スマホソフトウェア競争促進法の全面施行に伴う、Apple、Googleのアプリ配信に関する新規約等に対するMCF意見
本法は代替アプリストアの提供妨害の禁止、代替決済手段、関連ウェブページの利用を妨げる行為の禁止など幅広い規制の網をかけるものです。我々は自由で公正なスマホソフトウェア関連市場を形成するうえで不可欠な施策をタイムリーかつ包括的に打ち出した公正取引委員会を中心とする日本政府の対応を高く評価しています。ただ、現実に新法の理念が掲げる効果を十分に得られるかは今後の取り組み次第という面が多く、我々業界団体としては死活的な関心を持って対応を注視して参ります。
一方で、本法の全面施行により、アプリ配信分野においてこれまでプラットフォーム事業者によって禁止されていた「アプリ内に関連ウェブページでの販売情報等(商品、価格、キャンペーン情報等)の誘導情報をテキスト等で掲載すること」が、Apple、Google(以下「指定事業者」)ともに無償で認められるようになったことを強く歓迎いたします。
これは、一方的なルールに拘束されない多様なビジネスモデルの実現に向けた重要な一歩です。アプリ事業者が自らのサービスに関する情報を消費者に直接伝えられるようになることで、多様な成長モデルの実現と消費者の選択の機会の確保に資するものと認識しております。
Apple、Googleのアプリ配信に関する新規約等に対する意見
指定事業者の新たな規約等について手数料や契約条件等に以下のような課題があり、スマホソフトウェア競争促進法に違反して代替決済手段や関連ウェブページの利用等が妨げられているため適正な法執行とともに早急なる改善を強く要望する。
1.公正競争環境の実現のためには、代替決済手段や関連ウェブページの利用については無償であるべきであるが、指定事業者の新規約等では根拠が明らかでない手数料が課され代替決済手段や関連ウェブページの利用が妨げられている。これは優越的地位の濫用であり本法第8条1号及び第2号に違反すると考える。また我が国の消費者の利便性向上と産業振興の観点から、現在の米国市場と同等の誘導条件によるイコールフッティングの確保を要望する。
関連ウェブページへのリンクは、一般的なインターネットの仕組みを利用しているだけであり、販売に関する決済システム等もアプリ事業者が自らの費用と労力で構築しているにもかかわらず、根拠不明な手数料を課されて代替決済手段と関連ウェブページの利用が妨げられている。
米国市場においては、現在、Apple、Googleともに代替決済等へのリンクによる誘導を実態として無償で運用しており、これがアプリ事業者の収益改善とイノベーションを促進し、消費者に多大な便益をもたらしている。
対照的に、我が国で示された新規約では、リンクを介した代替決済手段等への誘導に対して、手数料や新たな条件が課されているため経済的なインセンティブがなく、代替決済手段が選択肢となり得ていない。これは「自社利益の優先によって消費者及び事業者利益に行き過ぎた負担を強いる」 構造の継続に繋がりかねない。このままではアプリ事業分野においてもデジタル敗戦を繰り返す恐れが高まる。
我が国の消費者の利便性向上と産業振興の観点から、現在の米国市場と同等の誘導条件によるイコールフッティングの確保を要望する。
関連資料として2025年6月12日のMCF意見はこちら
https://www.mcf.or.jp/mcfxswp/wp-content/uploads/2025/06/mcf_iken_20250612_jftc.pdf
2.アプリからリンクアウトした関連ウェブページでの7日間または24時間における当該ユーザーによるすべての取引内容を報告させて手数料を課すことで、代替決済手段や関連ウェブページの利用が妨げられている。これは常識的に受け入れ困難な取引条件を優越的な地位を利用して強制することに等しく本法第8条第2号に違反すると考える。
アプリで選択したデジタル商品以外に、リンクアウトした関連ウェブページにおいて7日間または24時間の広範囲の取引すべてに対して手数料を課すこと(例として、当該期間にアプリで選択したデジタル商品が1個であったとしても、当該ユーザーがリンクアウトした関連ウェブページで20個のデジタル商品を購入した場合には、20個のデジタル商品すべてに手数料が課されることを意味する。検索や広告等のオフラインからの取引も対象である。)は根拠がなく、常識的に受け入れ困難な取引条件を優越的な地位を利用して強制することに等しい。これでは、アプリ事業者の自主的なマーケティング活動による努力を一切認めず、「自社利益の優先によって消費者及び事業者利益に行き過ぎた負担を強いる」 構造そのものである。
このような取引条件を課すことは、関連ウェブページでの代替決済の利用を困難としているため本法第8条第2号に違反すると考える。
3.アプリからリンクアウトした関連ウェブページでの7日間または24時間における取引すべてに手数料を課すために、アプリ事業者に対してユーザーの行動追跡と報告を強制することは、指定事業者が主張してきたプライバシー保護上問題であり、消費者のプライバシーより自社利益を優先したダブルスタンダードである。これは不公正な取扱いを禁止した法第6条に違反すると考える。
指定事業者は、これまでユーザーのプライバシー、セキュリティを保護する必要があると主張されてきました。MCFとしても主旨には賛同しており、世界に先駆けて発表された総務省の「スマートフォン・プライバシー・イニシアティブ(SPI)」に準拠した「アプリケーション・プライバシーポリシー」の普及活動等に共同で取り組んでまいりました。
このような主旨で広告分野においては、消費者のプライバシーを保護するために、消費者をトラッキングしたり、消費者のデバイスの広告識別子にアクセスしたりする際に、AppTrackingTransparency(ATT)のフレームワーク等を通じてアプリ事業者の活動を規制してきました。
