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【コラム】あえて、ミクシィ方式を擁護してみる
3日、ミクシィが4月1日からの利用規約改定についてアナウンスを行い、日記等の著作権の扱いについて論争が起きている。すぐさま一般ユーザーからIT系報道媒体から問い合わせが殺到した模様で、5日付けのお知らせでは、条文の見直し示唆する案内が出されており、事態は沈静化しつつあるが、このミクシィが改定しようとした利用規約案を別の角度から考察してみたい。なぜなら、現行の著作権がネットワークテクノロジーやメディアに整合しないという問題のひとつの対応を示唆していると思えたからだ。
その前に、この騒動の概要を整理してみよう。3月3日、ミクシィが利用規約の改定を発表した。問題になったのは第18条で、日記等のコンテンツに対する著作権の適用や考え方を明記したものだ。それによるとユーザーの投稿したコンテンツについて、複製や翻案を含む著作権、著作隣接権などを無償、非独占でミクシィに許諾し、人格権を行使しないとするとした。これに対して多数の問い合わせや非難が起こったわけだ。その後、この条文の目的はサーバー上の管理がユーザーの著作物の著作権を侵害することにならないようにするためのものだと説明したが、納得するユーザーは少なかったようだ。もし、サーバ上でのキャッシュの複製や分散管理、フォーマット変更をするなら、著作権など持ち出さずそのように明記すればいいではないか、と。
同時に、日記内容を無断で書籍化したりする意図はないとも説明していたが、条文に明記されている以上、それをされても文句はいえないではないか、という反論もあった。ダウンロード違法化やフィルタリング問題が、主旨はそうではないとしてもネットの自由を侵す可能性を増やしてしまうということと同じだ。
ここで、常識的に考えてみよう。まず人格権だ。人格権とは、著作財産権とは切り離して存在し、その著作物の内容やだれが作者だという情報に人格を持たせ尊重しようというものだ。たとえば、シェイクスピアの作品について著作権が消失しているものの複製で商売をしているからといって、リア王は私の著作だ、とだれも主張することはできないということだ。ここまで極端な例でなくても、一般的には、著作者が望まない改変や利用を制限できるように運用されている。人格権の扱いにおいては、現実の契約で人格権を行使しないという制限条項は珍しいものではない。しかし、「ヒコにゃん」の例にあるように原著者が問題視するような行為は、許諾を受けた側でも(その制限条項によって)免責であるというコンセンサスはまだ成立していないといえる。したがって、ミクシィがこの条項をたてに、いやがる著作者を無視して好き勝手なことが現実的に可能かというと疑問が残る。18条の人格権条項は有名無実という判断も不可能ではない。
次に複製や翻訳の無断使用についてだ。この手の条項を、著作権等の扱いに慣れた人ならどういう使い方や意図があると判断するかというと、一番可能性があるのは、そのコンテンツを書籍や映画など商品化するとき、ミクシィにも権利があるからね、という担保としての意図が考えられる。クローズドなコミュニティでやりとりされたメッセージや日記、ブログ的な内容を、場を提供しているからという理由で無断で商品化して利益を上げれることが社会的、同義的に許されるかどうか。普通に考えればあまり賢いやり方ではないことくらい誰でも理解できるだろう。これは無断で使えるようにする条項というより、お金になりそうだったら、ウチも権利者だから排除しないでほしいという主張ができるようにしたもの、という解釈のほうが妥当ではないだろうか。
もちろん、ミクシィとしての公式見解は「お知らせ」ページにあるとおりなので、これはあくまで記者個人の解釈であることを断っておく。ミクシィの立場は、日記を負荷分散や管理のために複製したりできるようするためだとしている。ところで、だとしたら、これは別の問題を含んでいるかもしれないと思っている。SNSの日記やメッセージその他は、クローズドなコミュニティでの私信や通信であって、その内容についてはあくまで当事者の権利と責任で行われるもののはずだ。であれば、その内容に運営者が積極的にかかわろうということは、同時にコンテンツに対する責任も発生するということになってもおかしくない。通常のプロバイダや通信事業者であれば、それはむしろ避けたいはずだ。もし、ミクシィがそこまで考えているとしたら、ミクシィはおそらくSNSやコミュニティといったカテゴリではくくれない存在を認識しつつあるということだ。ユーザー数1,000万人を突破するミクシィはもはやSNSではなく、メディアであり一定の公共性さえ持っている。現実に社会に与えている影響を考えると、それほど突飛な考え方でもないはずだ。ひょっとすると、ミクシィは、総務省などが進める放送と通信の融合政策が実現したときを見据えて、基本は広告モデルのサービスプロバイダから、ユーザーベースのコンテンツを使ったメディア事業者へ転換しようとしているのではないか、と思ってしまう。
さて、話をもとにもどそう。ミクシィの改定意図がどこにあろうと、提案された条文そのものはよく考えてみると、じつはユーザー側にも受け入れる余地があるのではないか、という話だ。先進的なネットユーザーは、,部分的にだが、著作権に否定的な意見も持っている。技術で可能なことを制限すべきでないとして、複雑な権利関係で縛られている現状の著作物をなんとかしてほしい。ネット上でのコピーや利用の制限をもっとゆるくすれば市場も活性化するし、権利者にもメリットがあるという話をよく見かける。JASRACのような権利団体や著作権が諸悪の根源という構図もわかりやすくユーザーにも受け入れられやすいのでありがちな意見だ。もし、そうであるならば、自らもそれを率先すべきではないだろうか。プロの著作や権利を開放させたいなら、自分らの著作やコンテンツも同様にすべきではないか。実際そういう主張をしている人もいる。ネット上のプロバイダがコンテンツでビジネスを行うのは、まさに市場の活性化のひとつである。もちろん無条件で利用させる必要はないが、ミクシィのような大規模なコミュニティや資本力のある企業体に自分のコンテンツを共有管理するという発想で、あの第18条を読んでみるわけだ。
JASRACを否定する人は少なくないが、分散している著作権や権利者の包括的窓口、エージェントとしてのJASRAC(のような組織)は、今後のネットビジネスではじつは有効なスキームともいえる。極端な例では、著作者の印税や使用料は国家が管理して税金(など)によってまかなうという発想もあるくらいだ。
著作権法が破綻しつつあるからといって、プロフェッショナルまでもオープンソース的発想やクリエイティブコモンズのような実利に程遠い概念に生活をゆだねなければならないならば、契約をしたがっている企業や媒体を、プロもノンプロも積極的に利用してもよいのではないかと思う。
(中尾真二@RBB 2008年3月6日 21:55)
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