を入れていたモバイル機器向けのマイコンのエミュレータの開発部に配属された。「開発ができる」と思ったが、上司が作ったエミュレータの検査をする仕事を黙々とこなしていた。だが、「2000年ごろから、研修期間にやっていた顧客エンジニアさんのところへ行き、製品ニーズやクレームを直接聞くことで、開発部や自分の取り組むべき仕事の目標が分かっていったのです。それがやりがいにつながっていきました」という。

■インテルのAtom搭載機に挑む

 2006年には、携帯情報端末/IP電話向け開発プラットフォーム「Sandgate」シリーズを手がけるなど、着実に実績を積み重ねていった。入社11年目で現在のモバイルソリューション部グループリーダーの肩書を得る。その直後、インテルの大きな案件が飛び込んできた。

 今年4月2日、インテルはモバイル機器向けのCPU「Atom」を正式発表した。ひと言で特徴をいえば、低消費電力で高性能なCPU。今後、急成長が見込まれるUMPC、MIDのマーケットを狙って開発されたものだ。Atom搭載モバイル機器はPCアーキテクチャーを採用しているため、ブラウザ、オーディオ、ビデオなどさまざまなアプリケーションを使用できる。

 同CPUの正式発表の1年前に、その開発プラットフォームを作り出すという大きなテーマが課せられたわけだが、「こうした多機能モバイル機器を実現するにはたくさん部品を組み込まなければならない。機能を入れ込んだ時に部品を配置していくと、大きさが決まってきます。今回の場合は回路をひいただけではなくて部品を削ったりと調整するのが大変でした。特に今回の製品は密度が濃かったほうですね」「今回はPCのアーキテクチャーに近かったので、USBとかがたくさんついてました。I/Oポートをいじるとかというよりも、その先に制御用のデバイスを置いたりなど工夫しないとやりにくいところはありました」と話す。

 また、ひと昔前では1年かけて製品を開発するというメーカーのサイクルも、今では開発期間も半分に短縮されている。そんな時代において、これからMIDを販売していきたいというメーカーのエンジニアには重宝される製品だ。小池氏によると回路も部品の置き換えができるように設計されているという。

 同社ではインテルのAtom発表と同時に開発プラットフォームのリリースを計画していた。タイトルは「インテルベースのMobile Internet Devices/携帯情報端末向け開発プラットフォーム『PEARTREE』(ペアツリー)を発表」。インタビュー中、モックアップではあったが、グリーンの特徴的なきょう体を手にしながら、小池氏は「インテルをはじめ、モバイルメーカーのエンジニアさんたちの期待に応えられると思います。努力した甲斐がありました」と振り返った。同デモ機はUMPC、MID、携帯情報端末向けの組み込みソフト・ハードの開発に必要な基本機能を標準装備。組み込みモバイルの完成を待たずにソフト評価ができるので、製品化までの期間を大幅に短縮可能だ。

 本体部の仕様は、OSにLinux、CPUはAtom(1.6GHz)で、メモリは1GB、ストレージはSSD4GB。ディスプレイは5型液晶で解像度は1024×600ピクセルだ。無線LAN機能はIEEE802.11b/g。Bluetoothも搭載する。そのほか、ワンセグテレビ/カメラモジュールなどを装備する。サイズは151×94×28.5mm。また、本体背面に着脱可能な拡張ユニットを用意。100BASE-TのLAN、GPS、USB、Debugポートなどを搭載。ストレージはHDD40GBだ。

左が「PEARTREE」のモックアップ、右のふたつが携帯情報端末/IP電話向け開発プラットフォーム「Sandgate」シリーズ
左が「PEARTREE」のモックアップ、右のふたつが携帯情報端末/IP電話向け開発プラットフォーム「Sandgate」シリーズ

 「(開発期間の短縮の原因については)製品開発については先にアイデア、企画がありきという面がありますが、現在はその企画が盛り上がってから冷めるまでの時間が非常に早いです。いかに企画がフィットしそうな時期に商品を投入できるかという話になったときに、3年後の企画を考えるのは難しいですよね。だから短期間で製品を開発して市場に出していかなければいけないんです」。目の前に置かれた開発プラットフォームを眺めながら、小池氏は振り返った。

■エンジニアは夢を持て

 現在の小池氏は前述のようにグループリーダーの肩書を持つ。だから、純粋に自分の研究テーマに没頭しているだけではいけない。「プロジェクトの進捗状況の管理、新しい案件の創出、そして、後輩たちを育てなければなりません」。小池氏は若きエンジニアたちをどう見ているのか。「みんなよくがんばっていますよ。ただ、私たちの世代とはちょっと考え方がちがうなぁと感じます」とのこと。「先輩や同世代エンジニアの中には、隠れて研究を進めている人がよくいましたよ。あっと驚くような成果をいきなり出してくるような」。それに対して、「若いエンジニアでよく見かけるのは、結果をすぐ求める人。結果はなかなか見えてこないが、夢がある研究にはあまり興味がないようです。現実主義ですよね」と説明。

 小池氏の仕事はエンジニアを相手にしている分、最先端の仕事を手掛けていると言える。本人は「確かに先端をいってるんですが、意外といろいろな分野に応用できる新しいものを作ってみたいなと思ってますよ」というように、マイコン関連以外のジャンルにも目を向けるとともに、最新の技術に触れながら新しい開発環境やリファレンスボードを今後も手掛けていきたいと夢を語る。
 
 早ければ、年末にもAtom搭載モバイル機器が登場するといわれている。それらの中には小池氏の開発プラットフォームが役立った製品があるという。

 4月18日の「組み込みプロセッサ&プラットホーム・ワークショップ2008」(秋葉原コンベンションホール)と、6月5日、6日にインテックス大阪で開催される組込み専門技術展「ET West 2008」に「PEARTREE」が出展される。
(羽石竜示@RBB 2008年4月18日 12:50)
キーワード: Atom インテル 開発プラットフォーム エンジニア


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Atom
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