SaaSの実現形態と傾向——SIPsの登場やISVのシェア争いも?
●中小からはじまり大企業分野に浸透
ガートナーの推定によると2006年のSaaS市場規模は63億ドル、2011年には193億ドルに成長する。5年間で3倍程度の成長が推定されおり、「限られた急成長分野」(東氏)と言える。従来のITビジネスの成長との違いについて東氏は「中小規模ビジネスから普及がはじまったソフトウェアのパラダイムシフトであり、現在も中小規模ビジネスを中心にSaaSがどんどん浸透している」と話す。また、中小からミッションクリティカル、大企業の分野でもSaaSは浸透しつつあるとしている。氏によると「SaaSにもいろいろあるが、非常に狭い意味のTrue SaaSあるいはPure Play SaaSは、ホステッド型。1系統の共通プログラムとデータ定義があって、これをたくさんの顧客が共有するというマルチテタントのモデル、オンデマンドのモデルである。ビジネスモデル的には購読料型の従量課金モデルであるが、必ずしもPure Play SaaSだけが市場のプレイヤーになるとは限らない」と説明する。
●SaaSは3種類に大別される
東氏は、SaaSを実現形態によって次にように大別した。On Demand型(シングル・インスタンス)、Server Virtualization型(マルチ・インスタンス)、True SaaS型(マルチ・テナント)の3種類だ。On Demand型(シングル・インスタンス)は、従来から言われているASP型とも考えられるもので、伝統的なソフトウェアがホスティッドされたもの、あるいは同様の実現形態を言う。顧客から見ると、ITインフラ構築・運用ならびに柔軟性・拡張性・カスタマイズを維持する手間とコストから解放され、プログラム変更のタイミングを自ら選択可能であり、異なるバージョンのソフトウェアを利用することができる。いわゆる1対1の関係だ。True SaaS型(マルチ・テナント)はひとつの運用環境が複数の顧客によって共有される形態。顧客からのサービス要求によって顧客別設定情報が適用される。顧客からみると、あたかも自分だけのアプリケーションに見えるが実態としてはひとつのアプリケーションしかなく皆が使っている。ここでは顧客がソフトウェアを変更することはなく、アップグレードは通常一斉に行われる。このモデルではベンダーのコストが下がるので、結果的にユーザーにとってのコストも下がってくる。こうしたコスト面でのメリットがマルチテナント型にはある。Server Virtualization型(マルチ・インスタンス)は、VMwareのように、アプリケーションは共有のWebホスティング環境に配置される。このアプリケーションの複製が各顧客専用に設定され各顧客用のWebディレクトリに配置される。ASP型にくらべればベンダーのコストは少し下がるだろうとしている。
●3〜4社によるSIPs(SaaS Integration Platforms)が出現して統合
SaaSはコスト削減とサービスレベルの向上を目的として中小企業ではじまったというが、SaaSが普及するにつれて、従来とは異なる傾向が現われてきている。それは、ソフトウェア管理の合理化からビジネスモデルの改善へと活用の方向が変化しているという流れだ。「ソフトウェア管理の合理化とコスト削減のところはSaaS 1.0と呼ばれる。会社自身の収益が上がる、顧客満足が向上するなどサービス提供の手段としてビジネスモデルの改善を求めるところはSaaS 2.0と呼ばれている」。
また、米国ではSI(System Integrator)、ISV(Independent Software Vendor)、VAR(Value Added Reseller)などの伝統的チャネルはSaaSの普及には積極的ではないと言われている。これに代わり、SaaS 2.0になるにつれて、銀行、電話会社、Webポータルなどの非伝統的なチャネルが普及の主役となる可能性がでてきているという。さらに、米国ではSIPs(SaaS Integration Platforms)の発展がみられる。様々なSaaSが登場してきたときに、それらを包括的に提供するソリューション・ハブだが、2010年までには3〜4社のSIPマスターブランドがSaaSソリューションを統合して寡占化していくという。そのSIPとなるのはどの企業なのか?「マイクロソフトかもしれないし、Salesforceかもしれないし、Googleかもしれない。いろんなところが可能性を持っている」「ユーザーから見たSIPのメリットは、課金機能など包括的に提供してもらうとSaaS化のコストが下がるところだ」(東氏)。
●ISVの大量死が発生する
では、ISVはどういう運命をだどるのか?という点について、2005年に発表された調査会社の結果が引用された。それによると、2010年までに新規ソフトウェアの30%はSaaSモデルで提供され、トップ10アプリケーションベンダー中5社がSaaSモデルを利用した業種別サービス指向ビジネスアーキテクチャを提供する外部のサービスプロバイダーになるとしている。注目なのはSaaSモデルへの転換に成功するISVが3分の1で、転換できなかったISVのシェアを奪う。つまりISVの大量死が発生するとしているところだ。またSaaSの用途はCRM、人事管理、給与、財務・会計、メール、ドキュメント管理など多くの業務分野、多様な業種特価の分野に広がっていく。
東氏によると、現在、SaaSで一番普及しているアプリケーションはCRM、ビジネスインテリジェンス系であるというが、「第2段階では、業務処理系、基幹業務系でもSaaS化が進むだろう」と予想する。また、まったく別の方向としては、ITインフラ自体の提供、メール、チャット、ドキュメントの共有など、オフィスITインフラに必要不可欠なものをSaaSで提供する分野も次々に登場し、さらにはBtoB、BtoCなど社内向けのものをSaaS型で提供するという状況も見られるようになるだろうとしている。
注目ニュース
「日本のSaaSビジネスは黎明期を過ぎて発展の時期に入った」。KDDI ソリューション事業統括本部 戦略企画部 新戦略グループリーダーの大貫祐嗣氏は、SaaSの広がりを見てそう感想をもらした。
「基本的にはSalesforceと同じSaaSベンダーだが、(NetSuiteは)およそ業務に必要な機能は全部入っている。つまりSuite型で提供する」
総務省は27日、地方公共団体や中小企業など一般の利用者によるASP・SaaSの評価・選択を支援するため、「ASP・SaaSの安全・信頼性に係る情報開示指針(第1版)」を公表した。
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