こども家庭庁では、日本の少子化が大きな社会的課題となる中、不妊症や不育症に悩む方々が、パートナーとともに安心して不妊治療に取り組める環境づくりを目指し、「大切なのは、みんなで知ること、理解る(わかる)こと。」をコンセプトに掲げ、2025年11月22日(土)に「不妊症・不育症のこと オンラインフォーラム」を開催いたしました。

ゲストには、これから妊娠を考える立場として、昨年ご結婚された村上佳菜子さん、そして妊娠準備や不妊治療の経験を通じてリアルな思いを語る本田朋子さんが登壇。それぞれの立場から、「何から準備を始めればいいのかわからない」「どのように行動を起こせばいいのか」といった“はじめの一歩”に関する素朴な疑問をはじめ、妊娠しやすいからだづくりや仕事との両立、夫婦での支え合いなど、不安や戸惑いと向き合うためのヒントをお話しいただきました。
フォーラムでは、フリーアナウンサーの登坂淳一さんがMCを担当。医療と心理の専門家として、神谷レディースクリニック 診療部長 岩見菜々子先生、東京リプロダクティブカウンセリングセンター 代表 平山史朗先生も登壇し、治療や制度の現状といった正しい知識に加え、心のケアや支え合いの重要性を専門的な視点から解説。「知る・話す・支え合う」をキーワードに、“知ること=安心の準備”として、誰もが一歩を踏み出しやすい“支え合いのきっかけ”をお届けしました。
アーカイブ視聴はこちら
村上佳菜子さんと一緒に学ぶ、「妊娠準備」の“はじめの一歩”

イベント冒頭では、村上佳菜子さんと岩見菜々子先生が登壇。進行の登坂淳一さんとともに、「妊娠準備」や「不妊症」に対する最初の理解のステップをテーマに、トークセッションが行われました。はじめに岩見先生からは、『知ることから始める妊娠準備』として、女性の体の話や不妊症に関する初期理解のポイント、不妊治療に関するステップやその治療法について説明。村上さんは「さまざまな治療法があるということを聞き、じゃあ試してみようかな、というきっかけになりました」と感想を述べ、トークセッションの冒頭から“妊娠準備”や“不妊治療”を自分ごととして捉えるきっかけになった様子を見せました。
「不安な気持ちになることも多かった」本田朋子さんが語る、妊娠準備や不安との向き合い方

続いて、不妊治療を経験した本田朋子さんが登壇。“実際に一歩踏み出した先輩”として、自身の妊娠準備・不妊治療の経験に基づくリアルなエピソードを語りました。
本田さんは「結婚してからの2年間は、夫婦2人の時間を大切に過ごしていましたが、その後なかなか授からず、不妊治療を始めました。治療は早い方がいいと周囲からも勧められていたので、自分にとって治療のハードルはそれほど高くなかったです」と、当時の心境を振り返り、「妊娠検査薬を何本も買い、SNSで“これが反応しやすい”という情報を見ては試していました。2本目の線が見えた気がして、一度捨てた検査薬を拾って何度も見直したこともあります」と、切実な思いを吐露。「不安な気持ちになることも多かったですが、男性にはとにかく“寄り添って!”と言いたいです」と訴えかけました。
さらに、同じく登壇した心理支援の専門家である平山先生は、不妊治療に伴う不安や、パートナーとの向き合い方について解説。「多くの人々にとって、妊娠は“当たり前にできるもの”という認識があるところ、その“当たり前“が崩れて、不妊という不測の事態が降り掛かってくるので不安になります。しかし、不安という反応は、こうした不測の事態が起った際の正常反応で自然なことなんです」とコメントし、「不妊治療は決断の連続で、男女間で情報量の差も大きい。しかも体の負担が大きいのは女性側なので、最初から同じ温度感で向き合うことは難しいです。しかし、その温度差はこういった環境や構造の問題が生み出すもの、と考えると気持ちが軽くなりますし、だからこそ2人で話し合える土俵を揃えることが大切です」と語りました。
不妊治療を振り返り本田朋子さんが明かす「目の前に幸せに目を向けるようにしました」
引き続き、本田さん、村上さん、そして先生方を交えて、不妊治療の体験談や心のあり方、治療に関する正しい知識についてトークが展開されました。本田さんは、不妊治療はまず何から始めたか?という問いに対し、「まずは自分の体を知ることから始めました」とコメント。「自分の体の状態を知るために、最初は一人で病院に行きました。その結果をパートナーに伝えたのですが、男性はあまり知識がないことも多くて(笑)。でも、それが私にとっては“一緒に学んでくれる姿勢”と感じられて、ふたりで治療について理解を深めていけたことが、すごくよかったです」と振り返りました。また、登坂さんもご自身の経験を交えながら、「不妊治療で初めて病院に行ったとき、先生から『不妊治療は2人でするものです』と言われました。男性にとっては、その言葉で“ここからがスタートなんだ”と感じました。」と語り、参加者の共感を呼びました。また本田さんは、不妊治療中の身体的・精神的ストレスについて「予約していても待ち時間が長く、痛みを伴う処置を受ける日は特に身体的な負担が大きかったです。私が通っていた病院では、会計まで5時間ほどかかることも珍しくなく、へとへとになってしまい、そのうえ良い結果が出なかったときは絶望的な気持ちになりました」と振り返りました。「これだと自分の心が持たないと思ったので、自分なりの“ポジティブに捉える方法”を見つけようと意識しました。待ち時間中は外出OKだったので、必ず外に出て、好きな紅茶を飲みに行ったりして気分を切り替えてから検査や処置に臨んでいました。自分なりのリフレッシュ法を見つけて、目の前の幸せに目を向けるようにしていました」と、自身の工夫を語りました。
これを受けて平山先生は、「将来のことを考えると、人はどうしても不安になります。だから、“今、病院で治療を受けている自分”に意識を向けることは、心のバランスを取る上で非常に大切なことです。過去の後悔や、先の見えない未来に囚われてしまうと、心が苦しくなってしまいます。本田さんが“今できていること”に目を向けて、ポジティブな方法で気持ちを整えていたことは、とても良い対処だと思います」とコメント。前向きな姿勢の重要性を改めて強調しました。
“こどもをもつこと”への意識は、意外にも「特にきっかけはない」が最多に 妊娠は“自然にできるもの”という潜在意識が可視化

