「“予想外”はないが、知れば納得していただける」〜新生ウィルコム事業説明会

2006年11月15日(水) 17時01分
ウィルコム代表取締役社長の喜久川政樹氏。ウィルコムの事業戦略については「競争力を強化する」と携帯との正面からの競争を意識の画像
ウィルコム代表取締役社長の喜久川政樹氏。ウィルコムの事業戦略については「競争力を強化する」と携帯との正面からの競争を意識
ARPUの移り変わり。2004年度上期は4,430円だったが、現在は4,040円の画像
ARPUの移り変わり。2004年度上期は4,430円だったが、現在は4,040円
営業利益・経常利益ともにマイナスだが、2005年度上期比でみれば、大幅なプラス上昇。8月からはすでに黒字収益に転換しているの画像
営業利益・経常利益ともにマイナスだが、2005年度上期比でみれば、大幅なプラス上昇。8月からはすでに黒字収益に転換している
音声通信とデータ通信の両端を、幅広く埋めるラインアッの画像
音声通信とデータ通信の両端を、幅広く埋めるラインアッ
ウィルコムが開発した独自マーケットに、携帯各社が参入する状況が続いているの画像
ウィルコムが開発した独自マーケットに、携帯各社が参入する状況が続いている
音声定額プランについて、あらためて詳細に分析の画像
音声定額プランについて、あらためて詳細に分析
W-OAM規格により、電波状態に応じた通信が選択され、切断しにくくなるの画像
W-OAM規格により、電波状態に応じた通信が選択され、切断しにくくなる
12月発売の「9(nine)」同梱W-SIMより、音声通話も改善される予定の画像
12月発売の「9(nine)」同梱W-SIMより、音声通話も改善される予定
基地局回線IP化により変調方式が高度化し、通信速度が向上の画像
基地局回線IP化により変調方式が高度化し、通信速度が向上
左より、ウィルコム執行役員副社長の土橋匡氏、代表取締役社長の喜久川政樹氏、執行役員副社長の近義起氏の画像
左より、ウィルコム執行役員副社長の土橋匡氏、代表取締役社長の喜久川政樹氏、執行役員副社長の近義起氏
 10月26日の役員人事により、経営企画本部長だった喜久川政樹氏が社長に就任するなど、新体制となったウィルコム。その2日前に、携帯電話のナンバーポータビリティ制度(MNP)が開始され、ソフトバンクが定額制を採り入れるなど、PHSを取り巻く環境も大きな波を立て始めた。新生ウィルコムは、今後いかに事業を展開するのか?

 15日に、新体制および2006年上半期経営状況を含め、今後の事業展開を説明する記者会見が行われた。

 事業説明会には、ウィルコム代表取締役社長の喜久川政樹氏、執行役員副社長の土橋匡氏、執行役員副社長の近義起氏が出席。まず喜久川氏から、自身を含む新経営陣の紹介がなされた。「新しい役割を与えられたわけだが、やっていることに基本的に変化はない。責任を明確化した」と新体制の枠組みを説明。2006年上半期経営状況の説明に移った。

 ウィルコムは、DDI POCKETからWILLCOMブランドになって1.5倍、前年同期比で1.2倍と、堅実な成長を続けている。ARPU(1回線あたりの平均収益)については下落しているが、その額が鈍化。現在の4,040円台で黒字転換したという状況を明らかにした。これについて「定額ブランが定着し、その率が増えてきたことによる」と分析した。営業収益については約1,230億円と前年同期比127%と伸ばしたが、営業費用が約1,246億円となり、営業利益はトータルで約15億9,700万円のマイナスとなった。ただし、100億円規模での改善を実現しており、増減比率で見れば、着実に収益を増大させている。今年8月からは、すでに月次では黒字転換しているとのこと。なにより売上・加入者数ともに20%以上の成長を達成しているのが大きな強みとなった。また、ARPUが4,000円台でも黒字という状況は、ユーザ側からも心強く見える材料だろう。「MNPが始まって競争は激化しているが、当社はコスト競争力をすでに手に入れている」という発言も、これに由来する部分だ。

 今後の事業展開については、定額プランを主軸とした料金体系はもちろん、決済機能(おサイフケータイ)などの投入、道の駅やゴルフ場なども視野に入れた体感エリアの強化、コミュニティマーケティングを重視した新規市場開拓といったものを考慮しているとして、事例などを説明した。

 「定額制、スマートフォン、医療分野など、当社は独自マーケットを開発してきたが、携帯電話の各社もそこに加わってきた。今後は競争力を強化する」として、PHSの独自性より、携帯電話と横一線で競争することも宣言。今後の抱負を示して締めくくった。

 携帯電話への対抗意識は、続く土橋氏のプレゼンでもかいま見えた。音声定額(話し放題)の料金説明において、“参考”としつつ「21時から24時59分の時間帯は、1日のトラフィックの約55%を占めている」と言及し、間接的にウィルコムの音声定額の優位性を強調した。「“予想外”はないが、知れば納得、というサービスを提供している。それが口コミにつながり、高い顧客満足度につながっている」と述べるほか、低SAR値を理由とする医療現場での採用、音声品質の良さなど、PHSのメリットを強調した。

 最後に近氏が、W-OAMによる技術戦略を説明。W-OAM規格により、電波状態に応じた通信が選択され、切断しにくくなるという、技術上のメリットを解説した。とくに12月発売の「9(nine)」では、同梱W-SIMより、音声通話も改善される予定となっているほか、来春には基地局回線のIP化を推進することで、現状の上限408kbpsが下限800kbpsまで向上するとのこと(64QAM対応端末の場合)。現在の世界規模での加入者数を紹介して、説明を締めくくった。

 その後の質疑応答では、やはりMNPでの影響や、他社戦略についての質問が多数寄せられた。

 MNPについては「若干(マイナスの)影響が出た」(喜久川氏)とのことだが「市場が混乱あるいは活性化したと思う。PHSについては、直接的に移行が行われるわけではないが、そういった面で影響が出た」とした。記者から、同じ定額制であるソフトバンクについて感想を問われると「他社さんのことなのでなんとも答えにくい物がある。ただ、うちであれば6時半から発表は行わない(笑)」とジョーク混じりに余裕の回答。定額制で確固たる先行市場を開拓した自信を伺わせた。

 なお最後に、前社長の八剱氏の発言意図を訂正したいということで、「一昨年の10月にカーライルが筆頭株主になったときに、『一般的には3〜5年で上場や売却を考える』という発言があった。あくまでこれは一般論で、それが最短で数えたら来年10月になるというだけ。来年10月での具体的なものはまったくの未定」として、IPOや株式売却については白紙である、という見解が明示された。

 新生ウィルコムの事業説明会、ということであったが、あくまで我が道を行く、という印象が強く残った。ここ数か月は絶好調で反転攻勢に成功しているのも事実だし、「リーズナブルで誠実な商品」を標榜し口コミで強さを発揮しているのも、他社携帯ではなかなか見られない現象だ。MNPで混乱する携帯電話を尻目に、気付いたら大きな一角を占めていた、ということもありそうだ。
《冨岡晶》
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