サービス距離の拡大か既存ユーザの保護か —DSL作業班第4回 | RBB TODAY
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サービス距離の拡大か既存ユーザの保護か —DSL作業班第4回

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サービス距離の拡大か既存ユーザの保護か —DSL作業班第4回
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 DSLのスペクトル管理のありかたを検討する、情報通信審議会のDSL作業班の第4回会合が開かれた。

 周波数オーバーラップによる通信距離の拡大という消費者メリットを活かすためにも、現在のTTC標準JJ-100.01第1版のスペクトル管理標準を見直すべきだという意見が、通信事業者のソフトバンクBBやアッカ・ネットワークス、ReachDSLベンダのパラダインなどから出された。

 また、スペクトル管理の目的について、ソフトバンクBBから「(500万回線の)既存ユーザを守ってくれというのは論外。既存ユーザ保護をあたかもスペクトル管理の目的のように言うのはやめていただきたい」という意見も出された。

開会前のDSL作業班


 今回の会合ではソフトバンクBBから、干渉影響について実際に確認するために、どの会社のどのサービスが同一カッドに収容されているかをマッチングさせる手順についての提案などがおこなわれた。また、住友電気工業とソフトバンクBBからそれぞれオーバーラップ方式が他のDSLに与える影響が計算および実験で出されていたが、干渉発生時には、AnnexA系・AnnexC系に関わらず(「A.ex→C」も「C FBMsOL→A」も)、上り速度に影響を与えあうという結果が示された。

 現在のJJ-100.01第1版は、上り速度の保護を重視してか特性の良い低周波数域を上りに優先的に割り当てている。このため、遠距離で下り速度と上り速度が逆転したり、あるいは高い周波数帯域では通信できない遠隔地へもサービスできる規格(ReachDSLや各種オーバーラップ)が、JJ-100.01第1版の基準では不適合扱いとなっている。

 これに対しアッカ・ネットワークスは、フィールドデータなどをみながらJJ-100.01の上り保護基準について切り下げる方向で緩和すべきだとした。また、パラダインは「新規ユーザが増えないような保護はすべきではない」と、ReachDSLのような遠距離系DSLが制限をうけないよう求めた。また、ソフトバンクBBは「3000万世帯に高速インターネット接続を」というe-Japan構想を引き合いに、現時点の500万ユーザを保護することより、これからの2,500万世帯にリーチしていくことが重要と主張、遠距離に到達できるオーバーラップ技術やReachDSLこそが保護されるべきだと述べた。

 このほか、シミュレーションについても議論がおこなわれ、JJ-100.01第1版に基づくシミュレーション結果と、実際に出ている数字が大きく乖離している(計算ではAnnexA系サービスで遠距離の速度低下が起きるはずだが、ソフトバンクBBのフィールドデータでは影響が見られない、など)ことについて、参加者のあいだでも「何らかの形でシミュレーションは見直しが必要」という認識は共通してきたように見受けられた。ただ、現時点ではGlobeSpan Virata社(GSV)から提案されたベイジアンモデル以外には新たなシミュレーションモデルの提案はないという状態だ。

 ソフトバンクBBは「そもそもJJ-100.01ではシミュレーションにならない。ダメだ」という立場で一貫しており、フィールドデータで「出るはずの影響が出ていない」という主張を展開、補強のフィールドデータを次々出している。とりあえず同社自身は新しいシミュレーションモデルを提案していないが、GSVの提案にのる発言を第3回会合で孫社長が行っており、ベイジアンモデルの採用を求めるという立場のようだ。

 ただ、ベイジアンモデルは各サービスの普及予測の違いで影響の計算結果に差が出てくるといった要素があることから、そのまますんなりベイジアンモデルでいけるかというと、それも難しそうだ。

 いずれにせよ、フィールドに投入する前に影響をある程度予測するには適切なシミュレーションモデルが不可欠。インターネット接続回線がISDNだらけという状況で策定されたJJ-100.01第1版がISDNを重視していたのは当然であるが、これだけDSLの経験・ノウハウが蓄積された現在であれば、よりよいシミュレーションモデルが構築できるだろう。議論が建設的な方向に進むことを期待したい。
《RBB TODAY》
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