フォーラム後半では、視聴者参加型のアンケート企画を実施。1つ目のトークテーマは「“こどもをもつこと”を意識した瞬間」を軸に進行。「周囲の友人・家族の出産をきっかけに」「パートナーと将来を話す中で「年齢や体調の変化を感じた時に」「SNSやメディアの影響」「特にきっかけはないが、なんとなく自然に」といった複数の選択肢から自身にもっとも近いきっかけを選んで投票してもらう形式で行われました。村上さんも本田さんも、“こどもをもつこと”を意識したきっかけについて、「結婚したときに意識した」とコメント。本田さんは「結婚=家族をつくる、という思いがあったので、やはり結婚を機に子どものことを意識し始めました」と当時を振り返りました。
アンケートでは、「パートナーと将来を話す中で」や「年齢や体調の変化を感じた時に」が多く選ばれた一方で、「特にきっかけはないが、なんとなく自然に」との回答も多く見られました。これについて岩見先生は「実は“特にきっかけはないが、なんとなく自然に”という声が多いことが重要なんです。多くの方が、妊娠は自然にできるものという意識を無意識のうちに持っていて、きっと妊娠できると漠然と思っているんですね。だからこそ、『いつか妊娠したい』とふわっと考えている段階で、一回は受診しておくことが、将来その“いつか”が訪れたときに、自然に叶える力になると思います。妊娠を意識的に思っていない方が多いという結果は、私自身にとっても学びになりました」とコメントしました。
「治療や検査の負担」「周囲との比較」さまざまな不安との向き合い方

続いてのトークテーマは「不安との向き合い方」。妊娠準備や不妊治療を考えるうえで、誰もが少なからず抱える“見えない不安”について、視聴者の皆さんとともに考える時間となりました。アンケートの設問を見た村上さんと本田さんは、「どれも当てはまるので決められない!」と率直なリアクションを見せ、妊娠準備における不安の多様さを実感している様子でした。
アンケートでは「治療や検査の負担・費用面」や「周囲との比較・焦り」が多く選ばれる結果に。平山先生は「結果が割れていることから、皆さん不安なんだなと思いました。治療への不安について、ネットで調べると、体外受精は怖い、痛いものだという情報が出てきます。だけど、実際とは異なることが多々あります。治療法は施設によって異なるので、病院で医師と話し合うことがとても大事です。わからないことに対して不安になるのは自然なことですが、その不安をネットで膨らませすぎないようにしてほしいです」と、正しい情報の得方について提言。また、岩見先生は「女性がキャリアアップしていく中で、年齢とともに妊娠率が下がっていくことは認識していても、その時期はちょうどキャリアを積みたい、表舞台に立ちたいと考えるタイミングでもあります。その中で女性たちは、どこかで“トレードオフ”として選択していかざるを得ない。そのためにも、パートナーとの価値観のすり合わせが非常に重要だと感じています」と、パートナーとの話し合いの重要性を改めて語りました。
自分らしい選択とは?村上さん「パートナーとの話し合いはすごく大事」