一方で、今回の取引条件では、アプリからリンクアウトした関連ウェブページでの7日間または24時間、アプリ事業者に対してユーザーの行動追跡と報告を強制している。このような取引条件は指定事業者が主張してきたプライバシー保護上問題であり、消費者のプライバシーより自社利益を優先したダブルスタンダードであると言わざるを得ない。そのためこのような取引条件は不公正な取扱いを禁止した法第6条にも違反すると考える。
4.指定事業者の決済手段を利用していない、または利用する予定がないサービスまで、必要性がないのに指定事業者の決済手段を強制することは優越的地位の濫用であり、関連ウェブページの利用が妨げられているため本法第8条第2号に違反していると考える。
代替支払管理役務等及びリンクアウト等を利用するために、指定事業者が提供する支払管理役務と代替支払管理役務の両方を利用できるように選択肢を提供することと、代替決済手段や関連ウェブページの利用において指定事業者が提供する支払管理役務を強制することは、まったく主旨が違い不当である。
リーダーアプリのエンタイトルメントを利用する場合は、指定事業者の支払管理役務が利用できないため、既存のアプリをリーダーアプリに変換することを躊躇する事業者が多く、公正取引委員会とAppleの画期的な合意があったにもかかわらず不公正な契約上の条件によってあまり普及が進まなかった。今回Appleが主張するようにユーザーに一貫性と透明性を確保するという主旨による改善が示されたことは有意義であると考える。
一方で、指定事業者の決済手段を利用していないサービスにまで指定事業者の決済手段を強制することは、ユーザーに一貫性と透明性を確保することに当たらず、自社利益の優先によって消費者及び事業者利益に行き過ぎた負担を強いる構造の継続である。これは優越的な地位の濫用であり本法第8条第2号に違反していると考える。
以下、必要性がないのに、指定事業者の決済手段を併せて利用することが強制されることで、事業継続が困難となるサービスの具体例を説明する。
- ブラウザにおいてWebサービス事業者の提供する決済手段を提供しているサービスにおいて、新たに既存ユーザーにアプリでもサービスを利用できるようにした場合、指定事業者の決済手段の利用が強制されると収益とコスト及びビジネスモデルにおいて多大な負担があり事業継続が困難となる。
- 新規でアプリによるサービスを開始する場合も指定事業者の決済手段の利用を強制されると収益とコスト及びビジネスモデルにおいて多大な負担があり事業が困難となる。
- 玩具や書籍等と連携したサービスをアプリから誘導して提供する場合に、指定事業者の決済手段の利用を強制されると収益とコスト及びビジネスモデルにおいて多大な負担があり事業が困難となる。
スマホソフトウェア競争促進法ガイドラインでは、当該行為が本法第8条第2号に違反する想定例として記載されている。
【想定例 86】
指定事業者が、個別アプリ事業者に対し、関連ウェブページ等における商品若しくは役務の提供を行うための条件又は本個別ソフトウェア内で外部誘導情報の表示若しくはリンクアウトの提供を行うための条件として、個別アプリ事業者及びスマートフォンの利用者にとって必要性がないのに、指定事業者等の提供する支払管理役務又は支払手段を併せて利用することを強制すること。
5.スマホソフトウェア競争促進法に違反した規約が改正されていないため早急なる改善を求める。
今回、本法の全面施行にあわせて指定事業者から新規約等が公表されたが、一方で既存の規約等をはじめ本法に違反した規定が散見されており早急なる改善を強く求める。
一例として、既に実態として利用は進んでいるようであるが、本法第8条第2号に係る「政令で定める場合」に違反している規約等を紹介する。
同号の「(これに準ずるものとして政令で定める場合を含む。)」について、令第3条では、「個別アプリ事業者が本個別ソフトウェアを通じて提供していない商品又は役務であって本個別ソフトウェアで利用されるものを関連ウェブページ等を通じて提供する場合」と規定している。
具体例としては、「本個別ソフトウェア内でデジタルコンテンツを販売等しているが、当該デジタルコンテ ンツと同一ではない商品又は役務を関連ウェブページ等で販売等している場合。例えば、 本個別ソフトウェア内で販売していないウェブストア限定のデジタルコンテンツ(例えば、ゲームアプリで利用できるキャラクターのスキン)を販売する場合などがこれに該当する。」とされているにもかかわらず、指定事業者の新規約等には本法に違反した以下のような規定がある。
Appleについては、ガイドライン3.1.3(b)マルチプラットフォームサービスの「(前文省略)ただし、そうしたアイテムは、アプリ内のアプリ内課金アイテムとしても購入可能でなければなりません。」で同一でないデジタルアイテムを代替決済手段及び関連ウェブページにおいて販売することが、運用上は黙認されている事例もあるようだが、規約上は禁止されている。
Googleの新規約等では、アプリ内と同一でないデジタルアイテムの販売は禁止されていないが、新たに提供された外部決済APIの仕様では、デジタルアイテムを起点とした購入導線となっているため、代替決済手段に限定して指定事業者の決済手段と同一でないデジタルアイテムを選択することができない。このため、アプリ内からの導線がなければウェブストア限定のデジタルアイテムを販売することはできるものの、アプリ内からウェブストアに導線を設ける場合には、「ウェブストア限定のデジタルコンテンツ(例えば、ゲームアプリで利用できるキャラクターのスキン)を販売すること」が実質上禁止されている。
なお、代替アプリマーケットプレイス等のその他課題については、今後、随時発表していく予定である。
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