【インタビュー】APT及川直彦氏……データと直感、ビジネス実験という考え方 3ページ目 | RBB TODAY
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【インタビュー】APT及川直彦氏……データと直感、ビジネス実験という考え方

エンタープライズ その他
APT日本代表及川直彦氏
  • APT日本代表及川直彦氏
  • APT日本代表及川直彦氏
  • Test & Learn の“輪”
  • APTのクライアント例
--- 小売・リテール以外での応用はどうでしょうか。

及川代表:例えば実験対象を店舗ではなく顧客や従業員に置き換えれば、顧客の属性ごとの施策の実験や分析を行えます。企業内業務の場面では、トレーニングの効果を調べたり、人員の配置や、営業マンの顧客・取引先の訪問スケジュールについての分析にもTest & Learnを適用しています。例えば、ある会社では従業員のトレーニングを一律に実施していたところ、実験の結果、勤続4年以上の従業員への効果が認められず、トレーニングコストの削減ができたという事例があります。また、営業マンは、すべての店舗を等しく巡回するほうがいいのか、重点店舗の頻度を上げるほうがいいのか、といった問題に適用した事例もあります。製薬メーカーではMRのツールやコンテンツの効果を調べるという使い方もありました。

●意思決定のためのアイデアを提供

--- 最後に、ビジネス実験による意思決定というスタイルは、グローバルでどのように評価されているのでしょうか。

及川代表:欧米では、適切なテストとコントロールを設定すれば、従来型の回帰分析よりビジネス実験による分析のほうが精度が高い、という認識が一般的になりつつあります。

 APTとEIU(Economist Intelligence Unit: 英「エコノミスト」の調査部門)が共同で行った意思決定についての調査があります。『決定行動: ビジネスにおける意思決定方法とその改善』と題したこの調査では、54%が意志決定には「優れたデータ分析能力」が重要だと答え、22%が意思決定前の実験やトライアルは効果的であると答えています。そして、他社に比べて成長速度が速い企業の45%が、実験やトライアルによる予測を実践しているという結果もでています。成長速度が遅い企業では実験を行っている企業は10%しかありません。分析に携わったステファン・トムク教授(ハーバード・ビジネス・スクール)は、「実験は、これまで正確な予測が不可能だった問題を克服する有効な技法である」とし、失敗を恐れて実験を躊躇することは、潜在的なチャンスを逃すことになると警告しています。

 この調査で面白いのは、データによる意思決定に肯定的な組織が多く、意思決定の際にまず直感を用いると答えた企業は10%なのに対し、データが直感を否定した場合、半数以上の57%がデータの再分析を行うとしている点です。経営者の多くは、データを重視しながら、直感を排除していないことがわかります。

 APTでも、経営者の直感を否定するのではなく、直感を含めた仮説の検証、より正確な予測のためにビジネス実験とデータを活用することが重要だと考えています。ビジネスアイデアを出す際、かつてはそもそもデータがないために直感に頼る部分が大きかったと思います。現在は、過去の経営データ以外にもビッグデータやソーシャルデータなど、さまざまなデータが利用できるので、そこからアイデアを抽出することも可能になりました。

 しかし、データも直感もアイデアのヒントでしかありません。それが正しいものかどうか、どうすればより有効な施策になるかを教えてくれるわけではありません。アイデアはあくまで仮説です。その仮説を検証したり効果のあるものに仕上げるのが、本当の意味での意思決定なのです。ビジネス実験はそれを支援し、補強し、証明するものです。データ分析と直感は対立するものでなく、仮説やアイデアに多様性を持たせるために補完できる関係にあると思っています。
《中尾真二》
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