最後のトークテーマは「自分らしい選択をするために」。妊娠準備や不妊治療を進める上で、“自分の気持ち”とどう向き合い、どう決断していくのかを語り合いました。本田さんは当時を振り返り、「不妊治療を進めるなかで、主治医から2,3ヶ月期間を開けたほうがいいと言われた時がありました。早く次に進みたい気持ちがあったので、その期間はとても長く感じましたが、主治医からは、まずは自分の身体を見直し整えることを提案され、それを受け入れた結果、第一子の妊娠につながりました。治療を進める上では、焦らず冷静でいること、感情的にならずに医師としっかりコミュニケーションをとることも本当に大切だと実感しました」と語りました。これを受けて村上さんは、「自分のキャリアとの両立ってすごく難しいけど、タイミングがうまく噛み合ってくると、流れに乗れることもありますよね」コメントし、「現役時代は休むことがすごく怖くて“休む練習”をしていたんです。でも休むって怖いけど実は大切なことで、むしろパフォーマンスが上がったりします。そういう時間をきちんと設けることで、より清らかな気持ちで取り組めるようになると思います」と、自身の経験を重ねながら語りました。
アンケートでは、どの選択肢も比較的均等に票が分かれる結果となりましたが、なかでも「パートナーとしっかり話し合って決めること」が最も多く選ばれました。この結果を受けて村上さんは、「パートナーと話し合って決めるってすごく大事だなと思いました。会話をしないとすれ違いになってしまうと思うので、専門家の意見を聞きながら進めることが、パートナーと共通認識を持つきっかけにもなると思いました」とコメント。これまでの登壇者の話を踏まえながら、自身の考えを語りました。
また平山先生は、「治療を受けるという“選択”は自分でコントロールできても、その“結果”は自分のコントロール外にあります。だからこそ、結果に引きずられすぎず、納得して選んだ自分の決断を認めてあげることが大切。皆さん自分に厳しいので、頑張った自分を、自分の親友や大事な人に接するように、自分を認めてあげてほしい」と、参加者へ温かいメッセージを送りました。さらに岩見先生からは、「実は現在、11%の赤ちゃんが体外受精で生まれています。つまり、約9人に1人という割合であり、左利きの方とほぼ同じくらいの割合。そう考えると、決して特別なことでも高いハードルでもありません。カップルでよく話し合いながら、自然に妊娠準備を進めてほしいです」と、正しい認識と冷静な選択の重要性を伝えました。
最後に登坂さんは、「妊娠準備や不妊治療は、“不安と向き合うこと”であり、“自分らしい選択を重ねていくこと”でもあることが重要です。その過程を一人で抱え込まず、パートナーや家族、友人、そして専門家と一緒に歩んでいくことが、“社会で支える”という姿に繋がっていくのだと思います。」と締めくくり、フォーラムは幕を閉じました。
「不妊症・不育症のこと オンラインフォーラム」登壇者

村上佳菜子さん(プロフィギュアスケーター・タレント)フィギュアスケート選手として2014年にソチオリンピック出場、同年の四大陸選手権で初優勝するなど、輝かしい成績を残す。2017年に引退を表明。 現在、プロフィギュアスケーター・タレントとして活動中。2024年に一般男性と結婚。妊活を本格的にスタートする時へ向け、いろいろな選択肢を前向きに検討できるように、パートナーと一緒に日々勉強中。

本田朋子さん(フリーアナウンサー)2006年4月にフジテレビに入社し、アナウンサーとして数々の番組に出演。2013年にプロバスケットボール選手の五十嵐圭さんと結婚し、フリーアナウンサーに。不妊治療を経て二児の母となり、育児に奮闘する毎日を送る。

登坂淳一さん(フリーアナウンサー)1971年東京都出身。1997年にNHKに入局、和歌山、大阪、札幌、鹿児島に赴く。「おはよう日本」や正午のニュースなどを担当した。2018年に退局。ホリプロ所属のフリーアナウンサーとなる。現在はBSフジ「プライムオンラインTODAY」のキャスターを務めるほか、バラエティ番組や俳優業、SNSなど活動の場を広げる。また二児のパパとして育児に奮闘中。

岩見菜々子先生(神谷レディースクリニック診療部長)略歴:2005 年3月札幌医科大学卒業、2014年6月より現在の神谷レディースクリニックに勤務、2023年12月より同院の診療部長として勤務
専門医資格:日本産科婦人科学会認定専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医、臨床遺伝専門医、日本抗加齢医学会専門医

平山史朗先生(東京リプロダクティブカウンセリングセンター代表)生殖心理カウンセラー(公認心理師・臨床心理士・家族心理士)。広島HARTクリニックほかで不妊カウンセリングなどに従事。日本生殖心理学会副理事長。著書に『妊活に疲れたら、開く本』(主婦の友インフォス)ほか。
企業プレスリリース詳細へ
PRTIMESトップへ

